『Let The Right One In (2008)』 - Region 1

USA-P2009-09-13

 
 時は1982年のスウェーデン。12歳の少年オスカーは母親とアパートでの二人暮しをしている。閉塞した情況の中、クラスメイトのイジメを受ける日々に窒息しそうになっていたある夜の事、庭の木にナイフを突き立てる事でウサを晴らしていた彼は隣に引っ越してきたという少女エリと出会う。真冬の夜にも関わらず薄着だったり、何処か変わった印象を持つ彼女にオスカーの心は惹かれていくのだが…
 
 個人輸入をしているブログ等でそれなりに話題になっていたし予告編…
 

 
 の雰囲気の良さに興味を持ってUS版を個人輸入してたのをやっとこさ観たんですけども個人的にはイマイチ。
悪くはないけれどもそない褒める気にもなれんと申しますか… 映像の変なテンションの保ち方を支える編集の巧みさとか主人公オスカーとエリ役の良さもあるけれども、彼が全てを捨てなければならない程の『世界』だったのか?という点でどうにも私は納得いかないんですよ… 確かに母はあまりオスカーに関心は無さそうだけれども虐待をしているワケではないし。家を出てしまったお父さん、ひょっとしてゲイ?なのかもしれないけれども息子の前でいい父親役をやろうとしているし。クラスメイトのイジメは悪質なんだけど、それだけにしか見えないんですよ。新聞から殺人鬼の記録をスクラップし、ナイフを隠し持つ事での夢想での日々の閉塞感がもうちょっと描けていたのならば… っかね、少年の暴力とか性欲とか色々坩堝のようになってる筈なワリにすごく薄いんですよ。切迫感やら無いから閉塞感も感じられない。で、薄いなら薄いなりに何処か壊れた酷薄さがあればまた違ったんでしょうがそうでもない。となるとなぁ… わざわざ携帯電話もインターネットも、それ以前にTVゲームも無ければビデオショップすら無い時代にした意味も薄いし、特殊効果もちょっと甘い、って構成の緩い部分が物語の瑕疵を気づかせてしまうなぁ… と。合わなかった、っか、私自身にペド嗜好が薄いのもあってかぶっちゃけイマイチでありました。
 多分、本作のノベライズ原作の小説*1を読んだ方がしっくりくるんだろうなぁ… っか小説向きだと思うんですが、ただ少年の閉塞感と解放を題材にした作品ってそれこそいくらでもあるし、それと比べるとやっぱりチョット辛いかなぁ… とオジサンは思ってしまったんですけども、若い人、特にオスカーと同じくらいの年代の子にはピッタリくるのかなぁ? だけど今の子供達にそもそも携帯電話もインターネットも無い時代って時点でもぅ共感は難しいんじゃぁないのかなぁ… とか、余計な事ばっかり考えてましたよ、ええ。
 
 当初エリの父親?かと思わせる男、彼は未来のオスカーなんでしょうね。当初の殺害方法のあまりな稚拙さも、彼がオスカーと同じくらいの頃にエリを選ぶ子とで『世界』を捨てたからこそなんだと解かる部分は上手いとは思ったんですが、自分だけが年老いてゆく事をもうちょっと引き立たせるとかしてくれたらば… っか、いっそオスカー視点と情況だけにしてくれたら… って思ったんですけど、ねぇ…
 
 
 
 DVDソフトとしては非常に良質です。画質、音質共に文句はありません。っか、ちゃんとオリジナルのスウェーデン語も収録してくれてますし、英語吹き替え版と比較しても英語字幕が特におかしいとも思わなかったんでそれだけでもいいんじゃぁないんでしょうか? ただやっぱり本編が、なぁ…
 

*1:コメントのハイミーさんの指摘により訂正。wikipediaを斜め読みの誤読をしていました。恥ずかしい…