ティム・バートン

 
 今週末に『コープス・ブライド』が公開されるとあって、TVやらでは宣伝が流されているけれど、先の『チャーリーとチョコレート工場』の大ヒットといい、ティム・バートンを劇場で観てきた身には隔世の感ってのを感じなくもなく。
 まぁ都市部は知らんよ、でも、東海地方ではティム・バートンの映画は基本的にいつ打ち切りになるか解らんシロモノだけにファンとしてはなるべく早いうちに、まだ上映しているウチに劇場に観に行かねばビデオ化待ちまでの長い間を我慢して過ごさねばならないものでねぇ…
 
ビートルジュース』だって打ち切りだった。
バットマン』はそうでもなかったがアメリカでのヒット程でもなし。
 でも、アレを観てシビれた私が、
「あの『ビートル・ジュース』の監督がおくる爆笑コメディ!」
 って宣伝をしていた『シザーハンズ』を観に行くのは必然とも言えたが、この時は『ホーム・アローン』が同時上映だったんだよね… 勿論劇場内はマコーレ・カルキン目当ての女性とカップルが殆どで凄く居心地が悪かったものの、『シザーハンズ』の美しさと切なさに劇場内、涙の渦となって、帰り間際には
「あんなクソガキの映画より断然コッチだよね!」
「そうだよねッ!」
 っと力説しあう他の客を多分赤くなっているであろう眼で見ていた私もいい気分にはなったが、結局打ち切りで。
バットマン・リターンズ』も、どちらかと言えば打ち切りっぽく。
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』も打ち切り。
エド・ウッド』なんか公開すらされなくて。
『マーズ・アタック!』も打ち切り。
スリーピー・ホロウ』も打ち切り。
 でも、アメリカでの興業実績は着々と積んでいたから廻ってきたビッグバジェットの『猿の惑星 ― Planet Of The Apes』は何となくノれなんだのでスルーしたら見事な大ゴケで、ファンの私ですらDVDで観て唖然としたものだからと『ビッグ・フィッシュ』を劇場で観るのを見送ったらこれが実に素敵な作品だったが日本ではイマイチで、実質打ち切りと大差無い上映期間で…
 
 ってのを見てるだけに、「父と息子」というバートンのテーマ・作家性が変わったワケでもなし、毒もシニカルさも含めた画面と内容のダークなトーンも変わっているでもない『チャーリーとチョコレート工場』が現在ヒットしているのが理解出来ないし、ディズニーランドのハロウィン期間のイベントで『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のジャックらが出ているのだって信じられないでいる。
 
 別に自分だけが解る、自分こそ理解者! 大衆はブタだ! 衆愚が純文学を理解出来る筈が無い! っと若き日の大江健三郎みたいな事を言う気はサラサラござんせんが、事、一般受けするモノかどうかは本当に解らぬものだと思いますし、ひょっとするとTVで『となりのトトロ』等を繰り返し放映する事によって宮崎駿の映画に観客がついていったように… そう、『紅の豚』までの宮崎作品は赤字で、打ち切りだったんですよ、『カリオストロの城』も、『風の谷のナウシカ』も『天空の城ラピュタ』も、『魔女の宅急便』も『となりのトトロ』も、みんな、みんな、今のように劇場にお客が来なくて赤字で打ち切りになってたんですよ… ひょっとすると『シザーハンズ』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』らが繰り返し放映されてきた事で得た市民権っか安心感とかもあるのかなぁ… っと思わないでもありません。っか、それ以外の要因はちょっと思いつかないなぁ…
 
 まぁ、作家が、自分が好きな事が好きなようにやって出来た作品を観る事が出来るのは幸せですし、そういう事が出来る為にも観客動員数が増えるのはとてもいい事だと思いますし、劇場で観れる幸せを得られるのは私、素直に嬉しいんで『コープス・ブライド』も期待はしてますが…
 
 まぁしかし、こういう状態がいつまで続くのかは解りませんからのぅ… なるべく好きな作家の作品は劇場で観ようとあらためて思ったものの、週末までの日々の仕事を思うと窓の外の空の如くゲンナリとした月曜日でしたとさ。