『人再囧途之泰囧 (Lost In Thailand (2012))』 - Region 6

DVDジャケ。

 
研究者でもありビジネスマンの徐(徐崢)は数滴垂らすだけでガソリンを数百倍に増量させる薬品を開発する。もっと研究を重ねて商品の完成度を上げ長期的な商品として育てたい徐と、フランス会社に売却して次のプロジェクトに取り組みたい会社の共同マネージャーの高(黄渤)とで対立。どうしても薬品を大事にしたい徐は会社の最大の出資者である周からプロジェクトの委任状を貰う為、周が休暇を過ごしているタイへ行く事にするが、着いたバンコク空港で徐を追ってきた高を発見。たまたま機内で知り合った変な若者・宝(王宝強)を利用して一時はその場を凌ぐのだが…
 
実は徐は研究とビジネスの為に結果的に家庭を蔑にしてしまった事で妻から離婚を切り出されており調停を間近に控えていた。家族も発明も守りたい徐は果たしてチェンマイにいるという周の委任状を得て、出廷する日までに帰れるのか?

 

 
昨年末の12月12日に中国で公開されるや2012年度どころか中国映画史上最高のヒット作になったという本作(参照)、大陸映画で武侠物でも政治物でもない現代を舞台にしたコメディ作品で、ってのに興味をソソられてのオーダーでしたが予告編を観た時点では正直言ってあまり期待出来なかったのは所謂中華コメディっていうと、まぁ世代的に香港映画なんですけども、ぶっちゃけ恐妻ネタとシモネタがメインってのが実に多かった印象がありましてのぅ… まして自国ではなく他所の国が舞台の場合、何のかんの言っても中華思想的っか上から目線げなのが鼻につく作品も決して珍しかないんでそういった部分も含めて今の中国の空気っか気分を感じられれば… そう、そのお国の気分を感じるならばエンタメ、中でもエロかコメディって思ってるもんでオーダーしたんですけども、
 
 いやぁコレ、面白かった!
 
 っと、事前にアレコレと想像してたのが開始数分でキレイにすっ飛びましたな。
実は今回購入した版、画面に真っ白の簡体中文と英語字幕がプリントに焼き付けられてるシロモノで、ただでさえ中華系の英語字幕は表示量が多い上に速いのに絶望的に読み辛いという三重苦、結構英語の台詞が多かったとは言えメインの中国語は殆ど知らない私だったんですけど、物語の進行や情況を台詞だけで説明したり流したりする事なくキチンと場面シーンとして見せてくれて、且つ、シモネタも人種差別ネタもそのお国特有のネタもほぼ無い、中国共産(党)主義肯定プロパガンダも無し、異国でのカルチャーギャップが笑いのネタでもストーリーのキモでもない、やってる事としては日常的にあっても不思議ではないレベルの、登場人物の突飛奇異な奇行言動ではなく物語における行動と選択による結果としての演繹げなドタバタってのですから実に解り易いものでしてねぇ… 観ていて厭な気になんないんですよね。最後までお話や登場人物を無理に拡げたり盛ったりしないで、無理に泣かせや人情物にしないで、登場人物のキャラに任せっぱ・ほったらかしにしないで、軽く(ライト)にテンポ良くまとめている点といい、観た後に楽しかったという気分しか残らない娯楽としての映画に徹しているのが私にはとても好ましかったんですよ…
 
香港映画ともまた違う、非常に手堅く且つ泥臭くない編集や構成やカット割り、心情や情況やらを台詞で説明しないなど映画としてとても楽しい作品だと思うんで広く日本人にも観てもらいたい作品だとは思うんですが… 実際、キチンと吹替えしたらば何処の国の映画か解らないんじゃぁないかと思われ… しかし前述したように「中国映画」としての味は薄いですし、そもそも舞台がタイである必然性が無い、主人公はくまだまさしと高橋克美を足して2で割ったハゲのオッサンだし、雄大な景色も美食も恋愛要素も無いうえに(日本人にとってはさしたる)時事性も社会批評性も教条も無いコメディなんで多分、日本では上映されないでしょうし仮に何処かの映画祭でされたとしても
「何でこの映画が中国映画興行史上の最高作?」
 って思われるのかもしれませんが、逆に言えばそういう映画だからこそ中国映画興行史上最高作になれたのが2012年末の中国の大都市の人々の気分ではなかったかと。これが中国国内で公開された時期が半年前後していたら多分、そこまでのヒットはしなかったと思います。でも、そういう作品が中国でも作られて大ヒットという形で消費されてるって事はいい事なんじゃぁないんですかねぇ… だからこれを観るまでの時間がかかればかかる程に観る意義や意味は薄れていくように思えますし感想も変わってくるんじゃぁないんですかねぇ… もし公開を考えている会社があるのならばなるべく早めの公開をした方が… それこそ何で今年の沖縄国際映画祭に入ってないの?とか… と思いましたよ、っとぉ。
 
 
 さて、
 
DVDソフトとしましては… 前述しましたが「画面に真っ白の簡体中文と英語字幕がプリントに焼き付けられてるシロモノ」なのが難点。特典も協賛会社のCM?げな20分程度のショートフィルムで、様々な人達が乗った春節帰省のバスが雪山で遭難して、ってので本作との関連性がサッパリ解らない物だけ*1で予告編も何も無し、音声も固定といった物ですが… 値段相応、なんですかねぇ… 一応香港版とかにBlu-rayもあるようですが元々低予算映画だったそうですしこれはこれでアリなのかな?っと。
 

*1:チョイ役で台湾の明星の羅志祥が出演してるのは驚きましたが。