『スウィングガールズ (2004)』

 
ウォーターボーイズ』が若干エピソードの配列と配分、そして竹中直人に好き勝手させて破綻させたのを除けば好感を持てた作品だったので同じ監督&脚本作の本作、実は期待していたんですが…
 
 何じゃこりゃ。
 
 ミュージカルにするのかバンド映画にするのか青春群像コメディにするのか、多分、監督の中ではまとまってなかったが故に、エピソード配列も配分もテンポも確実に悪くなっているし、クライマックスのコンサートに収束しないままになっているせいで、折角、「出演者らが本当に演奏して
いる」というリアルもダイナミズムも殺されている。
 人物を多く出したのにも収束をつけようとしての無理が時間の進行と共に酷くなっていってバラバラだし、時間経過の説明が恐ろしく下手だから観ていて白けるのに拍車をかけるのがリアリティの無い展開だらけで…
 コメディっか笑いをナメてねぇか?
あり得ない展開を積み重ねていけばいく程に、ラストも含めて演奏のリアリティが薄れていってしまうって事が解ってねぇって。それが監督の照れなのかもしれないが… だったら余計に出演者に対して失礼だよ。
 ネタを挿入する事はいいの。でも台詞で喋って説明してネタ1個1個にオチつけてやるのを何個も何個も何個も何個も、演奏の途中に入れるのは無駄か自己満足でしかねぇよ。ダイナミズムもグルーブも、それこそスゥイングなんかするわけねぇじゃんか… その結果、演奏だけでなく映画の
テンポまでもグダグダにしちまってて、それが狙いならまだしもそうじゃなさげなんだもんなぁ… 笑いには、リアリティが必要なの。それは演奏等のリアルと相通じるモノであって相反はしない。だけどこれはどちらも満たしてないから駄目なんだっての。
 
 オッサン連中がこの映画を喜ぶのは本当によく解る。だって可愛らしい女子が制服で方言でジャズやるんだから、オッサン連中はデレデレになるんだろう。だから設定した舞台や描いた日常ではあり得ない脚の細さでスカートの丈でも全然オッケーなんだろうけど、それらも含めた製作側の「狙い」って点では徹底してるけど、気持ち悪いよ…
 
 竹中直人にあまり好き勝手やらせなかった事は評価出来ても、それ以外はなぁ… 何せショット、カットが説明にも描写にもなってない、存在の意味の無さも美しくもなんとも無いのも含めて映画の出来として、本当にイマイチ、落ちた事にガッカリしましたよ。
 っか、ジャズやビッグ・バンドにも愛情が無いんだろうなぁ…
監督のやりたい事を実現させる為の手段っかマーケティングにジャズが利用されただけで、主人公らの設定年齢と同年代の人達が喜ぶのはまぁいいとしても、いい歳をしてたら… ましてジャズ好きならば褒めちゃいかんよ、この映画は。竹中直人の数学教師の扱い、あれがジャズ・ファンへの
監督らが思い、感じてる事であって、それでウヒャウヒャ喜んでるなんて自虐の度を越していてイカレてるよ… サッチモのあの曲をイノシシ殺しに使われてもなぁ…
 
 って事でガッカリしました。
世評的にはコッチの方が良かっただけに期待した、って私の事前の下駄を差っ引いても出来がいいたぁ思えませんなぁ…
 一見、明るくてお気楽で楽しい作品ではありますが、その下にある偏見や差別意識や決め付け、ってのはどうも性に合いませんし、その表現が巧くもないんじゃなぁ… 多分、監督がそういう事を自覚してないからなんだろうけど、そんな連中が作る物はボケてて当然だわなぁ…