『Nak (2008)』

USA-P2008-08-14

 
 昔からタイでは土地や先祖等の精霊(ピー)にお供えをし敬う風習があり人と精霊はそれぞれ仲良く暮らしていたのだが、都市化する事でその風習は次第に忘れ去られていくに従い精霊たちの世界にも秩序が失われ、悪い精霊が人の世を狙うようになっていった現代…
 精霊と人間がなんとなく共存しているタイの田舎の農村に暮らす姉弟
年に一度の村祭りの夜に母親に内緒で遊びに来たものの、弟が人間界を征服しようと企む悪霊に襲われ生贄として攫われてしまう。悪霊の襲撃から身を守ってくれた精霊に何とか弟を助けたい姉は協力を求め精霊たちの居住区へと行く。精霊たちの間でも悪霊らの振る舞いには困っているもののしかし精霊を蔑ろにしつつある人間への協力には難色を示す物もいたが心優しい女性の幽霊ナークが立ち上がる。かつて子供を奪われた悲しみを知るナークにとって家族が引き離される事の辛さを知っていればこそ、そして奪われた子供との再会をも胸に秘めて幽霊列車で首都バンコックへと向かうのだが…

 
 まずは何より、この予告編を観て下さいな!
 

 
 日本語字幕を付けた動画をUPしてくれた(GI)御隠居様、多謝です。
 
 さて…
 
 タイで初めて*1製作されたフル3DCGの子供向けアニメ映画、って事で何となくオーダーしたものの、手描きアニメがアニメーターの職人技とセンスが必要とされるように3DCGアニメの場合はセンスだけでなく機材、ソフト、人材が揃っていなければどうにもならずアメリカのようにTV放送用のフル3DCGアニメが何本も放送されていたり日本等のように劇場で既にフル3DCGアニメも上映されていたり部分パーツ単位でのCG導入がなされている国ならばいざ知らず環境的には決して恵まれているとは言えないタイの映画界での物だけに正直言えば期待よりは数合わせ的な、とりあえず押さえておこうか… って程度でしたが、これはよく出来ていた映画でございましてなぁ… 全編タイ語、DVDに収録されているのはタイ語字幕だけ、ってタイ語がサワディカップくらいしか知らない私でも子供向けって事で台詞はあっても状況説明が殆ど無い為に観ていれば何となくストーリーが解るようになってるってのがまずいいじゃないですか。そして様々なアニメ作品以外の映画だけでなく多分マンガやゲーム等からも着想を得たであろうキャラやネタ、そして画面構成がスクリーンで観る事が前提になってる立派な映画になってるんですよ。で、トゥーンシェイドの3DCGでの画面の密度はわざわざ描き込み過ぎないようにしてあるけどもそれは手抜きではなくちゃんと考えられたもので、デザイン的にバラつきの無いものになってるんですよね… よく実写の映画でもあるでしょ? 世界観に小道具とかが合ってないのって。そういうのは無いんですよ。スケールだけでなくデティール、デザイン的にも違和感が無いんですよね… インドの映画会社Yash Raj Films社がディズニー社と組んでのフル3DCGアニメ『Roadside Romeo』
 

 
 を今年公開しますが現時点で公開されているこの予告編で観るに映像的にもモーションのつけ方にしても既視感のある描き込み方とデザインで、それはそれで凄いとは思うんですけども特に私には興味が持てないものだったのと比べて本作はえらく私のツボにきましたよ。確かに子供向けであるが故に物足りない部分もありますし、一回だけ絵で見せないで言葉による説明だけで済ましてしまった場面があるのが惜しいのですが、人材もノウハウも資金もメジャーに比べれば決して豊富とは言い難いであろうタイで、初めて製作されたのでこのクオリティならば次回も楽しみにしてもいいんじゃぁないのかなぁっと思うんですよ。いやね、確かにモーションの付け方がちょっと甘いトコロがあったり、演出的に緩急が欲しい部分もあったんですけど、しかしコレ、初めての作品ですしね… 何よりも最後まで、タイ語がちっとも解らないけれど観ていられるだけの映像でちゃんと物語が伝わったんですから、それでもぅ私としては満足ですよ、っと。リアルに行くのは資金と人材と機材があれば出来る事で、この映画ではそれは出来なかった分、センスとスタッフらの様々な映画や映像等の蓄積があって出来たこの映画、いやぁ楽しかった!
 
 
 
 以下はこのDVDについての情報なので興味のある人だけ

 
・『Nak (2008)』(PAL) - Region 3
 
 Studio: P & C SHRI BALAJI ENTERPRISES
 Theatrical Release Date: April 3, 2008
 DVD Release Date: July 6, 2008
 Run Time: 90 minutes
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen 16:9
 Available Audio Tracks: Thai - 5.1 Dolby Digtal Surround
 Subtitle: Thai
 
 Special Features:
 ・Maikng of "Nak"
 ・Voice Actor Interview
 ・Song Video (2)
 ・Theatrical Trailer

 

 
 DVD一枚なのにえらく大きめのケースを開けると飛び出す絵本形式のものが出てこれはこれでアリかと。画質、音質は共に問題無しっか美麗ではないかと思いますが… メニューも全部何もかもタイ語なんでちょっと混乱するかも(笑)。ただメニュー自体は「本編再生」「シーンチャンプター」「セットアップ」「Special Features」だけですんで、まぁ何とかなるかと。
 で、特典ですが… あ、全くタイ語が読めないんであくまで適当に付けたもんですが… って事で、「Maikng of "Nak" 」は監督らへのインタビューや3DCG製作の様子等を収めたもの。「Voice Actor Interview」は声を担当した俳優さん達へのインタビューとアフレコ風景を納めたものです。ただタイ映画界の事をよく知らない私には『Ong-Bak (2003)』等で出演しているペットターイ・ウォンカムラオくらいしかワカランかったんんですが。「Song Video」は劇中曲のフルバージョンを本編映像だけでなくPV用のCDムービーと合わせたもの。「Theatrical Trailer」は劇場版予告編、です。
 
 ちょっと特典部分が弱い気もしますがDVD品質としては問題無し、PAL版という難点はあるもののタイ映画の購入のついでに一本、お勧めしますよ〜
 

*1:コメント欄で初ではない、とご指摘を受けたので訂正。