『Alice In Wonderland (1976)』

 
 図書館に勤めるAlice(Kristine DeBell)は本好きのオクテな女の子。恋人はいて、Aliceももう少しだけ、あと一歩、を踏み出したいもののやはり勇気が出なくて踏み出せないでいる事でなんとなく二人の間もギクシャクしてしまっていて。
「何とかならないかなぁ… 」
 っと思っているトコロに現れる白ウサギ男(Larry Gelman)を思わず追いかけて鏡を抜けるとそこは…

 
 バッド・タウンゼント監督作品っ〜と手前ぇそのオチわッ!と激怒した『ナイトメアーワックス (1969)』と何が罠なのかよぉ解らんぞそのオチでわッ!っと思った『デビルズ・トラップ (1972)』を観てるくらいの私がわざわざ買うような監督では無いんですが『不思議の国のアリス』のパロディポルノで尚且つミュージカル仕立てって本作は艶笑物も好みな私からすると
 「これは購入しなきゃぁ… 」
 っと思ってたブツでしたが、昔にリリースされたというVHS版の日本版の『エッチの国のアリス』は見かけた事が無かったし、これまでリリースされてきたのはそのVHS版をマスターをしたらしい画質・音質の良くないクセに結構なお値段の物でぶっちゃけ手ぇ出す気にはなれずにいたんですな。しかし昨年末に残っていたフィルムからのデジタルリマスターを施して、これまで一般流通していた「X-rated version」とカットされていたHardcoreシーンを復活させた「XXX version」の両方を収録、って事でオーダーしたんですが…
 
 いやぁ、思ってたより作ってあって驚きましたわ。
 

Alice in wonderland 1976』(OPタイトルから白ウサギ男が現れるまで (8:30))
 
 パロディポルノってのは昔からよくあるもので私が適当にネットで集めただけでもこれくらいは簡単に揃うくらいによく作られてきてはいるんですが、大抵は衣装やメイクを似せるくらいのものでしかなく、よく頑張っていても銃器や格闘シーンをやる程度なのと比べると、確かにチャチっちゃぁチャチなんですけどちゃんと『不思議の国のアリス』をお話のベースにしていて章単位でオチをつけてる上に何曲も用意して歌い、それらに振り付けまでなされているのを見ると事前に本作については資料で読んでいたと言っても驚きますわ。
 ただ、艶笑話としてちゃんと作ってある分、実用的ではなく(笑)… それはカットされていたHardcoreのシーンが復活されたXXX versionも同様で、無くても成立していたトコロに元々はあった物を戻しても冗長になると言うか… と言って、『アリス』のパロディとしては若干スケール感に乏しく中途半端さは否めなくもありませんが。
 
 しかし…
 
 この程度のHardcoreシーンでもまだ一般の劇場で公開されているという点で実用的であった時代だからこそ、こういう無駄なトコロに手間暇かけた作品が出来たのであろうと思うと、最早Hardcoreシーンそれ自体でのウリや他商品との差別化なぞ出来ないからこそのキャラクターやストーリーっぽい部分の差異での商品化をしなければならぬ上にこのネット時代故の頒布の範囲の広さと消費のスピードの速さの現在はある意味で不幸と言うか… 余裕の無さのようなものを感じなくもありません。コレ、別に年寄りの何でもかんでも「昔は良かった…」ってのじゃぁなくてね、題材がポルノの、それも艶笑物だからでして… コンピューターの進化と3DCGツールの発展で映像における特殊効果は飛躍的に進歩してかかる金は確かに箆棒だけど観た事の無い映像が安全に製作出来るようになったのと比べるとそもそもポルノはもぅ1950年代頃には観た事の無い映像なんてほぼ無くなっていたじゃぁないですか。この10年で一般人でも入手・視聴し易くはなったけれども付いてる物も行為の結果も、それこそこの何千年と変わっていない中で、何を見せるのか?ったら実はもぅ無いじゃぁないですか。『Pornography - The Secret History of Civilization (2000)』でもありましたが
「そこは既に二千年前に通過した!」
 って烈海王じゃないけど、現代で所謂異常性欲と呼ばれてる行為なんてのは紀元前の遺跡から娯楽として記録に遺されているくらいでね、昔ならばそれらの情報に触れる事も難しかったけれども今日ではそうでもなく。単に観た事が無い「世界」はあるけれども、ソフトとして【世界】を探せば何処かにかはある、って時代にはユーモアに徹するにはリアリスティック過ぎると言うか、デジタルなネットワークが構築され過ぎてしまっていると言うか…
 
 いやまぁ、この作品も映画として観ればカッタルイしチャチですけどね。
 あくまでもそれはそれ、として… って事で、ね?。
 
 
 
 …って事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『Alice In Wonderland (1976)』 - All Regions
 
 Studio: Subversive Cinema
 Theatrical Release Date: 10 December 1976 (USA)
 DVD Release Date: Dec 18 2007
 Run Time: 72 min, 78 min
 
 Aspect Ratio: Widescreen - 1.77:1
 Available Subtitles:
 Available Audio Tracks:
 English - HiFi Sound
 
 Special Featuers:
 ・ Alice in Wonderland 30 years Later - Back Down The Rabbit Hole (37 min)
 ・ DVD Credits

 

 
 さてDVDソフトとしましては… これまでリリースされていた版の画質&音質を知らんので比較は出来ませんが、一応本編再生前にその具合を「コレ」から「コレ」になったよ、っと出してくれる(笑)のを信じるのならば良好ではないかと。
 このキャプチャ画像だとAfterがやや赤っぽく見えるかもしれませんがTVでの視聴では特に問題も無い自然な色合いと画質になっているかと思います。
 音質についてはもちっとシャープさが欲しかった気もしなくもありませんが… 何せ元がポルノですからそないにキッチリした作りである必要も無い… そないヒアリングに困る程ではありません。似たような時代の作品の『The School Teacher Collection』よりはクリアーかな? でも字幕は欲しかったかなぁ… 多分、言葉遊びの部分なんでしょうが若干意味が掴みかねる部分がありましたし、原作の『アリス』との引っ掛け、パロディ部分もあるんでしょうけど、チト解りかねましたんで。
 
 特典は『Alice in Wonderland 30 years Later - Back Down The Rabbit Hole』という関係者の回顧録っかインタビューなんですが、出演者が白ウサギ男役のLarry Gelamnはいいとしても何のプロダクション担当なのか不明のWilliam Margoldと何役ともつかないAdult ActressのLena Romaneさんだけ、って… そりゃKristine DeBellさんは無理っか薮蛇になるかもしれないから避けたかもしれんけれども監督のBill Oscoなり作曲者なり存命の人もいるだろう事を思うとこの三人だけで本作を振り返られてもなぁ… っと思うんですけども。
 
 ともあれ、実用的ではない艶笑物がお好きな方なら購入してみても悪くないブツではないかと思います。後は『アリス』関係ならば何でもコレクションしないと気が済まないって人以外にはオススメはしませんが、かつてはポルノであってもこういう無駄な手間暇をかけて作られる作品もあったという記録の品として、個人的に元ネタには何の思い入れも無い『Flesh Gordon (1974)』よりは楽しかった品でしたよ。