同じ数字。

 
 いささかもぅ背広だけでは辛いんじゃなかろかと思うくらいの朝の冷え込みに箪笥からコートを取り出してみるも、流石に長年着ていたパチもんの安もんのモッズコートもどきの草臥れ様が部屋の蛍光灯の明かりの下ででも結構出ていて… 年季が入ったと言うか時代がついたと言うか、ってそれじゃぁ「火焔太鼓」か… って事で、とりあえず今朝はまだ昼間の暖かさもあるだろうからと背広だけで過ごす事にして会社帰りに紳士服量販店のAOKIに行ってみる事にしたのだが、最近の暖房器具・設備の性能と衣類の保温性の向上からかハーフコートがメインでそりゃまぁ薄いし軽いし機能的には充分かもしれんけれどもチョイと私の趣味ではなくて。出来ればWWEのThe Undertakerのような黒のレザーのロングコートを… とは思うけれどまず革が似合わないし手間もかかる上に身長っか足の長さがあと10センチ無いと似合わない体型なもんで諦めてはいるんだけど、じゃぁハーフコート? と見てみるも丈が短いのに無理からトレンチもどきってのはなぁ…
「それならいっそ軍放出品でトレンチを買いますかね?」
 バーバリーの本物はとてもじゃないが手が出ないけれども、アメリカ軍かドイツ軍あたりのなら私の体でも合いそうなブツはあろうて… もしコートが無かったらそれこそ青島刑事よろしくモッズコートだってそないおかしな事にはならんだろうし… とネット検索していて見つけたショップでよさげなコートを発見したのだけど、商品説明欄に
「細めのコートで全サイズ胸囲92cmぐらいまでの対応」 
 とあって。
 
 私は鳩胸系だしなぁ… と思いながら妻に計ってもらうと108cm。あぁ、断念するか… とガッカリするより早く妻がゲラゲラ笑い出す。
「なんですのん?」
「いやいや、夫って大きいんだなぁ… って思って。」
「何を今更。っか君かて背丈170cmあってよぉ言うわ… それにそういう笑い方じゃないでしょ君ぃ。本当の事を白状しなさい。」
「 … いやね、108って煩悩の数と同じ数字じゃない? 夫らしいなぁ、って思って。」
 うぉ〜い。