『7 Street Fighters (2005)』

 
 いやぁ参った。
 
 前作『7 Pra Chan Ban (『バトル7』(2002))』ターミネーターのような米兵相手のお馬鹿アクションコメディだったのと比べ、予告編ではそれとは雰囲気の違った日本兵が敵役、画面構成とかもレベルUPして娯楽作品としてよりグレードアップした続編になっているかと思ったんですが…  映画としてはグッと作りも巧くなって前作にあった個々のエピソードを廃してる分だけテンポアップして、予算も増えたお陰か火薬もアクションも見栄えがするものになっていますが…
 
 時は1940年代、大東亜共栄圏の名の下に真珠湾襲撃を手始めに中国、台湾、フィリピンを制圧した日本軍はアジア全域確保の中心基地として資源が豊富なタイに目をつけ、タイの現状を探るべく密偵を派遣していた。その密偵を追っていた軍曹ら7人だったが…
 
 というお話、序盤は購入する前に思ってた通りでスマートな日本軍人の立ち居振舞いに前作との作品としての姿勢っか意気込みの違いを感じたのですが、軍曹がウッカリ密偵の父親の将軍を蹴り殺してしまってからというもの、スマートだった先遣密偵の彼氏、殺戮しまくり。軍曹らに襲撃されてメタメタにされた腹いせに橋の建設に従事させてた捕虜と攫って性欲のはけ口にしていたタイ女性を惨殺しまくって河に投棄。あまりの彼氏の非道っぷりに
「いくら戦場とは言え貴様、気でも狂ったか。お前のような奴は事が終われば軍事裁判にかけてやる!」
 と言った上官まで刺殺しちまうわとベタベタな悪人にまっしぐら。多分『メナムの残照』のパロディと思しき彼氏の部下?の日本兵の臆病で品性下劣で卑怯卑劣っぷりといい、かつて香港映画や韓国映画で描かれた日本軍のような外道っぷりったら… なまじ表現がコメディ系なだけに陰惨な大量殺戮場面が余計に陰惨になっていて、そんな日本兵を殺しまくるお膳立てにはなっているのは解るものの、『Ong-Bak (『マッハ!!!!!!!!』(2003))』でのMr.Kamikazeならまだ笑えても、流石にここまで描かれるとちょっと気楽に楽しむってワケにはいきませなんだ。
 
 タイは親日国、って言われてはいますが実際んトコは多民族国家な上に戦争時の被害も地域それぞれって事で一概に言うべきではないと思ってはいたんですがしかし… もぅ少し言うならば戦後、日本人がタイで何をしてきて、かの国の人達とどのように接してきたのか? ってのの一面でもあるんだろうなぁ… っと思うとゲンナリする気分にもなりますよ。
「こんなのは歴史的に間違ってる!」
 って言うのはナンセンスなんですよ。忍者や侍や子連れ狼モドキがインドかパキスタン人みたいなのも込みでギャグにしている部分と彼らにとっての歴史観ってののミックスになってるのは意識的であり、加えて変装でインド人に化けた時や助けた白人捕虜の扱いからしても特別に日本人だけを蔑み、笑い者にしているってワケでもないんですよな。
 
 で、いとうせいこう氏は

 
 各国が映画を国民国家幻想の増強化に使うのは、この21世紀においても今なお常識である。日本でもいまだに戦争賛美映画が作られていることが、その一例になるだろう。がしかし、タイの場合、その頻度が激しすぎる。そこまで国民の士気を高めなければならない理由はなんなのだろうか、と僕はノンキに考えたのであった。
 答えは簡単だった。90年代に起きた経済危機であった。タイはあの時、ほとんど敗戦に近い打撃を受けたのであり、いまだに“戦後”復興の途上にあるのだ。海外のハゲタカファンドはいつまたタイを混乱におとしいれるかわからない。そのトラウマが彼らの映画をナショナリズムへと導いているに違いないのである。
 
 先見日記−タイ映画、ナショナリズムの理由
 

 としているのだが、果たしてそれだけなのか? と思うんですよ。
この映画は、これで商品になるって踏んだんですよ。タイ国内での成績はあまり良くなかったらしいんですが、結果としてこれで売れると踏んでの商品なのは、このDVDに収録されてるFLASHのゲームが「軍曹が日本兵を撃ち蹴り殺しながら仲間を助け出す」ってのでも解るように、これを単なるナショナリズムとするのも反日精神とするのと同様違うんじゃぁないかと。
 もぅ少し、色々な感情やらが、少なくともこの映画を作った世代とこの映画を観るであろう観客層にはある(と想定&判断してた)んじゃぁないのかなぁ… っと。
 
 まぁ、
彼の地の国民でもないし在住でもない身には考えても答えは出ないんでしょうけどね…
 
 
 
 …って事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある人だけ
 

 
・『7 Street Fighters (2005)』(PAL) - Region 3
 
Studio:Sahamongkol
Theatrical Release Date: April 28, 2005
DVD Release Date:
Run Time: 101.00 Mins.
 
Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen - 1.85:1
Available Subtitles: None
Available Audio Tracks: Thai (Dolby Digital 5.1)
 
 EXTRA:
・TARILER
・TV SPOTS (2)
・POSTER (3)
・BEHIND THE SCENE (15:00)
・CHARACTER PROFILES (7)
・WALL PAPER (8)
FLASH GAME
 
 

 
 画質、音質については良好。流石新作ってトコロでしょうか。
タイ語のみで字幕無し、って仕様ですが、怪しいながらも日本語だけの台詞の場面も少なくないんでそんなに困りませんでした。ま、やってる事がやってる事なんで観て解らない事は殆どない映画、ってのもありますが。

 特典は多いんじゃぁないんでしょうか。ただまぁFLASH GAMEは、ねぇ… サービス精神もここまでくるとワルノリとも言えないとはちょっと思えないのは私が日本人、だからなんでしょうね…