くるま、車、クルマ。(その2)

 
私が中学生くらいの頃まで母がVWのビートルを乗っていた。確かに可愛らしいデザインだとは思うけれど、狭いし五月蠅いし何よりクーラーが無いから夏場は地獄。おまけに結構な頻度でのトラブルが多かったのも私が輸入車に対する不信感の元になったんですが… って私が大学生になって写真入り身分証明書としての運転免許証を得て、大学までの通学に自電車やバスではチョイとキツイのもあっていよいよマイカーを、となったけれど、いざその立場になってみても子供の頃からの考えは変わらないのでとりあえず、家からチョイと歩いた場所にあった日産直営の中古車販売店に行ってみて基本自分しか乗らないから「車体の大きさ」と「値段」で、その結果選んだのは
 


多分、このCMのと同じだったと思う。色も同じ赤だったけど日焼けが露骨だったのもあってか中古で全部込みで40万くらいだったっけか… うん、まぁ確かに”スカイラインの弟分”ってキャッチフレーズもチョイと購入を刺激したのはあったけど、無事故車なのに兎に角安かったのと大きくなかったのが自分にはベストだと思えたので即決だったけど… 酷い車だった… 金が無いワリにガソリン代で困った記憶は無いから燃費は当時の普通だったんだろうけど、やたら前が長い見かけ以上にフロントヘビーで走らないし止まってくれないからブレーキパッドが減る減る減る。サスも結構甘いっかヘタり気味だったのか柔らかいからグッと前が沈んでリアが振られて曲がらないし車体がミシミシいうし、ボディバランスが悪いからか真っ直ぐ安定して走ってくれないし… 初マイカーで自動車運転に慣れてないのに前方の見切りが悪いのも重なって電柱やら壁やらに擦りまくり。安定性の為にリアに重ししてタイヤを太くすれば良かったのかな?と今なら思うけど当時の自分には金も無いしで本当に参った。スポーツ車を意識してなのか車内スペースも狭い方で、友人らを乗せる時の3ドアならではの面倒以上に窮屈さ、加えて事故ってもいないのにドアノブ、窓のハンドル、バンパー、マフラーが落ちる外れるってのもあって、結局車検の前にお別れする事となった。
 
で、その反省点を踏まえての二台目は大学の近くにあった中古車屋にあった
 

 
が、込み込みで本体価格68万円って値段でありまして… 色は白で経年を感じさせなかったのと、3ドアのスポーツ系で懲りた私としては安定して落ち着いた感じを好ましく思い、確かにノンターボ車だったけどそれでもこの値段はちょっと安さが過ぎるので友人のOちゃんにも見てもらって特に問題も無さそうだったのでラングレーからの乗り換えにしたんですが… これまた困った車でございました… 妙な味付けがあって、ノーマルの筈なのに加速の際「きゅぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜ん」ってターボ車みたいなエンジン音が楽しかったけどやっぱりフロントヘビーでして… ホイールベースをはじめとして色々な部分でラングレーよりはマシだったけど1600ccってエンジンには自重が釣り合ってなくて。これもタイヤを太くすりゃぁマシになったのかもしんないけど、そこまで手間暇金をかけたくないんでそのままだったんですけど、やはり過重分の所為でブレーキパッドが減る減る。車検前に何度か交換しなきゃならなかったくらい、止まるには気ぃ遣う車で、スポーツ車じゃない車を購入した筈なのにちっとも安定感が無いのには閉口しましたが、まぁ車なんてそんなもんなんだろう、と思っていたんですが…
 
母が友達の中古車屋のオーナーから勧められ、気に入ったんだけどちょっと自分にはサイズが大きいって事で私に話が廻ってきた
 

 
正直、内装はこれより前のブルーバードよりダサイと思ったんだけどチ^プじゃぁないし車内スペースの広さと動かした時の質感、安定感に一発で惚れてしまった。1800ccってエンジンパワーは走り出しも加速も私には不足も不満も感じない丁度良さだったし、キチンと思ったように止まるブレーキングに不快感も無く、曲がる時にもバランスが良くて剛性もあるから実にスムーズで余計な不快感や車体の軋みも無くて、それでいて静穏性も高く、車体の大きさのワリに見切りも良いのも相まって
「これが世界のトヨタか!」
 と目が醒めるようで… 特に100キロを越えてからの伸びと走行感が自分のイメージ通りにいってくれるのが心地よかった。燃費はリッター8キロ程度だったっけか、込み込みで100万しなかったけれどその値段が信じられないくらいに私にはいい車でしたなぁ… 自分にとっては積載スペースが過分なのを除けば求めるモノを全て満たしていて、何よりこれまでの車と違って本当にメンテに神経を使わなくても良い車で、本当に駄目になるまで乗り潰そう、と思るくらいに、落ち着いたグレーの車体色と併せて私には丁度良い車だったんですが…
 
8年後、祖母が死んで。考えもしなかった祖母の遺産が私にも分配される事になって喜んだのも束の間、
「お前に現金を持たすのは良く無い」
 という建前と親類の営業成績の為に、私が全く知らない間に
 

 
 に乗り換える事が勝手に決定されていて…
母に知らされたのは納車前日の夜で。当時放送されいたCMは髭ヅラのつんくがどアップで「変わらなきゃ」って言うヤツだったけど別に不満も不足も感じてなかったのを変えられる事への不満と喪失感で落ち込んだんだけど、もぅ納車は決定事項でどうする事もならず… 翌日、現れたのは銀色のX エアロツアラー。車体色は汚れが目立たなくて今時の流行だから、ってので決定されてしまってた。欧州で主流になりつつあるというコンパクト系ってサイズ自体は気に入ったものの、意味を感じないエアロパーツはどうにも趣味ではなくて。
「試運転、ご同乗しましょうか?」
 とにこやかに言ってくれた営業の人には悪いけど、
「あぁ、結構です」
 と素っ気なく言ってしまったのは今思えば八つ当たりで申し訳なく思う。実際、乗ってみれば悪い車ではない、とは思った。「いい年してんだし、そろそろ新車に乗っとけ」という親の言い分はまぁ田舎だから分からなくもない。しかし、カムリが自分に丁度良過ぎていた。数値的な差よりも、体感的に立ち上がりも加速も重く感じて。安定感はあるけれど、何処か鈍重さを感じるハンドリング。それ程車長に違いは無い筈なのにカーブで振られる感じがして。燃費はリッター10キロ前後で当時としては悪いものではないが、カムリだって9キロ程度はイケてたし。まとまってはいるものの「あぁカローラだよなぁ…」と思ってしまう内装。やや堅めのシートとハンドリングはスポーティってのかもしんないけど、街乗りメインにはやっぱり堅いとしか思えなくて… 先ず、カムリに問題が出ていなかった。不満や不足を感じていなかった。故障とは無縁で、これだけ大事に乗っていればまだまだ乗れますよ、と車検の時にも言われたくらいだったのに、それが唐突に、本当に唐突に、望んでいないのに乗り換える事になって… (続く)