『日本の話芸』 笑福亭福笑「千早ふる」

 
 私も注目している噺家さんの中の一人、笑福亭たま師のお師匠さん、って程度の知識しか無かったんですが… いやぁ、何と言いますか、凄かったですなぁ… 上下を切らないって極端などカメラ目線に見える独特なスタイルは初めこそ戸惑ったものですが、実際にはカメラ目線ではないというのがまず面白いですし、噺の方も「千早ふる」ってこんな噺でしたっけ!?(笑)っと思うくらいに「崇徳院」等の他の落語小ネタを挟みつつ浪曲河内音頭も出て来る賑やかなものなんですが、カッチリした所作のベースがあっての崩しとあの御顔での「間」すらも置いてあるものであって高座としての密度がかなり高いもので… 何と言いますか、江戸落語がどちらかと言えば言葉でデティールを埋めて隙間を開ける事で笑うタイミングを作るように私には今んトコ思えるんですが、上方落語はそれとは違って間すらも詰めて「笑う」なり「泣かせる」という感情の奈落にお客を落とし込むかのような手法のように感じているんですけどもこの「千早ふる」、逼迫もしないし執拗に抉る事もしてない分だけ私の好みではありましたし、何となくではございますが師弟の繋がりが見えたような気もしなくもない点も込みで久々に面白いと思えた『日本の話芸』でしたわ…
 
 でもNHKが公共放送としての役割云々を言うんなら、せめて「話芸」に義太夫長唄浪曲も講談も独立した番組で… 月曜日は落語、火曜日は浪曲、とか… なんて贅沢は言いませんが、せめて江戸と上方は別々の番組にしてもらいたいですな… あと、もぅちょっと若手の起用と、上下に合わせたスイッチングは止めてもらいたいですなぁ… それとこれは最近思ったんですけど、高座の噺家さんを水平に正面から撮影ってのもどうなんだろう?って気がしてるんですよ。普通は若干見上げる形になると思うんですよね。で、それを意識しての型ってのが落語にもあるんじゃぁないかと。それをTV的な見易さの為に、ってのも番組的にはアリなんでしょうが伝統芸能っかアーカイブ的には違ったアプローチもあるんではないのかなぁ… っと。特に今回上下を切らないって形にしている福笑師匠だからこそより感じれた、ってのもあるんですけども、ね。