『Dil Bole Hadippa! (2009)』

DVDジャケ。

 
 田舎の芝居一座のVeera(Rani Mukerji)はクリケット選手になる事を夢見る女の子。実際打撃に関しては視力とセンスの良さで男相手の賭けでも楽々と長打をしてみせる程。そんな彼女が年に一度、インドとパキスタン親善クリケット試合・アマン杯に行ってみるも応援空しくインドチームの大敗で幕を閉じる。
 
 アマン杯を争うインドチームのオーナーVikram Singh(Anupam Kher)とパキスタンチームのオーナーLiyaqat Ali Khan(Dilip Tahil)はインドからパキスタンが分離独立する前からの親友であり、このアマン杯もパキスタン独立記念日の8月14日にパキスタンで、インド独立の8月15日にインドで、と交互に行われ友好親善と親睦を深める為ではあったのだが結果としてはインドチームはパキスタンに大敗し続けている為にどうもギクシャクとしたものになりつつあって。
 
 それから数ヶ月後…
 
 Vikramはロンドンに住んでいる息子でプロのクリケット選手でもあるRohan Singh (Shahid Kapoor)を仮病でインドに呼び寄せ来年のアマン杯にインドチームの選手兼コーチに就任してくれるようにと頼む。Vikramはかつてロンドンに住み妻とRohanとの生活を送っていたのだが、インド生まれでインド育ちの夫とロンドンで生まれ育った妻との間で夫のインド移住が問題で二人は離婚、Rohanは母と共にロンドンに住む事となっており彼が父と会うのも10年ぶりの事であった。離婚当時はまだ子供だったからよく事情が解らずにいた事を父と過ごす事で実感として確かめてみたいという気持ちとインドチームがあまりにもお粗末な有様にRohanは父の頼みを引き受ける事にし、まずは負ける事に慣れ切ってしまったチームの再生の為に選手募集をかけるのだが、それがVeeraの目にもとまる。クリケットの選手になれる千載一遇のチャンスだと喜び勇んで選考会場に行くのだが門番に女の子であるという理由で会場への入場すら拒否され追い返され、順番待ちの連中からも嘲笑を受けて深く傷ついてしまう。
 
 その夜、一座はいつものように公演をしていたものの主役の男優が酒の飲み過ぎで潰れてしまってどうにもならず座長はVeeraに代役として男装し男役をしてもらう事にする。半ば無理矢理、嫌々引き受けた男役だったが持ち前の機敏さとセンスの良さでその晩の公演は大喝采。その反応にふとVeeraは男装して選考に臨めばクリケット選手になれるかもしれぬと思い至る。翌日つけ髭を着け、目にカラーコンタクトをはめ、男装してVeer Pratap Singhと名乗り会場に乗り込む…

 
 予告編はコチラ。
 
 
 
 どうしてYash Raj Films社は折角YoutubeにオフィシャルとしてUPしているのにアスペクト比がおかしかったりするんだろう… というのは兎も角として、マンネリだろうがお約束だろうがスポーツ物というのは変な事さえしなければ面白さは得られるし、何より予告編でのRani Mukerji*1の明るさに期待をしていた本作、DVD発売を知らせるメールに早速注文して観たんですが… っと、かなりハードルを上げての分を差っ引いての感想としても「ちょっと残念、っか実に惜しい映画」ってトコでした。
 
 脚本の構成としてはオーソドックスでそのままでも十分だったのを多分テンポアップとDVDソフト化の為の尺削りの為にカットしたであろう部分(エピソード)が一杯ある筈なんでしょうがそのカットの仕方がちょっと失敗で… 例えて言うなら【ダイエットしようとして体重は確かに落ちたけど痩せて欲しくない部分まで落ちてしまった】又は【試合の為に減量をしたらば確かに体重は落ちたけれどもスタミナとかパワーまで落ちてしまったでゴザル】ってトコでしょうか… ストーリーの進行が駆け足っかダイジェスト的になって溜めが出来てない為にもうひとつ盛り上がりに欠けるのがぶっちゃけ凄くモッタイナイと思うんですよ。
 私としては、
 
 1・Rohanの戸惑い。 … ロンドンという大都市からインドの片田舎での、ってインフラ方面だけでなく生活様式等のカルチャーギャップが描いていないと「インドはインドのままで変わる必要なんて無い」という台詞に説得力が無い。
 2・VikramとLiyaqatの友情の回想。 … Vikramの元奥さんYaminiとも関連してそうだったし、Rohanに嘘をついてまでインドに呼び寄せるの理由としてはちょっと弱くなっている。
 3・Soniyaの退場。 … 適応出来たっかインドに目覚めれたRohanとの対比、ってのでも良かったのではないか。皆が皆、母国での暮らしが出来るというものでもないのだし… それこそ手紙なりメールなりを読むだけでもいいからあれば、Rohanが最後の表彰式でVeeraを壇上に上げた事がもっと良いものになったのではないか。
 4・VeeraからVeerのメイキャップシーン。 … コレは絶対に欲しかった。これが無いからカラーコンタクトの件が凄く解りにくかったし、アレコレと一座の皆が協力してのってしても良かったのでは。
 5・Veerがチームで信頼を得ていくシーン。 … 全体的にチームの他のメンバーとの関わりが殆ど描かれていない為にロッカールームでの皆の戸惑いとか試合の緊迫感とかがもうひとつ盛り上がりに欠けるんですが…
 
 …って5シーンだけでも、3・以外は台詞無しのクロスカッティングとカットバックでオッケーだし、この5シーン合わせても多分10分も要らないでしょ? 巧い人なら3、4分程度でまとめれると思うし、それくらいのカットが増えても… 仮に10分としても158分で何ら問題も無いと思うんですよ。そのたった5シーンだけ加えてくれりゃぁもっとハッピーな映画になったんじゃぁないのかなぁ… 逆にどうせ不足感を感じるのならばいっそ「VikramとLiyaqatが友人」「Soniya」「VeeraとRohanの恋愛」等をカットしてミュージカルシーンをそれぞれ90秒づつカットすれば今より30分くらいは短くなるしもっとスッキリ出来ていたのを思うと、どっちにもなれなかったのが勿体ないなぁ… っと、ダラダラと書くくらいにこの映画は楽しんだんですよ。
「ガール・ミーツ・ボーイ」であり「ビルディング(成長)物語」でもあり「スポーツ映画」でもあり「女性に対する差別への問題提起」でもありながらそれぞれを上手く重くなり過ぎず偏らず一本の娯楽映画として楽しめた最後に残るのはやはりRani Mukerjiの溌剌とした陽性の明るさで、それはとても気分が良かったんですよ。また映画本編もエピソードのバランスとペース配分をとって物語全体を奇を衒わないフォーマットで進行してっていたからこそ兎角お説教臭くなりがちなテーマではなく彼女の明るさを存分に堪能出来たワケで、そうなると余計に「もう一押し、もう一枚エピソードの積み重ねやカットがあったらなぁ… 」っとな。まぁここいらは贅沢な話だとは思うんですけども、今年観たインド映画ん中でも『Rab Ne Bana Di Jodi (2008)』はそういう点では隙が無かっただけにやはりもうちょっと、って思ったんですけど、ね… っと書くとRani以外はまるで駄目みたいな印象を持たれるかもしれませんがそんな事は無いんですよ。Rohan役のShahid Kapoorをはじめ脇役には色々な作品で観たベテランを揃えていてそれぞれの演技も堪能出来たんですけども、この「男装してクリケットで大活躍!」って無茶をやりつつもキュートって主役のVeeraを一体他の誰が演じられるってんでしょ? 可愛い、綺麗なだけなら他にもいくらでもいるでしょうけどキチンと喋るのも含めた演技も出来た上で天性の陽気さ、ハジける明るさを持っている彼女だったからこそ出来た映画で、だからこそ私は『Banty Aur Babli (2005)』『Black (2005)』と並ぶ彼女の代表作にあとちょっとホンのちょっとでなれた筈の本作が「ちょっと残念、っか惜しい映画」だと思いましたよ… っと。
 
 
 
 …って事で以下はこのDVDについての情報なので興味のある人だけ…

 ・『Dil Bole Hadippa (SINGLE DISC)(2009)』 - ALL Region
 
 Label: Yash Raj Films
 Theatrical Release: September 18, 2009
 Dil Bole Hadippa - Official website
 Running time: 148 min
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen - 2.35:1
 Subtitles: Arabic / Dutch / English / Tamil / Telugu
 Video: NTSC
 Sound Coding: 5.1 Dolby Digital, 2.0 Dolby Digtal Stereo
 
 Songs: 6
 Othe Attraction: New York ( :30)

 

 
 え〜… Yash Raji Films社の製品情報によれば特典ディスク付きの2枚組み版もあるようなんですが今回Induna.comで購入したのがこの本編ディスクのみ版、製品コードは同じ「YRD 60237」なんだけどジャケのデザインも違うしでよぉ解らんのですが… まぁインド国内専用、なのかなぁ? 今や懐かしくなってしまった赤いHD-DVD?のケースにプリントされている「yrf DVD」の文字とフォログラムシールまで海賊版がやるとは思えないんでコレを正規版として話を進めますが…
 
 画質、音質共に何の問題もございません!っか大満足!
元々Yash Raj Films社の映画ソフトは高品質でしたが… Youtubeのオフィシャル動画やSong集DVDとかは酷いんですが… 今回もこの画質と音質で文句をつける人ってのはいないんじゃぁないんでしょうか。シャープで鮮明、色彩豊かなのが滲む事も無く。最近の作品でもあってもフィルム傷やらノイズのあるソフトもあるのも珍しくない中でこの品質の高さというのは本当に好きですなぁ…
 
 残念ながら特典ディスクはありませんがその分値段も安い?ので明るく素敵なRani Mukerjiを堪能したい方には是非、とオススメしますよ〜… っとぉ。
 

*1:Yash Raj Films社等映画会社のHPとかでは今でもMukherjee、なのを思うとこの表記でいいのかよぉ解らんのですが