『痕跡 imprint−内藤陳がいた−』

 
イメージフォーラム・フェスティバル2013名古屋で観賞。
 
おそらく膨大にあったであろう素材からよくまとめた、とは思う一方で、以前観た『酒場#7「汀」〜渚ようこ〜』と比べるにちょっとまだかわなか先生の中でのテーマの整理がついていないと思えるような部分も散見されて、さて。特に内藤陳氏とかわなか先生の関係について実はすんごい欠落っか説明不足の点があって事情や背景を知らない人には場面転換ナドの部分でワケわかんないかとは思う。冒険小説協会の会員だった私も、多少は事情は知っていたから何とかなったものの100万部記念パーティーからの帰天大宴会への転換を省略とするか飛躍とするかとりあえずの空白とするかは私には判断がつかない。この間、実に30年という時間があるワケで、そこを埋めての完全版なり続編が出来るのか、それともこれで良しとしたのか、とか。かわなか先生のこれまでの作品に比べて非常に字幕での説明が多かった点から前者のようにも思えるものの… ただ映像としては流石。8ミリの再処理のとかビデオ素材の古さを逆に活かした入れ込み型とか。先生の前の作品が「ボクはちっちゃな子供が大好きです」ってな中身の自己矛盾まみれで上から目線の糞映画ってだけでも酷いのにそもそも映像とはって意識が薄いシロモノでフレーミングは悪くないものの映像としては非常に凡庸で対象のお陰で何とか成り立ってた(だから劇中に出る写真の方がマシ)ってどうしようもなく退屈な作品なのと比べると対象への迫り方(距離感と高さ)、フレーミング、そして処理、どれも非常に凝っていてそれだけでも観ていて楽しかったんですよね…
 
正直言えば、余人である私には先生には思うように作品を撮って頂いて、それを観る機会がこれからも続けばいいなぁ… っと。それは私みたいな凡俗には理解できない実験映像なのやもしれませんし、理論っか目標前面の芸術映画なのやもしれません。勿論、個人としての情なりセンチメンタリズムなりリリシズムに満ちた作品であっても、私はなんか、全部が全部とは言いませんがかわなか先生の作品を観るのが好きなんだなぁ… と。
 
あぁでも、100万部出版記念の会場の猥雑な事ったら! そう、私が始めて訪れた熱海にも残り香として微かにあったものがフルに、濃密にそこにある姿は観ていて羨ましく、懐かしく、そして寂しくもあり、切なくもありました。あの日、先生と初めてお会いしてから、もぅ20年以上になるんですよね…