『ナチョ・リブレ 覆面の神様 (NACHO LIBRE (2006))』

 
 育った孤児院の料理役のイグナシオ(ジャック・ブラック)は子供の頃からのルチャ・リブレ好き。町のトップスター・ラムセスの人気と豪華ないでたちや振る舞いに憧れを感じるのだが教会では暴力と己の名声欲にまみれているとされているルチャ・リブレを観る事も善くないとされているくらいで憧れだけでいるつもりだったのだが、ある日町でルチャ・リブレの会場での新人募集を知り、孤児院の子供達にもっと美味しい物を食べてもらいたい、ついでに赴任してきたシスター・エンカルナシオン(アナ・デ・ラ・レゲラ)にも… という目的の為に未洗礼で科学信奉者のスティーブン(エクトル・ヒメネス)と自己流のトレーニングを積み試合に臨むのだが…
 
Napoleon Dynamite (2003)』での色彩感覚と妙ぅな間合いや空気管、雰囲気が好きな私には楽しめた作品なんですが、これまた出来がいい映画だとは思えないんだけど困った事に嫌いじゃぁないんですよな… 「役者に頼り過ぎじゃね?」「エピソードの積み重ねが足りなくね?」「ルチャのデティールが酷くね?」「と言うかラムセスったらテクニコでしょがルードじゃないでしょ〜」「NWAルールじゃ両者リングアウトは王座移動無しだろ〜」とか、まぁ言いたい事は多いんですが、多分この監督と脚本は知ってはいるもののあえてそうしたって感じがするんですよな、ベッタベタなお話の部分と妙にリアリティ溢れるカットから察するに。で、それについてツッコミを入れるのはまぁ野暮で、後はもぅ好き嫌いの話になりますがな。で、それを見越しての匙加減を厭らしいと嫌うかプロとして好ましく思うのかも… っとなるんではないかと。
 
 ええ私、個人的には好きですよ。
自分がどう見えるのかを完璧に解っているであろうジャック・ブラックの動きは何もかも反則(笑)。その演技が細かく繊細な分だけ奇天烈になるんですよね。脇を支える出演者らも落ち着いていて安心して観られましたしなぁ… って事で、緩く呆けるにはいい映画でありますよ、っと。