『タラデガ・ナイト -オーバルの狼- (2006)』

 誕生の瞬間にスピードに生きる事を宿命づけられた男リッキー・ボビー(ウィル・フェレル)はNASCARにデビューするやその才能を開花、瞬く間に頂点に君臨。様々な雑誌の表紙を飾りTVCMにも引っ張りだこの国民的ヒーローとなるもチームのオーナーはチームの将来も見込んでF1で活躍していたフランス人ドライバーのジャン・ジラールサシャ・バロン・コーエン )とも契約。リッキーは闘争心むき出しでジャンとバトルを繰り広げるも大クラッシュ。ショックのあまりレースが怖くなってしまったリッキーの順風満帆の生活はそれを境に一気に風向きが変わり…
 
 期待をするも日本ではDVDスルーというのも主演がウィル・フェレルのせいなのか、それとも題材がNASCARという日本ではマイナーなカーレースだからか。それでも元々言葉遊びも得意の1つとしているウィル・フェレルの映画は英語が得意ではない私にとっては日本版のリリースは嬉しく、どうせ半年もしないウチに廉価版がリリースされるであろう事は解ってはいても購入したのはヤッパリ今年ガッツリと笑わさせてくれるコメディを観ていない、ってのもあったからですが…
 
 っと、その前に、
 
 日本版DVDの元になったのはUS版Unrated Widescreen Edition。劇場公開オリジナルのPG-13版よりも13分長いDVD特別版なんですが元々

 
全米興行成績で初登場No.1を記録した映画を、3カ月連続でDVD化する「“欧米か!”レーベル」

http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070606/spe.htm
 

 という趣旨、趣向としてなら劇場公開版こそリリースするべきだと思うのだが… 実際、アメリカでのUser Reviewを読んでみるにUnrated版は冗長、無駄とする意見が結構あるんだけどねぇ… それにこのキャンペーンで出るのが
『タラデガ・ナイト -オーバルの狼- (Talladega Nights - The Ballad of Ricky Bobby)』
レニー・ハーリン コベナント 幻魔降臨 (THE COVENANT)』
ギャングスターズ 明日へのタッチダウン (Gridiron Gang)』
 のどれも邦題が微妙ぅに野暮ったくしてある以前にまず、全部アメリカ映画で「欧」が無いじゃんってツッコミは無し? そりゃまぁUS Box Officeのトップにヨーロッパ映画が輝いた事は確か無い筈なのを思えば仕方無い部分もあるかとは思うけれども、こういう企画、セールスをするにしては何かダサいような… っか、それぞれの作品や出演者のファンからするとたった3タイトルの為だけのタカアンドトシ起用といい、あんまりいいイメージを感じないんじゃぁないんでしょうかねぇ… っと嫌味の1つも言いたいですな、ハイ。
 
 さて、本編。
ウィル・フェレルが演じるキャラクターのクドさって点では随分ソフトと言いますか、シレっとして酷い事やトンチンカンな言うというある種オーソドックスなコメディの形式となっておりまして、流石に冗長版、もとい長尺版だけに間延びやモタついた印象が結構残りましたがそのルーズさは休日の午後、ビールでも飲みながらダラダラ〜っと観るに決して悪いモノではござんせんでした。っか前作『俺たちニュースキャスター [DVD]』があえてちょっと前の時代を舞台にする事で男らしさ、アメリカ的マッチョニズムをもギャグにしていたのをまさにアメリカ文化そのもののNASCARを舞台にする事で舞台が現代でも通じるようにしてあるのはわざと、なんでしょうなぁ… だけどやってるギャグそのものはベタベタなんですけど、それをシレっとドライにやられるのに私は弱いんで最後まで普通に楽しめましたな。個人的にはもっと盛り上げられる筈なのをあえてそこまで持っていかず、ほどほどなリアルさを随所に配置、そしてマイケル・クラーク・ダンカンの配置といい何となく『ロクスベリー・ナイト・フィーバー [DVD]』を思い出したりもしましたが今回のリッキーはスティーブやチャドらと比べれば本当にマイルド、ソフトですんでウィル・フェレル初心者でアメリカで大ヒット(2006年のアメリカ年間興行成績第12位、Total Grossは$148,213,377!)ってってのですから興味を持たれた方はレンタルでの視聴も悪くないんじゃぁないかな?っと思いましたよ〜
 
 まぁ個人的にはちょっと引っ掛かる部分もありましてな。
結局コメディであっても家族回帰になる、ってのが風潮なのは仕方無いにしてもしかしラストで家族でまとめる必要ってあったのかなぁ? って思う気持ちもあるんですよ。男根主義とでも言うか、女性差別的な部分もギャグにしているのは結局現代の文明社会における男子の復権っか意識の復興ってのの裏返しでもあるんだろうけど、その行く先は家族なのか?ったら必ずしもそうではないじゃぁないですか。だけどそうまとめる事で確かに多くの観客には安心感を得られるのでしょうし商売としては正しいしあのエンディングそのものは私も悪い気分にはならなかったものの、しかし
「でも、それでいいのかなぁ?」
 って引っ掛かる気持ちも無くはないんですよな… まぁ考え過ぎなのやもしれないんですけど、ストーリーとしての家族という構成への回帰(とその指向っか趣向)、そしてマッチョニズムってのは特に去年からのハリウッド映画によく出るんですけども、それが枷や枠になってお話としてはある程度綺麗に収まってもコメディとしての笑いってのはアナーキーさもあってナンボでその破壊、否定対象には「家族」ってのもあるんじゃぁなかったっけなぁ… って思ったりもするんですけどね… って、コレも私の考え過ぎなのやもしれませんが、かつて程にはアメリカ映画への期待やらをあまり感じれなくなってる理由でして、それが911に因るものなのは解ってはいてももうちょっと、って思ったりもするんですけど、ね…
 
 …ってのはさておき、
以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『タラデガ・ナイト -オーバルの狼- (2006)』
 
 原題:Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby
 Theatrical Release Date: August 4, 2006
 製作国:アメリ
 製作年:2006
 字幕翻訳:松崎広
 吹替翻訳:中村久世
 
 販売元:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
 発売日: 2007/06/20
 時間: 121分
 
 音声仕様: Dolby Digital 5.1 サラウンド
 字幕: 日本語/英語
 音声: 英語、日本語
 画面サイズ: スクイーズシネスコサイズ
 
 映像・音声特典
 ・監督とお友達らによる音声解説
 ・未公開シーン集 (9)
 ・NGシーン集 (2:28)
 ・アダム・マッケイの撮影日記 (11:44)
 ・ウィル・フェレル、再びタラデガへ (5:25)
 ・リッキーとキャルのCM (1:38)
 ・ボーナス映像・レースシーン (1:18)
 ・ギャグ集 (5:30)
 ・ウォーカーとテキサス・レンジャー (5:44)
 ・オーディション風景 (4)
 ・インタビュー集 (3)
 ・オリジナル劇場予告編集 (4)

 

 
 画質、音質は良好ではないかと思います。
去年だかに買ったBewitched (2005)』やらソニーピクチャーズ製DVDの品質がイマイチだったんで期待をしていなかったんですが普通に綺麗だと思えましたから。まぁ若干フォーカスが甘いっかちょっとボケ気味、シャープさにやや欠ける映像かとは思ったんですがジャギってるよりはマシですし日本版DVDなら普通の品質ではないでしょうかね?
 
 字幕は普通。流石に細かいアメリカ人向けのTVネタなんかをイチイチ翻訳しても解らないでしょうからかなり上手い匙加減でのバランスになっておりましたが所々奈津子ちっくっか下品なシモネタはチョイとスルー、特に子役の二人の台詞は結構マイルドなのになってるのはちょっと残念、でしたかな。吹替翻訳も同様。服買え声優陣は普通に上手い人達で安心出来ますが人物と合っているかは個人的にはイマイチ。上手いんだけど声優としての演技が上手過ぎるのでもちっと、面白みを殺ぐ感じはしなくもありませなんだがこれは吹替では仕方ない事、ですからねぇ…
 
 んで特典ですが。
US版に入っている「Daytona 500 Spot」「NASCAR Chase for the Nextel Cup Spot」「DVD-ROM link to NASCAR.com」が無いのはちょっと残念。確かにもぅ時期は過ぎてしまいましたが舞台であるNASCARの雰囲気やらを伝えるのは悪くない素材だと思うんですけどねぇ…
 
 で、残った特典を列記しますと、
「監督とお友達らによる音声解説」は真面目なのではなくネタですね、ありゃぁ。まぁローテンションで大袈裟に語ってみせるタイプですがローテンションなだけに最後までちゃんと聴いてないんでオチは知りませんが。
「未公開シーン集」はとありますがこれはどちらかと言えば没テイクですかな。大枠のストーリートシーンはあっても台詞はアドリブで色々やらせた中からの採用ってので同じシーンでも違うパターンがいくつも観られるというもので、役者によっては非常に嫌な映画制作の現場の雰囲気がよく解りますね。
「NGシーン集」は文字通り、俳優が噴出してしまうのをヴァーッとまとめてあります。
「アダム・マッケイの撮影日記」は1つ1つは短い撮影素材を繋げたもの。撮影の情況や現場、裏方さんの事等を監督がダラ〜っとか語ってくれます。
ウィル・フェレル、再びタラデガへ」は多分DVD用に新規に撮影してくれたものでしょう。再訪して語るという形式ではありませんが、これはこれでアリなのやも。
「リッキーとキャルのCM」「ボーナス映像・レースシーン」「ギャグ集」「ウォーカーとテキサス・レンジャー」「インタビュー集」は先の「未公開シーン集」同様、採用しなかったカット集ですな。
「オーディション風景」は本当にただのオーディション時素材のもので、子役二人、奥さん、チームメイト、リッキーのお母さん役の4人の演技が観られます。
「オリジナル劇場予告編集」はソニーピクチャーズでのウィル・フェレルの出演作4つのUS劇場版予告編が観られます。これは地味に嬉しかったですね…
 
 語るべきもの、やるべき事は全てやったという事なのか? それとも単にソニーピクチャーズの伝統なのか正直言ってDVD特典としてはそんなに面白い、興味深いものはござんせんでした。ぶっちゃけ定価も日本語吹替えがついているにせよ割高な印象もしますし、まぁ今購入ってのじゃぁなくて廉価版待ちかレンタル視聴でいいんじゃぁないんでしょうかね? まぁ流石に『Hot Fuzz (2007)』みたいなコテコテに詰まりまくったソフトと比べると数はあれども… って思うのは自分でもどうかとは思うんですけど、ね。