『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム (Om Shanti Om (2007))』

 
映画というものはそれなりの代金を支払って観る事の出来る娯楽であって、そこには設備側のスクリーンの大きさや映写機材の性能、そして音響も確かに重要なんですが、そもそもスクリーンで観るに耐えうるだけの映像作品である、という大前提が、何故か「スクリーンで観てもアラが見えないエフェクト」になったり、「TVでは見られない台詞やゴアやヌード」といったものへとスライドしていってるような気がして昔に比べると映画館へ行く機会というのはめっきり減ったUSA-Pです。いや、まぁ基本は映画は映画館で観たいんですけどねぇ… ただ観ている途中で
「いやでもこの作品って別にスクリーンの大きさは必要無いよね」
 と思ってしまうと、どうしても醒めてっか冷めてしまうと言いますか… そこをハードルにしないのが本当の映画好き・趣味は映画鑑賞って人なんだろうと思うので、私はあくまでも「映画を観る事が好き」と言うようにしています。
 
そんな私にとって2007年頃から個人輸入するようになったインド映画というのは、まさに映画館で観る事が大前提になっているのでとても好ましく思っておりましての。最近は小規模予算の作品やら所謂インド映画っぽくない作品も増えてきて、それはそれで映画文化の多様性と成熟の過程だとは思っているのですが、しかし一方で
「いやでもこの作品って別にインドだから出来た映画ってのでも無いよね」
 と思ってしまうと、どうしても醒めてっか冷めてしまうと言いますか… そこをハードルにしないのが本当のインド映画好き・趣味はインド映画鑑賞って人なんだろうと思うので私はあくまでも「インド映画も観る事が好き」と言うようにしているんですが、もひとつ、田舎棲まいなのがネックで、家で観るインド映画が映画館で観る事が大前提になっているのは解ってるんだけど、その作品を地元の映画館で観る機会が絶望的に無い、ってのがありましてねぇ… また日本で公開なりソフト化されるインド映画の元の作品が少ない上に、される作品もどちらかと言えば感動系が主で私が好きな娯楽系作品が乏しい、ってのは残念だったのですが…
 
都会からスケジュール的には遅れてはいても地元大垣のコロナシネマワールドで今週末から2本のインド映画が… 既に上映が開始されている『きっと、うまくいく (3idiots (2009))』に、加えて今日からは
 

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム (Om Shanti Om (2007))』(日本公式HP
 
 が上映されるのであります。田舎の大垣で、こんな事はもぅ二度と無いだろうなぁ… って事で妻と観に行ってきたのでありまする。『OSO』の方は既にDVDとBlu-rayを持っていてそれぞれ通しで一回づつ観ているんですが、単純な恋愛映画ではなく、脚本兼振り付け兼監督のファーラン・カーン監督っらによる映画への愛に満ちた作品で凄く好みではありましたが、もひとつTVの画面の大きさには合ってない作品なのもあって他の大好きなインド映画に比べると、既に6年前の作品でもありますし喜びってよりはどちらかと言えばもっともっと色々な他の作品も観たいんで、大河の一滴・浜辺の真砂の一粒程度ではありますがここは身銭を切る事で、地元でインド映画が観られる機会が増えるといいなぁ… って気分の方が強かったんですよ。
 
それにね、
 
インド映画は伝統として、例え本編が90分しかなくても中間でインターバル(途中休憩)が用意されているのがデフォルトです。アート系とかインディーズ系とか最近はそうでもない作品は増えてきていますがコッテコテの映像密度インド映画の本作、約3時間あるんですけど多分、日本での上映ん時のパターンとしてインターバルが無いのを思うと気合と覚悟と体調を整えてかないと、ってハードルはありますが、それでもやはり地元でプロ専門家による日本語字幕が付いた状態で観られる事を思えば、ねぇ? って事で、行ってきたですよ、大垣コロナシネマワールドへ。
 

 
とりあえず大垣コロナシネマワールさんは、建物の外は兎も角としてせめて入り口くらいに全部の上映作品のポスター掲示はした方がいいんじゃないかと。全国同時上映作品のみ、ってのが現状ですが、そないHPや新聞でチェックしてる人ばかりでもなかろうに… ポスターを観て面白そう!そういえばコレ、何かで見た事がある!って気付きなりキッカケ作らないと、それこそ遅れての上映の場合、TVCMとかもやってないんだからさぁ… もうちょっと、ひと手間でひと単位くらいしか増えないかもしんないけどお客を呼ぶ手段はとって欲しいなぁ… なんせ初日の今日の最終の17時10分からの、私ら夫婦除いて3人だったんですよ… と愚痴りたくもなるくらいに
 
 すんげぇ面白かった!
 
まずマスターが非常に良くて、インド版Blu-rayよりも綺麗でクリアーなのにまず感動。そして大画面だからこそ栄える画面の密度ったら!妻も
「(映像に)どこにも手抜きやみすぼらしいトコが無い」
 と言っていましたが、まさに娯楽としての作品で冷めるようなのが見当たらない。CGによるエフェクトが使われてはいても、まずあるのはデカいスタジオに作り上げられたセット、エキストラに至るまでキチンとメイクと衣裳が用意されていて、ってのがあるからこそ活きてくるんですよ。で、エフェクトはあくまでも演出であってそれ自体が見せ場や作品の売りになってないからウザくないんですよね。ダンスシーンもそうで、TV画面サイズでは意識しないと見れない部分までも大画面だと見えるから、バックダンサーに至る人々までもキチンと表情を作っていてキッチリやってるけど、それ以上に画面の前にいるボリウッドのスターさんの華やかさや演技の細かさが栄えるんですよね… 勿論、それ以外のシーンも同様です。そして字幕の翻訳がとても良い! 私は今まで英語字幕だけだったんですが、それと比べると削るトコロは削っての文字数にしているんだけど決して台詞の意味や意図を変えたり殺す事が無いんですよ。短いんだけど適切、だから画面に集中出来る。そして映画館ならではの大音量ったら堪りません! 通しで2度、シーンや音楽んトコのつまみ見なら何度も、ってしてる筈の私でも約3時間の長さが一切気にならず終了時には身体が熱くなってるくらいに集中して楽しんでしまいましたが… そう、映画館で映画を観る楽しみってこういうのがあった筈だよね! 勿論、色々な作品があって、それぞれの面白さはあるんだけども、観終えて
「あぁ、楽しかった!」
 と素直に言えて、作り手の熱意や情熱や手間に尊敬を抱く、ってのが私には近年無かっただけに、すごく、すごく楽しかったですよ。
 
そう、本作はソフト化されるのを待つのではなく是非とも映画館で観てもらいたいのです! 是非とも未見の映画が好きな人は、とりあえず大垣とその近郊の方は大垣コロナシネマワールド、それ以外の地方でもまだこれから上映開始となる劇場もありますから、機会を作って観に行かれるのをオススメします。多少、荒っぽいトコがありますし作品として完璧完全とも申しません。しかし、この作品は映画を愛し、そして映画を作るという事への喜び… それが自分が愛した映画の歴史に連なる… に真摯に向き合ってる作品です。様々な過去の作品へのオマージュはインド映画に限らず例えば『雨に唄えば』からのもあったりします。所謂TVドラマのスペシャル版やらにウンザリしている人達にこそ、映画は映画館で観てくれる人の為に、映画だからこそという力と生命力に満ちた本作をオススメしますよ!