『Hot Fuzz (2 Disc Special Edition) With Limited Edition Artcards (2007)』(PAL) - Region 2

USA-P2007-06-22

 
 Nicholas Angel(Simon Pegg)は運動神経抜群で頭脳明晰、類稀なる逸材として警察学校開校以来の秀才で主席で卒業後もロンドン警視庁での活躍もめざましく市井の犯罪からテロリストまであらゆる悪と戦い若くして既にSergeant(inspector(警部)の一階級下)にまで昇進するも彼の望みは出世ではなくあくまでも犯罪の撲滅であったのだが、あまりにも優秀過ぎる為に同僚はおろか署長にまで煙たがられて首都ロンドンからは遥か遠くの片田舎Sandfordへの転勤を命じられてしまう。
 共に犯罪と戦う仲間と思っていた同僚の誰一人として見送りも無く。これまで職務一筋、警官である事に人生の全てを捧げてきたNicholasは既に妻にも去られた上に彼女には既に何人目かの恋人もいる状態で、一人ぼっちでSandfordへと赴くのだが犯罪と言っても未成年の飲酒や飼っていた白鳥が逃げただの実にノンビリとした田舎町で、町の警察では署長以下昼間は呑気にお茶とケーキ、夜はパブで一杯という毎日。
「ここは平和な町だよ〜 殺人とか凶悪な犯罪なんてこの20年起きてないんだから」
 と言われ、あたかも職務ロボットの如く生きてきたNicholasは自分自身を持て余してしまうのだが、ある自動車事故に犯罪の匂いを感じる。同僚らはNicholasの言う事を信用せず事故だと言うが署長の息子で刑事映画マニアのDanny巡査だけが興味を持ち共に捜査を開始。それを嘲笑うかのように事故に偽装した殺人事件がNicholasの周辺で続いてゆき…

 
 07年、イギリスだけでなくアメリカでもヒットした『Shaun of the Dead (2004)』の監督&脚本&主演コンビの最新作でございます。兎に角『Shaun of the Dead (2004)』が好きだった私としてはリリースを知るや否や予約をし、到着したその日に鑑賞してしまいましたが、いやぁ楽しかったですよ〜。
 ギャグのネタがまた細かいのから大きいのまで様々なのを取り混ぜた上で実はギャグのネタが伏線だったりする密度の高いミステリーでいっておいて最後がブラックハイマーっかハリウッドばりのド派手な銃撃戦にカーチェイスのアクションって盛り沢山なのを才人監督Edgar Wrightは今回予算も増えた以上に元々の色彩感覚とカット構成の上手さに繋ぎ方がベラボウに進歩してテンポ良く最後まで行く編集の巧さと相まって、まさに映画ならではの手間と人材と情熱に満ちた豪華さには満足しましたが… うん、映画として満足したんですけど、悩ましいんですよね、本作。
 
 私がパロディ元の1つである『BAD BOYS II BAD』等を観ていない、ってのも含めてもひとつ、前作とどっちが好き?って言われたら間違いなく『Shaun of the dead』と言ってるだろうなぁ… 映画としての完成度から言えば間違い無く『Hot Fuzz』、なんですが、ミステリーの謎解き部分での台詞の多さ(またそれがダブルミーニンングになったりギャグになっていたりする)についていけなかったのもあるんですが、『Shaun〜』と比べると物語の結構肝心な部分の抜けが多いんですよ。「穴」ではなく、あくまでも「抜け」。で、特典ディスクの削除シーンを見るとほぼ全部が第二の殺人までの小ネタ集といった様相でそれを観て得心する箇所って多かったんですよな。
 でも、それだけカットしていても約2時間って本編に無駄が無い。本当に無い。呆れるくらいにミチミチにギチギチギリギリに無駄を排して成立しているのがよく解る。削除シーンを入れると物語として穴が無くなり深みも出てよくなってもテンポが落ちるし多分飽きるのとギリギリな境界線上にある、ってのも良く解るんですけどそれだと抜けがある、ってのは凄く悩ましい… 普段私がレビューでよく使う「惜しい」ってんじゃぁなくて、よく出来ているんだけどよく出来ているからこそ抜けが気になるんだけどじゃぁその抜けをどう埋めるのか?どこを切ってどう入れるべきなのかが解らない。ややクライマックスの銃撃戦が長い気がしなくもないんだけどそれは一般映画としてでパロディとしてとなるとまた別だしそれを削ると全体のバランスが崩れるだろうしなぁ… っと、実にまぁ悩ましい出来でしての。
 
 とは言え、ギャグは相変わらず笑えました(主人公がNicholasだからかSt.Nicholasことサンタの衣装を着た悪党に襲われるって1ショットのネタ、その悪党の中の人がピーター・ジャクソン監督ってどういうネタなんだか(笑)とか、小さいネタでもタイミングや美術やら手を抜いてないのがこの映画は本当にいい!)し、何よりも画面が本当にいい。それに役者の使い方、特に年寄り連中の巧さと配置のバランスがもぅたまらんです。元々イギリス映画における俳優の上手さってのもあるんですけど、それを映画として実に良く活かしてるんですよなぁ… 一応ミステリー部分もあるんでこういう書き方しか出来ないんですが、落差のつけ方をキチンと演じてみせたのを監督らが更にカッコ良くして魅せてくれるんですわ。そん中でも胡散臭い田舎のアメリカ被れの金持ちジジイを好演したティモシー・ダルトンがねぇ… メイキングでの素のカッコ良さが微塵も無くて本当にいい!(笑) 007ん時の酷薄な雰囲気の印象が好きだった私ですが、アメリカ被れげな初っ端からもぅ胡散臭い田舎町の悪役って感じは時にキュートですらありましたよ。
 
 日本人なんで、イギリスのド田舎でド派手な銃撃戦やカーアクションってギャグの馬鹿馬鹿しさが多分、イギリス人やアメリカ人に比べるともひとつピンとこないってのはありましたが楽しかった一作ではありましたよ。ただ『Shaun of the dead』ん時みたいに狂喜乱舞、隙あらばオススメ!とはちょっと出来ないなぁ… とは思いますが、今年個人輸入してきたDVDん中では間違いなくダントツで楽しんだ一品だと思いましたよ〜 気になる人は… まぁ日本版が出るかどうかは解らないんで何とも言えませんが、以前紹介しましたUS版予告編

 にグッときた人や『Shaun of the dead』での編集や色彩感覚や練り込まれた脚本や演出が大好きだった人には間違いなくオススメをしますよ〜…
 
 
 
 って事で、
以下はこのDVDについての情報なんですが、何せ特典の数が半端無いんで興味とお時間のある方に限って「続きを読む」をクリックして下さいませ。

 
・『Hot Fuzz (2 Disc Special Edition) With Limited Edition Artcards (2007)』(PAL) - Region 2
 
Studio: Universal Pictures Video
Theatrical Release Date: February 14, 2007
DVD Release Date: Jun 11, 2007
Run Time: 116 minutes
Number of discs: 2
 
Aspect Ratio: Widescreen - 2.35:1
Available Subtitles: English
Available Audio Tracks: English - Dolby Digital 5.1 EX
 
Special Featuers:
● Disc 1:
 ・The Man Who Would Be Fuzz ( :35)
 ・Outtakes (10:23)
 ・Storyboards
 ・Fuzz-O-Meter (Trivia Track)
 ・Trailer (4)
  ・US Theatrical Trailer (2:34)
  ・UK TV Spot #1 ( :33)
  ・UK TV Spot #2 (:33)
  ・Director's Cut Trailer ( :59)
 ・Flick Book: The Other Side ( :23)
 ・Commentaries (4)
  ・Feature Commentary with Simon Pegg and Edgar Wright
  ・Feature Commentary with The Sandford Police Service
  ・Feature Commentary with The Sandford Village People
  ・Feature Commentary with The Real Fuzz (chief Officer)
 ・Hot Funk (3:34)
 
● Disc 2:
 ・Inadmissible: Deleted Scenes with Optional Filmmaker Commentary (22)
 ・Speculative: Video Blogs (13)
 ・Photographic: Galleries
  ・Poster Galleries (11),
  ・Photo Galleries (37)
 ・Falsified: Dead Right
  ・Am Blam: Making 'Dead Right' (10:30)
  ・Dead Right (1993) (40:23)
  ・Edgar Wright Commentary
  ・ Simon Pegg & Nick Frost Commentary
 ・Conclusive: Making of Documentary (29:34)
 ・Forensic: Featurettes
  ・Art Department (4:51)
  ・Friends & Family (5:11)
  ・Cranks, Cranes & Controlled Chaos (5:31)
  ・Here Come the Fuzz (4:19)
  ・Return to Sandford (11:09)
  ・Edgar and Simon's Flip Chart (14:04)
  ・Simon Muggs (2:09)
  ・Sergeant Fisher's Perfect Sunday (1:02)
 ・Special Effects:
  ・Before and After (8)
   ・Flying Astra
   ・First Ka Boom
   ・The Aftermath
   ・Sheer Horror
   ・Farmageddon
   ・Grisly Fete
   ・Inspired Demise
   ・Final Ka Boom
  ・Plot Holes (3)
   ・Crush the Messenger (1:22)
   ・The Notebook ( :59)
   ・The Big Bang (1:02)

 

 今回はAmazon.ukのみのポストカード三枚付きセットを購入しました。まぁカードそのものは絵柄が暑苦しいのを除けば紙質、印刷等は可も無く不可も無くって事でオマケとしては悪くないかな?
 まぁ紙製のアウターケースに特に仕掛けやらがあるものではないのはちょっと残念でしたが…

 画質、音質は良好ですね。シャープで綺麗な発色、クリアーな音響といいDVDソフトとしては非常に出来がいいのではないでしょうか? 個人的には久々に綺麗な画面と音のDVDを観たなぁ〜っと満足しました。
 ただ字幕が出るのが若干遅い。もしかすると私のDVDプレイヤーのPAL→NTSC変換の都合なのかもしれませんが今まで特にPAL版ではなかった事だけにワンテンポ遅れての字幕表示は台詞が非常に多く重要な映画なだけにちょっとウザかった気はします。
 あとメニュー選択時にアニメーションがイチイチ入るのはちょっとウザったくもありましたかな。
 
 さてDVD特典ですが… これはもぅ豪勢でございます。っか多過ぎ!(笑)
 
「The Man Who Would Be Fuzz」は本編のシーンを別の人間がアテレコしたショートムービー。
「Outtakes」はNGシーン集。
「Storyboards」をオンにすると画面右上に警察バッチのマークが表示されるようになり、表示されている間に「Enter」を押すとそこからのシーンのストーリーボードっか絵コンテが表示されるというものなんですが、総数270枚って… 自分で方向キーを押す事で読み進めるタイプですんでジックリと鑑賞したい人にはうってつけかも。
「Fuzz-O-Meter (Trivia Track)」をオンにすると画面にネタ、小ネタ、裏話等のトリビア(英文)が表示されるというもの。Subtitleと同じフォントなんで読み易いかもしれませんが、撮影場所から楽曲、ノンクレジット出演者の経歴やら台詞の元ネタ等々、あまりに出過ぎる(笑)のは『Shaun of the Dead』ん時と同様ですな。
「Trailer」、何故かイギリス版なのにアメリカ版劇場予告編が収録されております。個人的には説明し過ぎない「Director's Cut Trailer」の方が好み、かなぁ?
「Flick Book: The Other Side」は本編でメモするフリをして実はパラパラマンガを描いてた、ってネタのパラパラマンガの違うバージョン。御丁寧に音声付(笑)。
「Commentaries」も無駄に豪華ですが、特筆すべきは本作の監修、協力にあたった本物の警官Chief Officerのお二人によるもので、映画の裏話だけでなく実際の警官の研修や勤務についてのお話など盛り沢山であります。
「Hot Funk」は「TV放送用に台詞をソフトにしてみたら」 ってので、『Cabin Fever - Special Edition (2003)』にあった「Family friendly version」を思い出しましたが… そう言えば本作の監督エドガー・ライト、『Cabin Fever』『Hostel』のイーライ・ロスとは2歳違うだけで誕生日は一緒、ってのもあるんですけどタランティーノロバート・ロドリゲス競作の『Grindhouse (2007)』にて共にfake trailerで参加しているのもあるんでなんかお互いに意識する部分はあるかもしれませんよな…
 
 …って、ここまででやっとディスク1の特典分。ディスク2もまたみっしりとありまして…
 
「Inadmissible: Deleted Scenes with Optional Filmmaker Commentary」は殆どが尺の都合でカットしたエピソードの数々、であります。これが入っていたならば物語としての完成度は上がったでんしょうが映画としての完成度が上がったワケでも無い、ってのが実に悩ましいと思いましたなぁ…
「Speculative: Video Blogs」は多分公式サイトでやっていたもの。撮影の裏側、トレーニングの様子等を伝えつつもネタでもあり、ってなのが2〜4分の間にまとめてあります。
「Photographic: Galleries」は「Poster Galleries」「Photo Galleries」共に静止画コンテンツ。それぞれ自分で次のにするタイプです。ちなみにAmazon.uk独自特典のポストカードはポスターの右で進めての2、3、10番目のが元になっております。「Photo Galleries」に収録の写真は現場の撮影風景や休憩の様子、劇中の別アングルからのと色々な材料で更生されています。
「Falsified: Dead Right」はエドガー・ライト監督の初監督作品、19歳の時にお父さんのビデオカメラを黙って持ち出して作った自主制作映画で『ダーティハリー』第一作を元ネタにしたものであります。刑事映画も好きだった、との事ですが… 流石に後の片鱗と観れなくもない部分も無くもないのですが所詮VHS撮りの自主制作、素人の学芸会よりは若干マシって程度ですが、御丁寧に監督のだけでなく全く関係の無いSimon PeggとNick Frostに音声解説をさせるあたりは監督特権、なんでしょうかね?(笑)
「Conclusive: Making of Documentary」は本編の映像、舞台裏、キャストやスタッフへのインタビューを交えたものです。TVの特番をそのまま収録、って感じですかね? コンパクトですが番宣番組としてよくまとまっております。
「Forensic: Featurettes」はそれに収録しきれなかった撮影現場の舞台裏の素材をテーマ毎にまとめたもの、でありますか。ネタ寄りな「Speculative: Video Blogs」よりは素に近い感じですかね。
「Special Effects」のうち「Before and After」はCG加工による特殊効果の様子を段階的に見せるもの。
「Plot Holes」は『Shaun of the dead』にもあった本編の抜けを、それぞれの登場人物がマンガのような絵コンテを元に解説するというものです。ただ、ラストのアレについての説明があまりにもアレで、本当にそんな事はどうでも良かったんだな(笑)ってのがよく解りましたな…
 
 
 …っと、まぁディスクの空きに詰められる素材は出来るだけ詰め込むという方針のせいで確認がえっれぇ大変でございましたが、その分ソフトとしてはお買い得と言えるのではないでしょうか? 本編も再見してみて改めて伏線の細やかさとそれを収束させる手腕の上手さがよく解るくらいにキチキチに作り込んだモノですし、いやぁコレはDVDソフトとしてはかなりいいブツじゃぁないんでしょうかね?