『タンポポ (1985)』

 
 数日前、アマゾンのDVDバーゲンコーナーで見かけた定価の半額の『伊丹十三DVDコレクション タンポポ コレクターズセット (初回限定生産)』がいざ注文しようと思ったら売り切れになってて、諦めるのも何なんだけどしかし定価の¥4,935はいくら伊丹映画の中で私が一番好きな映画だとしてもDVDの品質も解らんのにちょっと高いよなぁ… と思ったのですがまとめ買い!お得キャンペーン DVD2枚買うと、1枚タダ!ってトコにあったもんですからえぇ〜い!っとばかりに

タンポポ [DVD]

タンポポ [DVD]

 をセットで購入しましたよ、っと。お陰で『撮影日記』はタダになりましたが… ってブツが今日届いて、台湾料理屋での昼飯がイマイチだったのもあったんで傷心を癒すためにと鑑賞をしましたが、いやぁやっぱり面白いわこの作品。
 
 コレ、劇場で観たんだけど面白くて可笑しくて堪らなかったんだけど周囲の他の観客にはサッパリ、記憶では確か「あの『お葬式』に比べると…」ってボロクソに言われてて興行成績もイマイチではあったが、後のフィルモグラフィを振り返るに私は『マルサの女』がよくまとまってはいてはいてもどうにも好きになれないでいて結局『あげまん』で嫌んなって『ミンボーの女』で寝てしまって以降の作品は観てないって偏った人間ではありますが、この映画は好きなんですが決して出来がいい作品とは思ってないんですよ。今回DVDで何度目かの再見してみても、繋ぎが巧いトコと下手なトコがあったり、電車がメタファーとして映画で機能してないのに長いとか、構図の作り方は凝っていても画面作りは上手くねぇとか力也さんのやられ方の下手糞さは『スパルタンX』のベニー・ユキーデを思い出したとか、最後の試食んトコでの心情表現のライティングは何だよアレ、とか、まぁ当時から思ってた難点とか駄目な点とかはいくらでもあるんですけどね、だけど心情や情況を台詞でなく演技で見せてるトコとか全体的に凄くフェチ的で生々しいんだけど決して泥臭くもジットリと重く湿ってもいない演出がギリギリやり過ぎてる演技を馬鹿馬鹿しくさせない微妙ぅなトコで踏みとどまらせてる匙加減とか、まだ「伊丹十三監督」ってのに自縄自縛になっていない、それこそ
ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)

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 等、様々な素材をシニカルになり過ぎずそれでいて別にディレッタント気取りでも無く独特の湿度のユーモアを交えたエッセイに見られていた精神の軽さがあればこその映画という場での遊び心に満ちてると思うんですけどね… 確かに『監督日記』によるとゴローとタンポポはあの焼肉デートの後でデキちゃってた事になってたらしいのに全然そういう風には伝えられなかったトコ(でも、そもそも元ネタである『シェーン(1953)』でシェーンはマリアンとはデキちゃわなかったのに、ってのにあえてデキちゃった事にするだけの説得力が無いし必要も必然性も無い、と思うんだけどなぁ… )や最後の試食で出るタンポポとしてのラーメンの形が出せなかったのは作品として失敗でありましょうし、前述したように至らない、拙い、乱暴なトコは一杯あるんですよ。でも、それでもこの映画では、それも持ち味になってる。嘘が… 特に監督における宮本信子を使ったファンタジーがまだリアリティとして観客が許せて物語に没入出来る範囲だと私は思うんですけどね…
 
 でも面白いですよ、この映画。
公開当時、日本ではウケなかったこの作品は海外では大ウケで実はアメリカ等で先に… 大体10年前かな?に既にDVD化されていたくらいなんですよ。Juzo Itamiで検索すれば出演作として「The Family Game (1984)」が、そして監督作として「The Funeral」「Tampopo」「A Taxing Woman」がアメリカでもカナダでもイギリスでもフランスでも出るんですよ。
 当時の日本人にはウケず興行成績もイマイチだったのは事実ですが、しかし今これだけ洋画を観る機会が増えて観客層も変わった今ならば面白いと思える人も多いのではないのでしょうか。今、観直した私が贔屓目を抜いてもテンポはいいのに、人によっては嫌悪感を抱くやもしれないあのフェチ的な対象の撮り方や見せ方といい今のTV屋が量産する映画モドキには無い作家性というか個性つゆだく状態の、監督が自分にとって好きで、面白いと思う事を詰め込んだコメディですからお好きな方には堪らんと思うんですよ。
 確かに公開から20年、本編で邪道・外道の如く言われていた「濁ったスープのラーメン」が今の主流になっていたり、ポテチの袋が透明だったり、バブルの頃だったからこその乞食がグルメとかデティールが変化してしまった部分はありますが、あるんですが! それでも尚、この映画は私は大好きで、素晴らしい! っと思いましたよ。
 
 
 
 …って事で、
以下はこのDVDソフトについての感想なので興味のある方だけ

 
タンポポ (1985)』
 
 製作国:日本
 初公開年月: 1985/11/23
 
 販売元: ジェネオン エンタテインメント
 発売日: 2005/9/22
 時間: 114 分
 
 音声仕様:
 Dolby Digital モノラル - 日本語
 字幕: 英語、日本語(拡大字幕)、日本語
 画面サイズ:16:9/LB ビスタ
 
 DVD特典:
 ・オリジナル劇場予告編
 ・ブックレット(4P)

 

 メーカーの商品ページによれば「オリジナル原版より新たにローコントラストポジを起こし、撮影監督監修のもとハイビジョンテレシネ収録を行いデジタルレストアされたHDCAM-SRマスター仕様」って事ですが、我が家の29型アナログテレビにD1接続での視聴でもPCでの視聴でも、ぶっちゃけ綺麗とは言い難い画質だと思います。そりゃまぁノイズらしいノイズは無いんですがまず色合いがどうにもボケていて発色がイマイチなのと、鮮明さっかシャープさに欠けます。雨のシーンなんか雨粒が見れませんが、質感の薄いのっぺりとしたものでLDマスター?と思ったくらいで、綺麗だ美麗だとはとても思えませんでした。これはハイビジョンTVとかで観ればまた違うんでしょうかね? でも普段海外オリジナル版DVDを観慣れている身としては心の動く事の無い画質でありましたが音質も同様で、オリジナルが意図してのモノラル音声だったのは解るにしても、もぅ少しレストアしても良かったんではないかと。割れ割れになってるトコとか聴き辛い場面がチョイチョイとありますし… それが狙いであるにしたって、一方でリマスター版音声を収録してくれたってバチは当たらない気がするんですけども。
 あと特典がねぇ… 今時劇場予告だけ、って。特報も無かったっけ? あとスチルとか収録してくれても良かったでしょうに。ブックレットって言うか二つ折りの紙の解説文はまぁ悪くはありませんが、しかし写真は白黒だしもちっと作り込んでもらっても良かったような気がします。
 
 んで。
 

 
伊丹十三の「タンポポ」撮影日記 (1985)』
 
 販売元: ジェネオン エンタテインメント
 発売日: 2005/9/22
 時間: 87分
 
 音声仕様:
 Dolby Digital モノラル - 日本語
 画面サイズ: 4:3 スタンダード
 
 DVD特典:
 ・ブックレット(4P)

 

 こちらについては元々劇場公開前にセル売りしてたメイキングのまんま。一応チャプターはありますがDVD自体に他に特典は無し。一応、ブックレットは『タンポポ』と表紙も含めて3P違うトコはいいんですけども、それにしたってこれで¥3990って定価はちょっとボッってんじゃぁねぇの? っと思いますね。っか海外で旧作の新版DVDが出る時についてる特典ディスクでも、もうちょっと凝ってるっか中身があるものなんですが… って事で、興味のある方はとりあえず現時点で5月31日までまとめ買い!お得キャンペーンを利用して購入するのが良いのではないかと思いましたよ〜 っと。