『らくごくら』#30 「RGふたり会 其の2」

 
 え〜… 大阪の噺家さんの殆どは芸能事務所に所属していて色々と面倒な事があるのは重々承知してはいるのですが、繁昌亭の昼席以外にも落語会はほぼ毎日関西圏でも多く開催されている中で2006年4月21日に行われた「RGふたり会 其の2」から笑福亭三喬師の「饅頭こわい」と桂雀々師の「鶴満寺」だけを放送する事にした経緯とか意図ってどないやねん?っと思うのでありますが… ザッとネットで調べてみると当日は雀々師が「蛸芝居」、三喬師が「花色木綿」をなされたそうで… っか「饅頭こわい」は比較的季節感の薄い噺ですが*1、「鶴満寺」って花見が題材になってますがな… もぅ秋だっせ…
 

 
上波では数少ない落語番組、しかも層の厚い落語の世界、ほぼベテランしか目にすることはないだろう。しかし、落語の文化を受け継いだ日頃あまりふれることのない、中堅、若手の噺家だって本当に面白い!スカイ・A sports+ではそんな将来の落語界を担う噺家たちにスポットを当て、にぎわい・熱気をそのままの映像で月に新作2本をお届けします。

 

 
 っとHPで言っているんですから、なるべくならば旬の噺がかかった方がええのとちゃいますかいなぁ… あと、ついで言っておくとサイン手拭プレゼントがHPに出るのが遅いのと感想や要望・意見等のコメントフォームつけてぇなぁ…
 
 ってのはさておき、
 
 笑福亭三喬「饅頭こわい」
 ちゃんとした上方版を通しで観れたのは初めてだと思うのですが三喬師の節回しのような流れる様はいつ観ても気持ちが良いですよね… 世間知や道徳をさりげなく盛り込みつつも抹香臭く無い、楽しい噺をするするりと語られてる柔らかさに気持ち良く笑わせてもらいましたな。あの音とリズム感の気持ち良さと心地良さは技術もさる事ながら師匠のお人柄、なんでしょうな…
 しっかし上方版は小話集のような「好きな物」の前段、怪談話まんまの中段からの本編、っとインド映画ばりのエンターテイメントに思えたんですが、しかし大デュマや日本でも黄表紙とか昔の娯楽作品には1つの要素だけではなく色々な要素が詰め込まれていたものでしたが、それに比べると現代の娯楽は贅沢なのか貧しくなったのか微妙な世の中になったもんですよね…
 
 桂雀々「鶴満寺」
 え〜… 私は師匠の故・雀枝師匠がアカンのですよ。
現代でも落語を通用させる為に大胆な文化風俗等のデティールのカットや噺の再編、解り易くする為の視覚化とボリュームの増減というのが思い付きや気分ではなく物凄い勉強と鍛錬、そして試行錯誤の上での結果なんだろうな、ってのは素人でも解るんですけども、提示されたお姿が私も妻も怖いんですよ。突き詰めているからこそ余計にキリキリに張った緊張感が演者の内側から、特にお顔から剥き出しに出ている感じがして痛いと言うか怖いと言いますか… 仕草がオーバーになればなる程、「すびばぜんねぇ」等のフレーズの天丼が繰り返されればされる程に観ていて気持ち悪くなってくると申しますか、精神が不安定になってくる感じになって当時からもぅ合わんものだと極力観ないように聴かないようにしていたくらいですが、それは今も同じで先日もネットにUPされてた高座を妻と共に観たんですが客席の大受けが信じられないんですよね。よぉこれで笑えるな、と最後まで一個も笑えないままに嫌ぁな汗をかいていたものです。恐怖を感じる強さは訃報を知っている分、昔よりも増えているかもしれません。それくらいいい・悪いではなく好みとして私らにとっては苦手、怖い、駄目、なんですよ枝雀師匠って。
 そう、私が好きなのは大汗をかくハロルド・ロイドではなくシレッとした無表情の中に可愛げが出るバスター・キートンなんですよ。どちらも凄いとは思うのですが、好みで言うならば断然キートンなんですよ。またフレッド・アステアがいかに凄い人かもよく解ってはいるのですが、私が好きなのはジーン・ケリーなんですよ。『雨に唄えば』で競演のデビー・レイノルズが稽古のあまりの過酷さに「もう、ジーンケリーとは二度と競演したくない」と語っているのに映画は明るくて楽しくて、そして凄いじゃぁないですか。
 時代状況の事は岐阜在住なもんで余計によぉ解らんのですが、それでも尚上方に留まらず落語界に現在にも影響がある事を思えば枝雀師匠のやられていた事を無視なぞ出来る筈も無いのですが、あくまでも好みとしての枝雀師匠ってアカンのですよ。堪忍して、って思ってしまうんです。
 
 で、雀々師匠の「鶴満寺」ですが、あの勢いに笑ってしまった箇所もチョイチョイあったんですが全体的にややクドイ目なのともっちゃりした話し方がどうにも、ってのもありましたが、私ら夫婦の好みではありませなんだ。滝の如く滴り落ちる大汗の熱演は生の高座で観ればより迫力を感じるんでしょうが、それを引いても好みではない、と。南光師匠のような乱暴さや荒さは感じず丁寧にお客さんを見ているのも解るんですが、どうしても江戸時代が舞台の噺には見えないのとず〜っと同じような人物描写で同じ構図のバストアップばっかりで風景が見えてこないんですよ。その分、すごく解り易いんですがその分春の噺らしい華やかさが薄く思えましてのぅ… 無論、この解り易さや所作に枝雀師匠が所々観てとれてたように枝雀師匠の型から雀々師匠が考えられた上でのものなのは承知してはいるんですが、どうも個人的には演者の熱もさる事ながら艶っか色気と姿勢の綺麗さが好みなもんでして、それと歌舞伎にも言えるんですが古典としての伝承って部分が好きな私からすると… って事ですわ。五街道雲助師匠のように当時の文化や風俗や歴史を知らない人は知らんまんま置いてきぼり、ってのでも私は構わんのです。マクラやフリが説明だらけになるのは親切ではあるしそれはそれで方法論だとは思うのですが、観て聴いてよく解らんけれども知らんけれども演者の人のイメージとは違うんだろうけれども見えてくる、ってのの方が好みなんですよな。そういう点で物足りないし、好みではないなぁ… と。
 
 
 
 次回放送は#31「第7回朝日いつかは名人会」の前半、これまでの構成でいくと前座の三遊亭歌ぶとさんの「道具屋」、瀧川鯉橋さんの『時そば』、そして五街道弥助さんの『星野屋』、ってトコかな?『星野屋』は読んだ事しか無いんで楽しみであります。
 で、#32の後編で「とっておきトーク」、そして喬太郎師匠の『錦木検校』。これは知りません… どうも私、人情噺が苦手なもんで疎いんですが、これも楽しみですな…
 
 次の第8回は来年の1月、ナビゲーターに二度目の柳家花緑師匠ってのも楽しみですが… 染二師匠は駄目ですかねぇSky-Aさん? 上方落語界にも活きのいい若手はいるんですし、御江戸での場って点でも駄目ですかね? 
 

*1:しかし上方版は梅雨前から夏ぐらいですよね、多分…