『An American In Paris (巴里のアメリカ人 (1951))』

US版DVDジャケ。

 
 昔TVで二度くらい観た筈なのだがまるで内容を覚えていない、という事に気が付いてたまさかUS版DVDに日本語字幕も収録されていて$15.99… 日本版の半額以下ですなぁ… って事でオーダーして視聴したんですな。ジーン・ケリーと言えば『雨に唄えば』、な私ではありますが、歴史的な評価という点で見るとこの『巴里のアメリカ人』の方が先で尚且つアカデミー賞6冠という事で、外してはおけないかなぁ… とか思ってたんですが、ぶっちゃけ観終えての感想としては
「いやこれは忘れるわ。何コレ。」
 としか【現在】では言い様の無い作品でしたなぁ… って事で以下はネタバレ前提で進むのでお暇な方だけ
 
 まず何と言っても退屈だったのが「人物描写が薄く、個性もエピソードも薄い」。
友人のピアノ弾きのアダム、パトロン気取りの女ミロ、歌手で実は恋敵のアンリ、という物語の脇だけでなく主人公のジェリーとヒロインのリズという物語の軸の人間も割合と薄いんで何ともお話が締まらないんですよね。個性が薄いのに対立とか錯綜とかされてのハッピーエンドってされても、ねぇ… これは脚本が甘いからなのかもしれませんが、人物が薄いままに物語が進行していっても感情移入し辛いと言いますか、はぁそうでっか、としか言い様が無いんですよね。
 で、最後がアレでしょ?
私はモダンバレエはよぉ分からんのですけども、少なくともあのラストのは巴里にやって来た一人の若者が狂騒と情熱の中で時を過ごしていた後に残ったものは一つの恋の想いだけだった、という失意と感傷のものだと思うんですよ。自己憐憫も多少はあるけれども、過ぎてみれば巴里での時間は… って。それで終わってたのならばまだ良かったんですけど、まさかその後でリズが戻って来てのハッピーエンドってそりゃねぇでしょ、っと。そこまでするリズ側の描写が全く無いんであまりにも唐突だし、元々リズのアンリへの愛情(と敬意と。)もきちんと描いていないから何かもぅ一気にどっ白けですよ。
 
 ダンスにしても確かにジーン・ケリーならではのものも垣間見られましたが、翌年の『雨に唄えば』と比べるとミュージカルシーンの入り方はいいんだけども終わりがシーン前のストーリーの流れの落ちになってないのばかりなので尻切れトンボ感がするばかりで。スタジオやセットの大きさで言えば本作の方が大きいし予算もかかってそうなんですけども決してそう観れないんですよな… 動きの幅とアイディアって部分の差も大きいのかもしれませんがガーシュウィンの曲を元にした本作と、映画の為のスコアを揃えた『雨に唄えば』ではやはり展開のマッチ感といいどうしても後者の方が良いと思えるんですよね、私は…
 
 ですんで、
「無理に今、コレを観る必要は多分、無い。」
 と思います。
1951年… 日本では昭和26年、第一回NHK紅白歌合戦が行われ、力道山がプロレスデビューした年だそうです。サンフランシスコ平和条約日米安保保障条約締結の年、としてもいいのかもしれません。その時代にリアルタイムで観たのならばカラーでガーシュウィンのモダンな曲がかかる中での物語は素晴らしかったんでしょうが… アメリカ国立フィルム登録簿制度がスタートした1989年に『雨に唄えば』の4年後に本作が登録された、というのは決して偶然ではないんじゃぁないのかなぁ… とか思うんですけどね。
 
 さてDVDソフトとしましては…
 
 画質は良いと思いますが字幕がちょっと… フォントがスクリーン向けっぽいものなので観辛い、ってのもあるんですが流石に「ゲルピン」はねぇ(笑)。知らないっしょ? 金(geld(独))がピンチ(pinch(英))ってので金欠って意味の日本での造語でまぁ当時はアリだったのかもしれませんけど今じゃぁねぇ… ってのがそこかしこに出てきますんでもうちょっと、何とかならんかったものかと。別に今の流行り言葉にする必要はありませんが流石に死語は勘弁してもらいたかったなぁ… っと。
 
 音質は問題無し、DVD特典にも日本語字幕が付いているんでこれで本編がよければオススメのソフトだとは思うんですけども、如何せん本編が、ね…