『La Marche de l'Empereur (2005)』

DVDジャケット。

 
 大雑把に訳すと「皇帝の歩み」って意味らしいが、素直に『皇帝ペンギン』とした邦題のセンスは良いんではないんでしょうか? ってこの作品、TVの映画情報番組で観た予告に惚れて調べてみたら、日本での劇場公開とほぼ同じくらいの時期にフランス本国でのDVDリリースがなされるのを知りオーダーし、先週の金曜にフランスから届いたので早速観たんですが…
「手間も暇もお金かかってはいるのはよく解るが、愛も無ければセンスも無い、とても残念で失望した作品」
 という感想になりますかのぅ…
 
 南極の皇帝ペンギンの繁殖シーズンに絞ってのドキュメンタリー、と思っている人も多いかもしれませんが、実物は監督がペンギンを擬人化しての親と子のドラマって編集&加工した映画なんですな。
 だから、南極の美しさも厳しさも中途半端ならペンギンに対する情もあまり無いんですよ。むしろそれらは背景や要素でしかなく、どこまでいっても監督にとっての親と子の情(の物語)、ってので監督に必要であればフイルター効果による着色やらもバンバン行っているしナレーションもどんどん入れて… ってのが基本ですし。
 
 だからドキュメンタリーではないし、と言って自然を利用した創作物として観るに画面の凡庸さが何とも。まぁ監督の求めた親子の物語には舞台となる自然や対象そのものを美しく撮る必要は無いんだろうけどなぁ… でも、あの手間と暇と金をかけておいて、こんなのしか出来ないのか? って思っちゃうんですよ、私は。勿体ねぇじゃん、って。
 
 私も妻もフランス語がカケラも解らないからまだ救われましたが、劇場等で字幕なり吹替えで観たら多分、その心情説明が鬱陶しくて腹が立っていただろうなぁ… っと思うくらい、ナレーション(っか意味的にはダイアローグか)での台詞の挿入が多かったのもどうかと思うんですが、それより酷いのがBGM。これはもぅダサイなんてもんじゃない。安いシンセと陳腐なメロディに稚拙なヴォーカルってのだから素材そのもの負けているってのに、それで場面やらの演出にしようとしてるのはハナから無理。なのに、あえて効果音を付け足してまでやるから作品世界に入り込めなくて白らけちゃうんですよ。あの安っぽさのせいで作品の奥行きとか重みとか無くなっていますからなぁ…
 
 自然の雄大さ、過酷さ、そして優しさへの畏敬を抱いた『DDEP BLUE』などと比べると、この作品はあまりに監督の一人よがりの世界なんじゃぁないか? それが独自だったり物凄く美しいとか面白いのならばまだしも凡庸だし、自然への思い入れが仮にあったとしてもこの作品には不要、ってなってるんで、いくら素材のペンギンらの様子がよく撮れていても… 大体、子供が誕生するまでの長さと子供が生まれてからの短さといい、なんか「親は苦労してんだぞ!」って言いたいだけなんとちゃうんかコレ… っと思ったんですが…
 
 …って印象があながち間違いでもなさげなに思えたのが特典ディスク収録のメイキングで、フランス語はサッパリ解りませんけど、兎に角、監督のアップでの喋りが大半で、もぅ俺様世界全開。音声解説だけでは語り足りないのか、撮影場所を作る事の手間や凍傷の事など俺様の苦労語りが延々と続いてますが、失望した作品の監督になんか興味の無い私には邪魔くさいものでしかありませんしのぅ…
 
 それよりも撮影の合間にペンギンの傍で煙草をふかしてたり、監督だかスタッフだかが現地で誕生日を迎えたからという事で行うパーティでいくらベースキャンプの傍とは言え野外で3メートルくらいの大焚き火をしている様とかには怒りすら感じましたが… どう見てもプラやポリ製品までガソリンかけて燃やしてるし…
 まぁ自然とか環境とかどうだっていいんでしょうな、この人達は。
だから声をあてているペンギンも場面によって違っててもいいし(っか見分けがついてないと思う)、自分にとって必要な絵を撮る為ならばどんな「演出」も「加工」も構わないし、当たり前、って事なんでしょうな… って観ていて思う程の俺様っぷりでしたな。
 
 そりゃまぁ創作、表現は自分語りでもありますがねぇ…
 これはちょっと私には残念な作品、でしたなぁ…
 
 以下はDVDソフトとしての感想なので興味のある人だけ
 
 DVDソフトとして画質は普通。
PALで本国版だから… って期待をしていたんですが、画面をコンピューターでイジり過ぎているせいか全体的に色合いが薄い感じがします。そのせいかフィルターをかけている部分が濃く目立つ感じで場面毎の明るさや色合い等がチグハグな印象があります。
 また、フィルムからデジタルへのコーディングするソフトの質が悪いのか、あれだけ近くで撮影しておきながら画面は全体的にザラついて鮮明さも欠けていて、撮影物の質感を感じ難い画質、って言えば何となく伝わりますかね?
 ですんでノイズが無い、って意味で「普通」ではないかと。
まぁ日本版よりは綺麗かもしれませんが、正直、これまでイギリスやドイツのPAL版オリジナルで味わってきた色彩の美しさや鮮明さでの感動はこのDVDにはありませなんだな。ビットレートが低いとも思えないんですが… 何せ90分無いんですしねぇ… 元々の値段の高さも含めてこれには本当にガッカリしてます。
 
 音質も普通。と言っても安いシンセのBGMがメインですからあまり意味も無いかと。無理にスタジオで整えた音響設定といい、ライブラリーから引っ張ってきたかのようなSEの強調っぷりといい、加工物としての強調が強いのは私の好みじゃぁないんで厳しい言い方かもしれませんが、まぁノイズが無いって程度での普通、っと。

 
・『La Marche de l'Empereur - Edition Collector 2 DVD (2005)』 - Region 2
 
 Origine : France
 Date de parution : 26 juillet 2005
 Editeur : Buena Vista Home Entertainement
 1 b 25 mn
 
 Format image :
 Widescreen anamorphic - 1.85:1
 
 Langues et formats sonores :
 Francais (DTS 5.1, Dolby Digital 5.1)
 
 Sous-titres : Francais
 
 Bonus :
 DVD 1:
  ・Le commentaire audio de Luc Jacquet
  ・L'introduction, la presentation de Luc Jacquet
  ・Les Bonus en cours de visionnages :
  carnet de route, images du making of, cartes topographiques...
 
 DVD 2:
  ・Documentaire Luc Jacquet "Antartic Printemps Express"
  ・Interview de Romane Bohringer, Charles Berling et Jules Sitruk
  ・La Musique : Interview de Emilie Simon
  ・Nouveau Makig-of exclusif
  ・Galeries de photos
  ・Court-metrage: "Hector et la Manchotte"
  ・Promotion: galerie d'affiches, bande-annonce...
  ・Bonus Rom: Calender perpetuel, Economiaeur d'ecram...