『Brindavanam (2010)』

DVDジャケ。

 
Krish(NTR junior)は都会の大企業の社長の一人息子。大金持ちで腕っ節も強く、それでいて知的でユーモアと優しさを備えたみんなの頼れる人気者。ある日の事、彼女Indu(Samantha)から彼女の女友達Bhoomi(Kajal Agarwal)が故郷で父親に粗暴な男と無理矢理結婚させられそうになっていると相談される。早くに母親を亡くし、自分の父と一族の為に村の盟主として生きてきた父親の願いは叶えたいもののしかし結婚相手とされるのは村で一番の乱暴者で嫌われ者、何れは村に帰るつもりではあってもやっとアメリカでの生活も勉強もこれからという時に全てを捨ててまで父親の願いを叶えたくはなかったのだが、それを祖父に相談したところ「将来を誓った恋人が既にいると言えばいい」という助言の通りに父親に言ってみると、「じゃぁ連れて来なさい」と言われてしまって途方に暮れていたとのこと。彼女の友達のトラブルを見過ごすワケにもいかずたまには田舎に行くのもいいさと偽恋人役を買って出たKrishはオンボロバスに揺られ揺られてBhoomiの田舎へと向かうのだが…
 

 
本来私はその一本あたりにかかっているお金と手間と洗練さでインド映画はBollywood贔屓なんですが、たまにはこぅ濃ゅいマサラムービーを観たくもなるもので、とりあえずテルグ語地方で去年一番ヒットした作品って事でオーダーしてみたんですが
 
いやコレ、面白かったですわッ!
 
何がいいって非常に良くまとまっているだけでなくテンポっか構成もバランスが良いんで娯楽として楽しむには本当に快適でしての。偽婚約者ってドタバタから外れない物語展開、なまじKrishは腕っ節も知恵も度胸もあるから次々と問題を解決していくんだけどそのせいでどんどん状況が複雑に面倒になっていくけどそれらは全部『偽婚約者』という立場だからってのの派生っか演繹で、無理に田舎と都会の格差とか社会問題を入れ込んだり人物設定を拡げたりもしないで家族のお話しにまとめてるから観ていて無理が無いんですよ。ダレてきそうになったら『MATRIX』ばりのアクションかダンスシーンを入れてくるけどそれはあくまでもブリッジ程度、一つ一つのエピソードは濃ゅいけど比較的短めでどんどんテンポよく繋いでいくけど基本は家族のお話しのままで外れないで尻切れトンボになるエピソードも人物も無いから観ていて退屈しないし混乱もしないんですよね。
 
また主演のNTR junior、ダンスでは多分現在のテルグ映画界ではトップなんですが役者としてはもひとつなれど地方を知らない冷めた今時の若者って本作には合ってるし、周囲をベテランでキッチリ固めている分それが対比に見えなくもない配役のバランスの妙。加えて「年上の人を敬まおう」等の昔からの道徳的な要素はある一方で、休日の礼拝にと親に誘われると面倒だから「神への感謝や信仰は礼拝するしないじゃないでしょ」と言ってしまったりインド映画ではお約束だった「結婚はあらゆる恋愛に勝る」にはしなかったりする部分など現代的な気分ってのか要素みたいなのも個人的には面白かったですね… まぁこれだけまとまってるのは物足りないって人もいるかもしれませんが、私は無理に悲劇を盛り上げる為に登場人物が唐突に死んだり殺されたり不幸に叩き落されたりした次の場面でベタベタのギャグやられたりするのってどうにも駄目なんですよ。シーンによって人物の性格とかコロコロ変わられるのもヤだし途中の問題は全然解決してないのに悪を倒したからハッピーエンドってのをされるのもヤなんですよ。そういう瑣末な事を超えて有無を言わせない作品であればいいんですが、そんなもんそうそうあるワケがないしと言って私が観てきたタミル語テルグ語映画で本作ほど節度をもってまとまった娯楽作品ってのは無かったんですよ。それはアクションシーンに過剰はあっても無駄な流血が無かったり人死にが全く無かったりするのやダンスシーンでも殊更に奇抜なムーブを入れたりしないで見せるのを重視(だから4分程度という南インド系としてはチョイ短め)にしてたりするのも全体のトーンとバランスを考えての事ではないでしょうかね? もちっと言うならこの製作者らってやっぱり映画を相当観ているんでしょうね… アクションシーンでハリウッド的なのも香港映画的なのもあるだけでなく『Tom Yum Goon』等のタイ映画も観ているからこそ格闘シーンで肘や膝やら使ってたりしてましたけどやってる事がウリじゃないんですよ、何れにせよ。映画的にキメるトコではドーン!とインド映画らしい演出を畳み掛けてきたりもするんですけど浮かないんですよね。パクリとか言うのは簡単ですけど全編にバランスの良さを保ったままで、ってのは相当に難しいもので、やり過ぎなんだけどそれぞれの要素が突出はしていない、ってね…
 
本来家族という単位やテーマがさして興味が無いって言うか寧ろ苦手で敬遠してる私でさえも本作はその本筋を外さない節度と濃ゅく押したり引くバランスの良さ故に最後まで楽しく観れましたったよ、っとぉ。正直『Yamadonga』『Kantri』ではNTR juniorはダンスは凄いのは解ったけど映画としてとっ散らかってたからもひとつノれなかったんですけどね…
 
 
 
… って事で、以下はDVDソフトとして、ってのなので興味のある人だけ
 

 
・『Brindavanam DD® 5.1 (DVD From HD Source)』 - Region All
 Studio: BHAVANI
 Theatrical Release Date: October 14‚ 2010
 DVD Release Date: 02 February‚ 2011
 Run Time: 170 min
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen Enhanced (16:9) DVD
 Available Subtitles: English
 Available Audio Tracks: Telugu - Dolby Digital 5.1 Surround

 

 え〜、DVDソフトとしては非常にシンプルで映像特典ゼロです。
本編とソングのチャプター、英語字幕のオンオフを除けば音声も一択ですから正直ソフト的には寂しいんですけどその分、定価$5.59とは思えない程の高画質・高音質で7.44GBギチギチ。っか、本編が長い分、よくソング集部分を収められたもんだと感心したくらいですが… って事で、興味のある方ならば購入されるのもいいんではないかと。南インド映画っ〜とみっちりしたオヤジが奇妙なダンスをするって印象の人も日本でも少なくないとは思いますが… ん〜… コレ
 
D 
 
とか観て、なんかグッときちゃったらオススメしますよ〜