「戯言。」

 
 サミット前の会議、ってのもあってか東京は警官で溢れていて… まぁその
警備自体は緩く甘いものであったが万が一、私の為に時間を割いてくれた上で
街を案内してくれる人に迷惑をかける事だけはしたくなくて昨日は久し振りに
腰の一物を外しての丸腰となった。向けられた怖さは包丁の方が上だが実際に
振り下ろされて斬られたのはナイフだったからこそ外出時には腰に下げるよう
になって20年近いだけに落ち着かなかったものだが、平和と平穏な緩い空気に
あまり私もその事実に気をとられる事は殆ど無かったのだが…
 
 その翌日、まさに自分らも歩いていたその場所、同じような時間に、まさか
あんな惨事が起こるとは。
 
 そして、思う。
 
 もし、自分が丸腰で被害に遭ったのならばまだしも、もし自分にとってかけ
がえの無い人が被害に遭ったのならば、私は丸腰でその場に行った事を一生、
悔いる事になったろう、っと。
 
 対人に於いて威嚇しか使用した事が無い私が、あのような情況で何が出来た
とは思わない。しかし、所持している事で護れた可能性が僅かにでも… それ
が犯人の殺傷も含めて… 上がっていた事実がある以上、丸腰という装備判断
をした事を私は悔いていただろう。
 
 何やらまたぞろ法規制だのと言われているが冗談じゃぁない。
 
 百円ショップで売られている包丁が使用されたら全面販売禁止になるか?
 
 確かにある種の道具は対人殺傷目的の為に設計され製造され販売をされるが
犯罪者からの護身の為でも対人殺傷能力は必要だろうが。まして、常に警官が
警邏している場所ばかりでもないというのに…
 
 
 
 私は、外さないし、捨てない。
 
 今後も、自分がその道具を使用すべき時に躊躇い無く使用出来るという判断
が出来て、その目的の為に使用出来るだけの体力と反射速度のある限り。そん
な事態に遭遇する可能性はあまり無いが、しかし今回の旅行の予定が落語会等
の都合で決めただけで、もし日曜日に特に無ければ私は今日、秋葉原にいた。
単なる偶然、結果でしかなく、その僥倖がいつも、今後も続くワケなぞ無いで
はないか。