『Roadside Romeo (2008)』

DVDジャケ。

 
・大金持ちの家で何不自由の無い豪奢な暮らしをしていたものの飼い主らが海外移住?をする事になるとアッサリと捨てられてしまった犬Romeo(Saif Ali Khan)。その日のエサにも困窮していたところを町の野良犬らのグループに目をつけられてフクロにされそうになるのを口から出まかせのヘアカットを試してみたらば上手くいって認められ、美容院を開設してグループのリーダーになってやっと自分の居場所と生活が確立された夜、美しい調べに誘われて町へと出ると屋根の上で踊る美女ならぬ美雌のLaila(Kareena Kapoor)と出会う。一目惚れしたRomeoだったがLailaはつれなくて。
 
 翌日、Romeoらの美容院の繁昌っぷりにみかじめ料を取りに現れた野良犬ギャング団の手下をLailaで頭の中が一杯だったRomeoはケンもホロロに追い返した後で事の重大さに気がつき、何とかギャング団のボスCharlie Anna(Javed Jaffrey)を言いくるめ、その機転の妙や物怖じしないRomeoの態度を気に入ったCharlie Annaに飲みに来いと誘われる。野良犬や野良猫らの集う廃倉庫のバーにやって来たRomeoはステージに登場したLailaに運命を感じ、仲間に
「彼女だよ! 昨日の夜、ボクが出会った天使は!」
 と大興奮するが、実はLailaはCharlie Annaが告白こそしていないものの恋い焦がれる相手でありRomeo以外の皆はそれを知っているからこそLailaに関わらないようにしていた、と諭そうとするも音楽とダンスに我を忘れたRomeoはステージに飛び入りLailaと共にダンスをしてしまう…

 
 インドの映画会社Yash Raji Films社がハリウッドのウォルトディズニーとの提携で制作するフル3DCGアニメ、って事で興味があった作品なのですが監督がこれまで俳優メインだったJugal Hansraj氏の初監督&初脚本作品で、しかもインドでは初?のフル3DCGアニメって事でどうなんだろう? いやしかし国は違うけれど『Nak (2008)』だって素晴らしい作品だったじゃないか!という事でオーダーした作品でしたが、限られた予算と機材とソフトと人員だったからこそ捨拾選択をして素晴らしい作品に仕上げた『Nak (2008)』と比べると実に勿体ない出来の作品でしてなぁ…
 
 1つには90分って時間でも長く感じるくらいに「脚本の整理・刈り込み不足」。
名前のある登場人物が多いワリに存在の必然性が薄い、役割が重なっているキャラが結構いるんで散漫なんですよな。その上でキャラクターや世界観の説明不足と伏線に見えたけどそうではなかったただのネタ場面と相まってストーリーの進行もスムーズではないから伏線も活きないしキャラクターも立たない。ミュージカルシーンの入りも出も唐突な上に必然性があまり無いのも多いんで盛り上がりに欠けますしんねぇ… だからクライマックスがネタが悪いのもあるけど盛り上がらないんですよ。それじゃぁ駄目でしょ。
 
 次に「美術設定、管理が雑」。
人間も出るのに建物や車等のサイズがRomeoら動物らに合わせているってのはどういう事かと。まずこの時点で私は駄目なんですよ。Romeoらの美容院兼家にコンクリート土管を置いたけれどもそれから推測される彼らのサイズと町の家のドアや窓の高さから推測されるサイズ、列車のコンテナから推測されるサイズがどれもバラバラなんですよ。基本的な世界観の設定がしっかり出来ているのならば絶対にこうはならないのはピクサーの映画を観てみれば分かりますが、そういう部分を
絵面優先でやってるからお話が進めば進むだけおかしくなってくるから集中出来ないんですよ。
 同じ事はモデリングの描き込みにも言えて、ただ「省略して描き込みをしない」のと
「モデルをデフォルメをして描き込みをしなくてもいいようにする」のでは全然違うじゃぁないですか。
 そして光源位置と効果、汚し等のムラつかバラつきもあるんで、なまじ体毛やらリアル系な分だけそういう雑さが荒さと言うか手抜きに見えてしまうんですよな。
 
 そして「3DCGである必然性があると思えた絵が無い」。
単純にインド映画の人海戦術やセットの大きさやロケでの縦横無尽なクレーンの使いっぷりに慣れてるせいもあるんですが画面が寂しいんですよね。多分、普通のセル描画方式のアニメでも出来るであろう映像で、特に3DCGならではの特性も特色も感じられないんでは、そもそも3dCGでやった意味を感じれないんですよ。確かに映画会社として今後の為のノウハウ&経験値獲得、ってのかもしれませんがそれは映画会社の都合であって物語や作品の為ではありませんよ…
 
 …って事で、興行成績的にもイマイチ(年間ベスト40位以内に入れず)、って結果が全てではないかと。
ディズニーブランドって事でもしかしたら日本での劇場公開なり日本版DVDリリースがあったとしても、私は全くオススメはしませんね… そう、せめてインド映画ならではの要素があるのならばまた違ったのかもしれません。例えばRomeoとLailaが出会った時に土砂降りになる(笑)、とか、インド映画ならではのお約束とか決まり事とあるんならばまた印象も違ったんでしょうが、そういうのは一切無いのであってはなぁ… これが2005年くらいの作品ならばまだ評価は甘くもなりましょうが2008年の作品ではね… っとぉ。
 
 
 
 …以下はこのDVDについての、なので興味のある方だけ

 
・『Roadside Romeo (2008)』 - Region All
 
 Studio: Yash Raj Films
 Theatrical Release Date: October 24‚ 2008
 Run Time: 93 minutes
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen
 Sound Coding: Dolby Digital 5.1 / Stereo
 Subtitle: English‚ Malayalam
 
 SPECIAL FEATURES
 ・The Making of the Film
 ・Deleted Scenes
 ・Animation Process - Start to Finish
 ・Bloopers
 ・Music Launch
 ・Modelling - Rigging - Lighting
 ・Theatrical Trailor (60 Secs Version)
 ・Promos

 

 
 DVDソフトとしましてはYash Raj Films社らしく画質、音質共に良好です。メインメニュー前のアニメ部分がちょっとウザいのを除けばメニュー表記も分かり易いし特典も数は揃っているのでソフトとしては悪くはありませんが、しかしソフトは本編あってこそ、でしょうて…