『ABCD: Any Body Can Dance (2013)』

DVDジャケ。

 
ムンバイでも最大手のダンス教室の筆頭コーチだったものの、経営者の金儲けの為の結果優先の方針に嫌気がさして辞めたVishnu(Prabhu Deva)だったが、田舎へと帰る前に寄った友人Gopi(Ganesh Acharya)の住むスラム街で出合った若者らの才能にダンスする事の喜びと熱意を蘇らせる。そして、かつて自分が去ったダンス教室への挑戦が始まる…

 

 
監督のRemo D'Souza、主演のPrabhu Deva、友人役のGanesh Acharyaもコレオグラファー(振付師)というインド映画史上初の3Dダンス映画って事で、賑やかなダンスシーンが観られるだろうって気分でのオーダーでしたが…
 
 これは日本の劇場で公開すべし。
 っか、劇場で観ないと意味が無い。

 
物語としては凄く単純で、若者らのイザコザや葛藤とか万国共通のお約束レベルで確かに目新しくはないものの陳腐には思わなかったのは1つは細かいエピソードやらを後で上手く取り込む事で伏線っぽくなってたりするのをキッチリ積み上げてのクライマックスを総力戦で大団円にしてスパッと終わってみせた脚本と編集のセンスの良さでしょう。出演者らも殆ど素人だけどもそんなに難しい事をさせなかったのもあくまでもダンスがメインって判断を貫いたからで、そこらの割り切りも潔くて。個人的には登場人物のキャラ立てが若干弱いとは思った程度で、それこそDVDに収録されていた削除シーンを全部入れての本編3時間にしてもオッケーなんじゃないかと思ったくらいですが、あえてテンポアップとダンスシーンを立てる為というのも解るんで本編はあれが正解でしょう。ホント、本編に無駄らしい無駄が無いし、ダンスシーンも状況に応じてのものだけで尺も意味付けもそれぞれ違うんで退屈しないんですよね…
 
そして何より映像が凄い! リリースされているのが通常のDVD版とVCD版で3D効果は想像でしかないんですが単に飛び出すシーンもチョイチョイ入れるものの基本は奥行きに使ってるんですけど、その映像が1ミリも家庭での観賞を考慮してない大きさと密度で撮ってるんですよ… 今時の御時世で、ですよ? スクリーンの大きさの為のスケール感と色彩が半端無いです。
 
 例えばVishnuが若者らと出会うお祭りのシーンを観てもらいたいのですけども…
 

 
 こんなんスクリーンでなきゃ意味無いでしょ?
またスクリーンってフレームを使ってイベント会場に入れ子状にしてみせたりするんですけど、そこからわざと少し引いて観てる人間がまるで会場の観客席にいるかのような映像にしたりもするのが活きるのは家庭用のTVでは100型でも足りないでしょうて… っか、単に画面が大きければいいってんじゃなくて、疑似的に取り込んでる部分も含めて劇場という空間で観ないと駄目なんですよこの作品。黒浮きじゃなくて黒が沈まなきゃ駄目なんですよぉ…
 
 

チアーズ! [DVD]

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…等の若者向けのダンス映画は日本でもそれなりの成績があった筈だし、まさにインドの映画だからこその要素も盛ってくるし、南インド映画と違って唐突な悲劇や無茶な展開にはならないボリウッドらしい端正さと無駄の無いまとまった本編、お話としては目新しさは無いけれどもメインは若者らの青春群像で小難しい部分や説教臭い部分は無し、劇場で観る事だけに徹底する事でインパクトと迫力を得た娯楽作品、しかも大スターがいないからそんなに版権料も高い事言わないでしょうUTV社だし… って事で何処か日本の映画会社で来年の春か夏前辺りでいいから日本国内でも公開しましょうよ… 確かに社会に向けたメッセージなり批判があるでなし、その意味では徹底した娯楽作品ではありますが、劇場でスクリーンで観るって事に特化しきった本作、
 
 
私は是非、劇場で観たいぞッ!