『大武生 (My Kingdom (2011))』(PAL) - Region 6

DVDジャケ。

 
時は19世紀、清朝末の中国。王への反逆が露見し一族郎党処刑になる。その公開処刑の際、気丈にも自分よりも前に処刑される妹の為に清らかに歌いあげる二奎に心を動かされた弟子の一龍の求めもあって京劇の武生(役者?)の余(元彪)は二奎を救い引き取る事にする。武生になるべく兄弟弟子として修行を積む二人の目標は王より京劇の素晴らしさから『武生泰斗』の額を賜った師匠・余だったが、その下賜を祝う席に上海の武生・岳が現れる。それぞれの派で長年争ってきたがこの十数年はお互いに関わらないようにしてきたものの、王からの評価に我慢がならず額をかけての武生勝負に現れたのだ。結果、余は破れ、額を奪われてしまう。
 
それから15年、山奥で余の元で研鑽を積んできた一龍(呉尊)と二奎(韓庚)は、遂に師から一人前の武生となったのを認められ山を下りる事となる。岳を探し出し仇討ちをする為に彼等は上海へと向かう…

 

 
昨年末、日本でも映画祭で上映されひょっとすると日本版DVDもリリース?って本作の購入の決め手になったのはこの予告編とアクション監督の洪金寶(サモ・ハン・キンポー)の名前でございましたが… 個人的にはとっても惜しい映画でございました。
 
物語の粗筋を読んだ時点でボンヤリと復讐劇か青春残酷物語かってイメージをしていたんですが… まぁ大まかには青春残酷物語系だったんですけど… それをやる為の登場人物の内面や性格を現すエピソードが極めて薄いんで、物語の流れとしてクライマックスに相当するであろう一龍と二奎の対立以降がもひとつ盛り上がらないんですよ。物語の構成はちゃんとしていてテンポ良く無駄が無いんで頭ではこのお話のクライマックスなのは理解出来ているんですけど、そこに感情移入が出来ない。むしろ「起承転結」で言えば「承」に位置している舞台での岳の仇打ちの方が色彩的な見事さもあったし、そこまでならばこういう不足感は感じなかったんですよね私… これが、例えば子供時代の性格の違いとかそれぞれの生い立ちの違いとかをせめて3分、台詞無しでいいからあったらもうちょっと違った印象があったと思うんですけどね… うん、岳の弟子でもあり愛人?でもある女性とか上海租界の長官とか、キャラクター的にあとちょっと足ししてくれたらば、って思う部分もそれなりにありましたな、うん。でも、全体的にそういう人物像ってよりはあくまでも物語優先ってあえてしてるのは解るんで文句ではないんです。ただ、個人的に惜しいなぁ… っと。
 
しっかし、武術経験が無い台湾と韓国の明星の二人がさながら龍虎の如く武生の若き才人に違和感無く見えるのは凄かったですよ。勿論、トレーニングもしたんでしょうけど彼等がちゃんとそう見えるように殺陣を組んだ上でカットを細かく割らないで緩急つけた映像に仕上げ、必要以上に楽曲をつけずかけずでまとめたのはスタッフのセンスの良さでありましょうて。MV出身の監督だそうですが誤魔化すのと派手にする為にカット数を矢鱈と増やして何やってるのか解らないのにしちゃわないんですよ? そっちの方が断然楽だろうに、そうはしてない。ちゃんとしてるって言えばメイクや衣装もちゃんと時代物だけど安くも軽くもなく浮かないし抜けが見えない美術とかも映画ならではって思いましたし、一番なのは殺陣が単なる闘争(優劣や正誤の決定)ではなく物語的な意味っか暗喩があるのもまた私には楽しかったですよ〜、って事で、昔ながらの香港カンフー映画とかアジア映画の勢いある出鱈目さこそが値打ち!って方にはちょっと向かないかもしれませんが、そうでなければ日本での劇場公開なりDVDレンタルが成ったのならば観てみても損をした気にはならない作品ではないかと思いますよ〜、っとぉ。
 
 
さて、
 
購入したDVDについて、ですが… 劇場版予告編とメイキング風映像2本、ED曲のMVと少ないけれども値段の安さからいっても上等ではないかと。映像、音質共に問題無く未見の人でこの拙文で興味を持たれた方ならキャンペーンん時の数合わせにしてもいいんじゃぁないんでしょうかね?