『Chennai Express (2013)』

DVD - [2 Disc Special Edition]版ジャ

 
幼少の頃に両親を交通事故で失い、祖父が営むスイーツショップで働くRahul(Shahrukh Khan)は日々の仕事に追われてもぅ四十。仕事が忙しいだけでなく祖父の心配性もあって恋愛どころか自由に旅をするのもままならずの日々で。
 
祖父の百歳の誕生日の後、同年代の縁者とゴア旅行にと出掛ける筈がまさにその直前の夜に祖父が急逝。何とかゴア旅行はと思っていたRahulだったが祖母はかねてから祖父が言っていた「遺灰はガンジス川とラーメーシュワラムの海に撒いて欲しい」をRahulにこそやって欲しいと頼まれ仕方なく引き受けた彼氏ではあったが目前のパーティが控えたゴア旅行を優先すべく、とりあえずチェンナイ行きの急行電車に乗るフリをするつもり、だったのだが発車しはじめた電車に駆け込んで来た美女と、同じように駆け込んで来た大男らをつい電車に引き上げてしまっている間に電車から降りられなくなったばかりか助けた美女Meenalochni(Deepika Padukone)の結婚からの逃走騒動に望んでもいないのに巻き込まれてしまい…

 

 
2013年の興行成績第二位の大ヒット作、『Om Shanti Om (2007)』以来のシャールクとディーピカの共演、しかもコメディタッチの娯楽作品っぽい、って事で楽しみだった作品でしたが… 贅沢なロケーション、豪華なダンスシーン、そしてカッチリと編集されてまさに題名の通りの特急電車のように実にテンポ良く進行していくお話は喜怒哀楽テンコ盛りでのハッピーエンド、だったんで妻共々最後までするっと観ちゃったんですが、主演二人が同じって事で『OSO』と比べると… もひとつ、こぅ、ノれなんだと申しますか… 手間暇かけられて作られたのはよく解るんですが、この作品ならではのサプライズ感とか視聴以前の期待感・想像を超えるようなsomethingは無かったというか…
 
『OSO』のように主人公がシャールクでなければならない物語ではなかった*1、って以前にまず登場人物はぶっちゃけRahulとMeenalohniの二人だけなのに物語の進行・テンポを優先しているからドラマやエピソードが全然足りないってのが大きいかと。まぁ後者については、ドラマやエピソードがガッツリってのならそれこそ南インド映画を観ればいいワケで、このライトさこそがBlockbuster作品になれた匙加減なのやもしれないんで何とも言い難いんですが… でもねぇ… 個人的には親から押し付けられた結婚から逃げる為ってのだとBlu-ray版まで購入しちゃったテルグ語映画『Brindavanam (2010)』(感想)が沢山の登場人物を配し山盛りのエピソードを巧く纏めて繋いで紡いでいって、しかも最後にトボけたオチをつけて終わらせた娯楽作品だったのと比べると何とも薄味なお話と思えると言うか… うん、映像の豪華さ・スケールのデカさと比べると物語があまりにも小さいっか、多分テンポアップの為に大幅にカットしてるだけで脚本はもぅちょっと長かったんじゃないかと思われるくらいに回収してないエピソードが散見し、繋がりがあまりにも変な部分が気になっちゃうんですよ。
 特に今作において主人公らが恋愛の成就の為の過程と試練の為の地方の郎党のドンであるMeenalochniの父Durgeshwaraと本来の結婚相手Tangaballi(Nikitin Dheer)って存在との対立とキャラ立てが緩い分、クライマックスが盛り上がらないんで素直にハッピーエンドでメデタシメデタシって気分にはちょっとなれなかったんですよ… っかTangaballiがいい奴過ぎるとですよ。もし、仮に私だったら、ってので考えると
 

  • 【Tangaballi、実はすっごく悪党だったパターン。】
    • 父Durgeshwaraも彼に騙されて裏切られ窮地に。
    • Rahulの怒り、大爆発! 大暴れ!!
    • Rahul勝利。Durgeshwara、自分が裏切りを見抜けなかった事を恥じ引退を宣言。
    • Vidhamba村の人々、登場。Durgeshwaraを諭す。大団円。

 

  • 【Rahul、改心と贖罪のパターン。】
    • 肝心なところで逃げてばかりいた自分に気が付き、キチンと向き合おうと決心する。
    • DurgeshwaraとTangaballiにこれ迄(結果として)嘘を吐いていた事を告白し謝罪する。
    • 結果として嘘だった分3回、Durgeshwaraにぶん殴られるRahul。
    • 無礼をした分の1発、Tangaballiにもとりあえず殴らせる。
    • 正々堂々とTangaballiと対決。決して諦めず何度でも立ち上がるRahulに根負けし、彼を勝者として讃えるTangaballi。
    • 大団円。

 

  • 【上記2案の折衷】
    • 肝心なところで逃げてばかりいた自分に気が付き、キチンと向き合おうと決心する。
    • DurgeshwaraとTangaballiにこれ迄(結果として)嘘を吐いていた事を告白し謝罪する。
    • 結果として嘘だった分3回、Durgeshwaraにぶん殴られるRahul。
    • さぁ、正々堂々と勝負!の筈がTangaballiが裏切り、Durgeshwaraが窮地に。
    • Rahulの怒り、大爆発! 大暴れ!!
    • Rahul勝利。しかし諦めきれぬTangaballiが背後から襲いかかろうとするのをSamsherが止める。
    • Durgeshwara、自分が裏切りを見抜けなかった事を恥じ引退を宣言。
    • Vidhamba村の人々、登場。Durgeshwaraを諭す。三人を中心にして大団円。

 
…ってトコでしょうか。ちょっと前の南インド映画なら3番目だったのでしょうが… ただまぁ、先にも書いたように、このライトさこそが今のインドでBlockbuster作品になれた匙加減なのやもしれないんで何とも言い難いトコだとは思うんですけどね… それこそマンガだと割り切って細かいトコに引っ掛かるよかそのテンポであぁ楽しかった、ってのが正しい観方なのかもしれませんけど、ね…
 
でもなぁ… 例えば劇中で二人が互いに親近感を持つエピソードとしてラジニカーントの映画で盛り上がる*2、ってのがあるんならばEDロールの
 

 
 も楽しいボーナストラックになったんじゃぁないの?とか、まぁ思ってしまうワケで。
 
 しかし間違いなく劇場で観る事しか考えていない映像は兎に角圧巻っか圧倒的、劇場で沢山の観客と一緒にってのが正しい観方であって、そういう作品を家である程度冷静に観る方が間違ってるんでしょう、うん。例えばこの「Kashmir Main Tu Kanyakumari」、
 

 
 物語の流れとしては結構イッパイイッパイでの脱出、の次のシーンなのにえらく呑気なダンスシーンでしょ? だけど劇場の大画面でこんなスケールと密度と色彩をぶっ込まれたらもぅなんも言えないと思うんですよね… あぁ、スクリーンで観たいなぁ… 字幕翻訳は『OSO』以上の地獄になるだろうけど、観たいなぁ… 
 
 

『Chennai Express [2 Disc Special Edition]』
Label: T Series
Theatrical Release dates: 9 August 2013
Runtime: 141 min
No of Disks: 2
Subtitles: English
Audio: Dolby Digtal 5.1 Surround, Dolby Digtal 2.0
Video Format: NTSC
 
Features
・Making of the Film (35 Min)
・Song "Lungi Dance... Featuring Yo Yo Honey Singh" (3 Min)
 

 
さて、DVDソフトとしましては…
 
音声に関しては何の問題もありません。5.1を空間よりも厚みに使った感じでこういうアクション物には合ってると思います。映像の方は… 若干、青味が、チョイとだけ強い感じがしたのとシーンによってはちょっとボケて潰れてるようなトコも散見。あくまで想像ですがオリジナルデータからのエンコードってよりはCS、BD版クラスのデータからエンコードって感じがするんですけども、まぁノイズがあるでなし気になるって程ではないかと。ただ特典がメイキング、たったの30分ってのは… あとEDロール曲の”Lungi Dance”フルサイズが歌手のYo Yo Honey Singh混じり版ってのは!(怒) そんなんはT-Series社が山ほど出してるソング集に収録すりゃぁいいじゃぁないですか… なので、ここはひとつ省スペース&高画質のBlu-ray版の方がお勧めではないかと思われ。まぁ値段はちょっとしますけど、今どうせ買うんだったら、ってトコですかね、っとぉ。
 

*1:逆にヒロインはディーピカ以外にちょっと思いつかない。その点ではOPロールの出演者順は正しかったように思えたです、はい。

*2:周囲のヒンディ語が解らない村人と内緒のやりとりで歌い合うってトコで、多分『パダヤッパ』だと思われる節回しがあったけどスルーだったのを、ついお互いに顔を見合わせて次々とラジニ映画の曲を歌うのに夢中になって周囲も一緒になって大騒ぎになって我に返る、ってのにするだけでも印象が違うと思うんだけど… それだとインド人的には面白くないのかなぁ… あそこのシーン、半分以上シャールクの映画のだったんだからそういうのもアリだと思うんですけどねぇ…