新春落語始 〜 ぎふ名人会。

 

 

 

 
「落語は草履履きの芸。ふらっとのぞいて楽しんでいただけたらうれしいです。」
 と、以前染二師匠からお言葉を頂きましたが寄席の無い田舎での気軽さ気易さは顔付けってよりは主催運営のスタッフの方々とハコだよなぁ… と思う私からするとこの企画は凄く面白そうな半面、じゅうろくプラザというハコが… 第一回ん時にも書きましたがアクセスは岐阜駅すぐって抜群に良いんだけれど中途半端な大きさ故に音響も空調もイマイチでおおよそ落語に向かないだけでなく、狭くて硬くてしかも観難い仮設椅子で3時間近く6席、というのはナカナカに体力勝負なトコもあってちょっとチケット予約前に迷ってしまいましたが… しかし協会、芸協、上方という組み合わせだけでなく、お三方ともに笑顔は柔らかいけど隙が無い御方だらけで、そのうえ生で以前から観たいと思っていた三喬師匠まで… ってのでえいやっ!と決めた会でしたが、当日の入りは「花見の仇打ち」なのが勿体無い、明るくて楽しい会でしたわ…
 
一之輔師の「茶の湯」、以前ポッドキャストで聴いた時より定吉の暗躍がえらい事になって笑っちゃいましたねぇ… 「浮世床」は正直言えば「逃げた客」までとは言わないものの「夢」まで聴きたいと思うくらいに一之輔師の若い衆が気持ちのいい高座でした。いやしかし、キチンと落ちない「本」のオチをあぁするなんて思いもしませんでしたわ…
 
鯉昇師、すっと一礼してから顔を上げて暫くの間、だけで笑いが起きるんだから流石ですよね… 淡々としていて実は木目細かく濃い気配りでの二席、「千早ふる」は御隠居があんな酷いのは初めてで。大抵は「つる」「やかん」のような偉そうな無学者パターンかと思ったんですけど以前観た福笑師匠版といい、前座さんから真打の師匠までかける噺でそれなりに聴いている噺なのに今回も本編の筋だけでなく酷い御隠居のディティールまで盛ってそれでいてクドくなく笑わされてしまうというのは凄いなぁ… と。二席目の「武助馬」、私は初めて知った噺でしたが題名やらから芝居噺かと思ったのですが勿体つける事もなく非常に呑気なものでこれも楽しかったです。
 
そして三喬師、『らくごくら』等で拝見してた時には勝手に「あまりお客を意識しない」タイプの噺家さんではないかと思ってたんですが、やはり実際に観てみないと解らないもんですよね… 実に細やかな気配りをなされていて、尚、それで押しつけてくるでなし。力技で捻じ込み抉るように畳みかけるのではなく微妙ぅなテンポの調整とカッチリとした所作が綺麗な方で、何れ機会を見付けて大阪に行こうと思ったくらいに素敵な高座でした。「三人旅」は宿場前まで、なのが勿体無い!っか三喬師で「東の旅」通し、やってくんないかなぁ…(無茶だ) それと初めて生で聴けたほぼ通しの上方版「初天神」の楽しさったら! 終焉予定に合わせる為か凧を買う件のやりとりが無かったのがちょっと残念でしたがしかしキチンと時間に合わせて尚不自然ではないのは腕、ですよね… シンプルにそぎ落として尚面白い一之輔師の「初天神」も大好きなのですが、様々な人々の人間模様があった後の河原での凧揚げという情景に溢れる上方版もやっぱり好きですわ。
 
 
去年は台湾旅行に注力して繁昌亭にも行けなかったし、今年はまた上方落語を聴きに出かけようかなぁ…