『Wild Hogs (2007)』

DVDジャケ。

 
 Doug(Tim Allen)は歯科医。美人の奥さんと子供、収入と特に問題は無いものの高脂血症の為に食べたい物を食べられず、年頃の息子には何となく敬遠され奥さんとも何となくギクシャクしたものを感じなくもなく。
 Bobby(Martin Lawrence)は1年前に読んだ「自分の人生を成功する方法」という本に啓発されて自宅でのビジネスを始めるものの上手くいかず、アルバイトのトイレ修理等でお金を得る情況に奥さんからは責め立てられ、二人の娘にも馬鹿にされている毎日で。
 Dudley(William H. Macy)はプログラマーでオタク系で独身。収入は問題無いものの自分に自信が持てず、知識でカバーをしようとしているのだがあまりそれも上手くいってなくて。
 Woody(John Travolta)は奥さんがモデルで充実していた生活を送っていたものの、その奥さんに離婚を迫られ自分のビジネスも失敗。子供にも嫌われていて。
 
 そんな人種も仕事も環境も何もかも違う彼ら4人の共通の趣味はバイクを乗り回す事。と言っても4人で御近所を流した後でBiker Barでダラダラとお喋りをするぐらいなのだが、自分達を『Wild Hogs(「Hog」とは豚、であり、ハーレー等の大型高級バイクの事)』だとお揃いの皮ジャケット&マークまで用意していてそれなりに一人の時間を楽しみそれぞれの息抜きをしていたのだが、今日もBiker Barで一杯を飲っていた時にWoodyが
「バイクに乗って旅に出ようぜ! 何物にも束縛されない気侭な旅! 道をひたすらに走り、風を受けて… そう、それこそ自由!」
 と提案し、残る3人もそれぞれに思う所があって彼の提案に乗り、かくして『Wild Hogs』達はとりあえず南へと向かう旅を始めるのだった…

 
 中年の現実逃避のロードムービーっ〜と『Sideway (2004)』等が思い浮かびましたが

 この予告編の明るさに期待をしてのオーダーだったんですが… トラボルタの嘘を誤魔化す為のはしゃぎっぷりやティム・アレンの神経質なんだけどどこか抜けたトコやマーティン・ローレンスのお調子者っぷり、ってのは彼らがコメディにもよく出演しているんである程度想像がついてはいたんですが、私には『ファーゴ (1996)』の印象が一番強いウィリアム・H・メイシーがnurdっぽいのをサラッとやっていてまたそれが変で可笑しかったんですけども、役の設定年齢はもうちょっと低い筈ですがティム・アレンの54歳、トラボルタの53歳、ローレンスの42歳、メイシーの57歳って実年齢の方が近く見える演技とお話との相性があんまり良くないんですよな。
 監督のWalt Becker、脚本のBrad Copelandも多分同じくらいの歳なんでしょうけど彼らの描く中年のオヤジのバイク乗りと旅のイメージってのは80年代っぽいもので、だから劇中で流れる曲がWhitesnakeBon JoviであってSteppenwolfやJimi Hendrix等ではないんですよな。お話通り大体40代、いっていても半ば程度であればそれは違和感は無いんですが、決してそういう画面になってないんですよ。そのうえ標識にぶつかったり牛に跳ね飛ばされたりする場面が香港映画ばりのブッ飛び方にしてみたりするんだけどそのちぐはぐさが可笑しさってよりはずっと違和感アリアリのまんまでね… なのに騒動のまとめ役に登場する伝説のライダーBladeにPeter Fondaってしておいて、せめて登場シーンん時にあのリフの1つも流さないトコとか、監督と脚本家が頭で想像して作ったであろう「バイク乗り」の「お話」の「世界」と、主演四人の演じた「空気」とがずっと混じり合わないままではねぇ… あと、「バイクが走っているシーン」は多いし、主演四人がそれを楽しんでいるのはよく伝わるんですけど、広大な土地を走るという自由や開放感が映画として撮れていないんでオヤジ四人がずっとはしゃいでいるって図にしかなってないんで、奥さんの立場からの事情や意見も説得力があるのに比べて男達が旅に出た理由がそれぞれそれ程逼迫していない分だけ余計に開放感に繋がらないんですわ、
「これってオヤジ達の我侭じゃん」
 って。
勿論、特別に逼迫、窒息しそうな状況でなくても旅に出たくなる気持ちは解りますし、旅先での開放ってのも解るんですよ。別に中年の自己再発見や再確認や新たな誠心の自立とか発見が無くてもそれはそれで構わないんですよ。でもこの物語では誰の問題も解決していない、特に一番現実逃避をしたくて旅を提案したWoodyについて何一つ触れないままに迎えたエンドロールで、自分達が起こしたトラブルを結局金で解決しちゃったってオチになられると流石に私はノれませなんだわ… 自分達だけが苦労したり悩んだりしながら遊んで、楽しくて、んでオシマイっとするんなら兎も角、結局家族だけでなく他人に迷惑をかけ倒して我侭してはしゃいで迷惑かけた分は金で解決してメデタシメデタシ、って…
 これが三、四十代の役者でのものならばここまでの違和感は抱かなかったと思うんですが、そうではない本作は私には楽しく思えた場面も多いんですが一本の作品としては「ノれませんでした」っと。
「二十代の人間ならそんなに違和感は感じないのかな?」
 とか
「オヤジを愛でるのが好きな人には悪くないかな?」
 とか思わないでもないですが… 
 
 
 
 …という事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『Wild Hogs (Widescreen Edition) (2007)』−Region 1
 
 Studio: Buena Vista Home Entertainment / Touchstone
 Theatrical Release Date: 2 March,2007
 DVD Release Date: August 14, 2007
 Run Time: 100 minutes
 
 Aspect Ratio: Widescreen − 2.35:1
 Available Audio Tracks: English, French, Spanish (Dolby Digital 5.1)
 Available Subtitles: English, Spanish, French
 
 Special Features:
 ・Audio Commentary by director Walter Becker and writer Brad Copeland
 ・"Bikes, Brawls, and Burning Bars: The Making of Wild Hogs" (16:19)
 ・How to Get Your Wife to Let You Buy a Motorcycle (2:49)
 ・Alternate ending / Deleted scenes (2:49)
 ・Outtakes (2:34)
 ・Sneake Peakes (6)

 

 
 紙製の立体仕様のアウターケースから取り出した本体ケース内にハーレーダビットソンの広告が入っているのが洒落てますな。そう言えばアメリカではこのDVDのオマケに劇中仕様のバイク模型が付いた版もあったようですが、そういう遊びは面白いと思いますね。
 
 画質、音質は良好。流石に最新作品のソフト、Buena Vista社製の事はありますかな。
 
 んで、特典なんですが…
「Audio Commentary」は監督と脚本家だけのもののようなので聴いてません。撮影裏話とか本来の意図とか色々話しているんでしょうね。
「"Bikes, Brawls, and Burning Bars: The Making of Wild Hogs"」は文字通りメイキングなんですが… 主役四人についてバイク指導をした人と当人らのコメント以外は… まぁ今時本当にバーの建物を爆破したのは珍しいんですが、と言ってCGでも同じ絵は出来たであろう事を思うと長々と爆破の模様を収録するのはどうかと思うんですけども。
「How to Get Your Wife to Let You Buy a Motorcycle」はまぁ要するに「バイクって男の子の乗り物だよね」話ですか。挑発的な題名になってますが、これも題名倒れなコメント集ですか。
「Alternate ending / Deleted scenes」は監督と脚本家による音声解説のon&offが可。個人的にはこっちに収録されているエンディングの方が気に入ってはいますが、尺が短いんで何とも。
「Outtakes」はNG集。短い尺なれど主演四人の楽しげな雰囲気がよく伝わってきますな。
「Sneake Peakes」はBuena Vista社がリリースしているDVDの予告編集です。
 
 んで、何で予告編を収録してくれなかったんでしょうかねぇ?
3種類の音声&字幕分のデータの事もあるんでしょうが100分の本編であと2分半の予告編を収録出来ないワケは無いと思うんですけども。それに協力してくれたハーレーダビットソン社のCMとか入れてくれたって良いでしょうに… っと、まぁ本編を楽しむだけなら悪くはないんですがDVDソフトとしては、今年ヒットした映画*1だけにもぅちょっと特典が欲しい所だと思うのですが…
 

*1:今日現在の07年興行成績ランキングで第8位。