『Kabul Express (2006)』

DVDジャケ。

 
 2001年11月。TV局の依頼を受けてアフガニスタンに着たインド人ジャーナリストのSuhel(John Abraham )とカメラマンのJai(Arshad Warsi)は現地のアフガニスタン人のガイドKhyber(Hanif Humghum)が運転する車"Kabul Express" と書かれたランドクルーザーに乗ってアフガニスタンの現状とタリバンについての取材をしていた。アメリカとソ連の代理戦争の地でもあったアフガニスタンの情況はSuhelらが事前に思っていた程に単純でもなく、米国の侵攻による被害もまた想像していた以上のもので取材を進めてはいるものの釈然としないものを抱いていくようになる。
 そんなある日、車が一人のタリバン兵士の老人Talibによって乗っ取られる。途中、野盗化した兵士に車を奪われたアメリカ人ジャーナリストJessica(Linda Arsenio)も巻き込まれた一行はTalibの言うパキスタンへの越境の為へと国境へと向かう事になるのだが…

 

 
 事実をベースにドキュメンタリータッチで構成されたフィクション映画でしたが、重くなり過ぎないけれども題材・テーマは決して軽くはないのを忘れないという塩梅で、しかも中東からの視点というのは面白かったのですが本編の一部表現に対してアフガニスタン人に対する差別・侮辱であるという事から撮影に全面協力した筈のアフガニスタン国内での論争(英語)と上映の禁止が、また政治的な問題からパキスタン政府からも抗議があったそうですが… ここらは当事者ではないから何とも言い様がありませんが、単に米帝国主義の被害者としてでもなく勿論テロリストとしてでもない、ってのを映画として見せてくれたのは有難いと言うか、うん。
 個人的に一番印象的だったのが、道中、夜間空爆で誤射を受け大破したトラックを見付けた時、荷台から流れる液体の匂いにつられてJaiが舐めてみると甘くて
「これ、ペプシだよ!」
 と言うのでSuhelも舐めてみるも
「いやこれコカコーラでしょ」
ペプシだって!」
「コカコーラだって!」
 とインド人同士で言い合いになっているのを見て
「あんたら何やっとん?」
 とアメリカ人のJessicaが尋ねるんですが、Jaiが
「そうだ! あんたアメリカ人だからこれがペプシかコーラか判るっしょ!」
 と言うも
「ううん。判らんって」
「何で?」
「って言うかどっちもアタシ飲まないから。だから判らんって。」
 と答えるシーンでしての。
「侵攻で破壊し倒した後でもぅすぐに商売か! これがアメリカ人のヤリ口だよなぁッ!」
 とTalibが激怒するんですが、物語後半で明かされる正体も含めて観るに、語り口がユーモラスな分何と言うか皮肉ではないんだけども苦さと奇妙なリアリティを感じたんですよね…
 
 本編100分と無駄を省いてコンパクトに、インド映画らしいダンスシーンもソングシーンも一切無く仕上げた本作、雄大かつ荒涼としたアフガニスタンの景色の綺麗さといい私は結構気に入りましたよ。そう、深刻な情況を深刻に感情移入して語るのもありなんでしょうが、こういう形でこそ伝わる物もあるんじゃぁないんでしょうかね… と。
 
 
 
 以下はこのDVDについての情報なので興味のある人だけ
 

 
・『Kabul Express (2006)』 - Region All
 
 Studio: Yash Raj Films
 Theatrical Release Date: 15 December 2006
 Run Time: 100 minutes
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen - 2.35 : 1
 Available Audio Tracks: Fake Dolby
 Main Language:
 Hindi - 5.1 Dolby Digital Surround, 2.0 Dolby Digtal Stereo
 Subtitle: English, Arabic, Dutch, French, Kannada, Malayalam, Portuguese, Spanish, Tamil, Telugu
 
 Special Features
 ・The making of the film
 ・Music Videos: Kabul Fiza, Banja, Keh Raha Mera Dil
 ・Deleted Scenes
 ・The making of 'Kabul Fiza'
 ・TV Promos
 ・Theatrical Trailor

 

 紙製のスリムケースにDVD一枚、なれど本編が短めなのもあって画質・音質共に何の問題もございません。っかYash Raj Films社のソフトらしく綺麗な発色と鮮明なディティールはインドに限らず見習ってもらいたいものですが…
 
 また特典も豪華でメイキングは40分近いのにチャプターが無いのが難点なれど出演者やスタッフのインタビューもテンポ良くまとめたものでこれも見応えがありましたな。本編に無かったからか3本のミュージックビデオ、英語字幕も欲しかった削除シーン、ミュージックビデオのメイキングにTVCMと予告編、とボリュームもあってお得感もありますし、欧米サイトではどうか知りませんがリリースされてから時間も経ってますから今なら結構お買い得ではないでしょうか。インド映画はヒゲのデブが踊りまくるか美男美女の恋愛物語だけではない… 勿論それはそれで楽しいんですけど(笑)… 変わった一面を見せてくれた佳作だと思いましたよ〜