『風立ちぬ (2013)』

 

【公式サイト】
 
金曜ロードショウで放送されてはいたけど広告やCMでの中断が合わないだろうて… って事でレンタル視聴。
 
 ごくごく単純な感想としては
「映像表現で観るべき部分はあるものの、やっている事は『紅の豚』と一緒だし、作品としての出来も『紅の豚』の方がよく出来ているので、わざわざ観るべき作品だとは思えない。」
 ってトコでしょうかね、私には…
 
宮崎駿作品における父親、というのは大抵自覚なき自己中のロクデナシで”本作における”堀越氏は『となりのトトロ』のお父さん、『千と千尋』の千尋の父親、『ハウルの動く城』の王様、『崖の上のポニョ』のフジモトと大差無いブレさな、ってのは相変わらずだと思うけれども、わざわざ森山周一郎に声を担当させながらも豚にした照れと諧謔さがあった『紅の豚』がカッコつけ、やせ我慢と言う人もいるんだろうけど、ぶっちゃけ男がフルチンになったって大して面白くないと思ってしまう私からすると… そう、フルチンになる”場”と”タイミング”があってこそ笑えもするし、意義なり意味なり、批評性もあるとは思うが… 今迄の作品で既に露骨に散見してたものを改めて、ってのもねぇ… としか思えないと言うか。敢えて言うのならば、一大スペクタクルにも出来た筈のカーチスと組んでのイタリア空軍との時間稼ぎ以降を描かなかった『紅の豚』と、一瞬でもキチンと編隊飛行をする零戦を描いてしまったうえに「生きねば」と語らせた『風立ちぬ』では、とかね…
 
宮崎駿がアニメーション以外の映画作品も非常に数多く観ているのは良く伝わるし、あえて今作では愚直に映画的にオーソドックスでスタンダードだからこそ難解とも思わなかった。むしろ前作『崖の上のポニョ』と比べると開き直りというか生に対する諦観みたいなのは私には好ましいんだけども、今迄の作品よりも演出が実写映画のリアルに引っ張られてる… ドアの開ける、煙草に火をつける、等の動作のリアルさったら… 分、ぼってりとした水彩の背景とべったりした動画との乖離等が気になっちゃった、とか、なんかこぅ、もやもやっと、庵野氏の声以上にしっくりこなかったんですよ。ぶっちゃけ同時期に高畑が『かぐや姫』やってなかったら?とか思わないでもないくらいに、ややもすると”総合芸術”って実写映画へのコンプレックスとも見れなくもない本作は… とか、思ってしまいましたね… うん、無から描く事で精緻るするアニメーションという表現の自由さを、とか、ね… いやまぁ最後まで退屈しなかったんですけども。ただこれで引退って言われても納得してしまいまいました、っとぉ。