『The Game Plan (Widescreen Edition) (2007)』

 
 ボストンのアメフトチーム”レベルス”のQB・Joe Kingman (Dwayne "The Rock" Johnson)は優れたプレイヤーで人気者だが仲間から忌み嫌われている程ではないのだが必ずしも心からの信頼をされているという訳でもないという現状に気が付いていないくらの自己中心的な性格で。チームは彼の独断的なプレーでの勝利も少なくない一方でチームとしてのまとまりに欠けるが故に今ひとつリーグ優勝にまでは至らない情況ではあるが、豪邸に住みパーティに明け暮れ何一つ不自由しない独身生活を堪能してはいる。飼い犬のSpike (Tubbs)との生活にふと物足りなさも感じてはいるのだが… という彼の元にある日、小さな女の子がやって来る。Peyton Kelly(Madison Pettis)と名乗り、
「お母さんがアフリカで井戸を掘るボランティアに行く事になったからお父さんの所に来た。」
 と言うのだが…

 
 映画が娯楽である以上、どれもこれもカッチリと作る必要は無くそれこそ地上波だかで途中CMでバカ スカ間が開いたくらいなのをダラダラと何かをしながら観るくらいが丁度いいってブツも必要で、本作もそういう映画でしたわ。実際、ちゃんと向き合って観ようとすると実に杜撰だし映画ならではの画面が無い作品なんで肩透かしになるやもしれませんけれども、ユルく軽く明るい気分になりたい時に適当な気持ちで観れば楽しめる作品で私も笑ったりもしましたから。
 これが”The Rock”名義最後の映画、って事らしいんですが本作ではWWF時代のロック様を彷彿とさせるエンターテイナーっぷりが遺憾なく発揮され、エンドロール前のスタッフや出演者らによる『ブルース・ブラザース』ばりの熱唱シーンまで実に楽しげでありましたからその雰囲気を楽しむって鑑賞なら十二分にその期待には応える出来だと思いますよ。
 
 でも「映画」としては… ちょっと杜撰なんで購入のオススメはしませんが。
 
「親と子の関係の構築によって主人公も子供も成長して輝かしい結果を出す」というこのテのお話は既にゴマンとあってベタベタな王道物とも言えますが本作もそういう作品の1つなんだけどもどうにもスッキリしない澱みと言うか濁りがあって、それを手繰っていくと結局
「物分りが良くて頭も良くてずば抜けた才能もあって子供だけでなく皆からも愛され好かれる上に自分を真っ直ぐ必要とし愛してくれる娘っていいよね。でもボクはもっと物分りが良くて頭も良くてズバ抜けた才能と能力もお金もあって子供だけでなく皆からも好かれ愛される人間だけどね。」
 ってお話の構図だと感情移入とか共感のしようも無いんでもぅひとつ盛り上がらんのですよ。
 それもまた映画の嘘、お話ってキッチリ、カッチリやってくれりゃぁ良かったんだろうけど、本作の場合は結構杜撰で娘が唐突に尋ねて来たその日にもぅアッサリ関係構築、チョイとしたイザコザはあっても基本的には父親の言う事は素直に聞いてくれるし、大した事はしてなくとも娘が尊敬し必要としてくれるから主人公の内面の成長は実質無いし周囲の人間の成長も無い。親子の関係が「出来のいい子供と出来の悪い親」でも「出来の悪い子供と出来のいい親」というタイプじゃなく「出来のいい子供ともっと出来のいい親(自分)」ってのだから成長ではなく協調、ってのかもしれんが… あくまでも親の方が強く、立派で、聡明で、才能も人気も収入もあるって情況が全く揺らぎもしない中でのエピソードの展開は構成がベタっかオーソドックスだからこその笑いなりがあってもあくまでもそれだけ、ってのは言い過ぎかなぁ… だけど落差や緊張があるからこそ越えた時の達成感や弛緩した時の解放感もあると思うんですけどそういうのが無いからどうしても笑いの沸点もある程度以上には上がらないんですよね。
 
 それを差っ引いてもこの映画って杜撰で、舞台がボストン、Joeがエルビスが大好きって設定、そもそもアメフトを題材にする・アメフトでなければならない理由もわざわざ架空のチーム名にする必要*1も必然性も無いんですよ。特にアメフト、あの面白さと言えば攻防それぞれにあるものだし、試合と情況を対比、比喩にするのなんて過去いくらでもやってるじゃぁないですか。ところがそういう事は一切しない。ひたすらオフェンスシーンばっかりで構成されてる上に試合シーンも殆ど無くて、
「いやコレだったら別にアメフトじゃなくても、団体競技でゲームの勝敗が得点する事ってのでいいんだったらベースボールでもフットボールでもバスケットでもアイスホッケーでもいいんじゃね?」
 としか思えないんですわ。
そうやって1つ1つの設定と説明と展開が駄目だからエピソードが垂直ではなく並列に羅列される感じであまり時間経過になってないのもあって色々やるワリにどれも唐突な印象で、マァ言い方は悪いんですけどTV的ってんですか? 一本の映画としてつらっと観るよか間に適当にCMが入ってる方が… そう言えば画面構成も映画ってよりはTV的な、それも今の日本で氾濫しているTV局が企画制作した特番物のようなアップ多用だよなぁ… スケール感のある映像って特に無かったよなぁ… って思っちゃうし、何のかんのと言ってディズニーのファミリー映画ってぇと観ないで馬鹿にする人もいるやもしれませんが個人的にはとってもベタであろうがそれに徹して堂々と作り上げてる事には好感がありましてな、家族映画なら『THE PACIFIER (2005)*2』や『SKY HIGH (2005)』、スポーツ映画なら『MIRACLE (2004)』とかベタだけどもそのベタさを丁寧にやるからこそ観るコチラもアレコレ考えずに素直に盛り上がれたもんで本作もそういう期待もあっての購入だったんですが、それらの作品と比べるとあちらこちらが杜撰であるが故に散漫になっててシーン単位での良さはあっても映画としては… 勿体無いなぁ… 、っと。
 
 ですんで【”ロック様”としての最後の映画】って事でなら楽しめると思いますが、それ以外の人にはあんまりオススメする気にはなれないなぁ… っとな。いやまぁ雰囲気の明るさとか楽しかったんですけど、ね。
 
 
 
 …って事で以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『The Game Plan (Widescreen Edition) (2007)』 - Region 1
 
 Studio: Walt Disney Video
 Theatrical Release Date: 28 September 2007
 DVD Release Date: January 22, 2008
 Run Time: 110 minutes
 
 Aspect Ratio: Widescreen - 2.35:1
 Available Subtitles: English, French, Spanish
 Available Audio Tracks:
 English, French, Spanish - Dolby Digital 5.1 Surround
 
 Special Featuers:
 ・ Control the mood lighting in Joe Kingman’s apartment
 ・ Peyton’s Makeover Madness Set-Top Activity
 
 ・ Deleted Scenes
 ・ Bloopers With Marv Albert
 ・ Drafting The Game Plan Behind-The-Scenes Featurette
 ・ ESPN’s SPORTSCENTER The Rock Learns To Play QB
 ・ ESPN’s SPORTSCENTER DVD/Blu-ray Exclusive: The King In Search Of A Ring
 ・ Sneak Peeks

 

 
 最近紙製のアウターケースが付属するモノがチラホラとあるんでしょうが、ぶっちゃけケースとの遊びにもなってないんじゃぁそない面白い試みとも思えないんですけども… ってのはさておき、
 
 画質はドラマ部分と試合シーンとの画質をわざと変えてあるのも込みで「普通」。
美麗とも思わないけれども汚いとも思わない程度だと思いますし、特に色合いの協調とか加工をしているタイプの映画ではないんで特にこれで問題は無いかと。
 音質も「普通」で、特に良いとも思わないかわりに悪いとも思えませんでした。まぁ個人的には音響効果に乏しい… あんまり空間を感じれない… 感じになってるのはちょっと勿体無い気もしましたが。
 
 特典もそれなりに数はあれども… ってトコですかね。
「Control the mood lighting in Joe Kingman’s apartment」は本編に倣いメニュー画面を三種類の色合いとBGMに変化させられるというもの。
「Peyton’s Makeover Madness Set-Top Activity」は、そのメニュー画面内にあるいくつかのアイテムを劇中のPeytonちゃんがやったようにデコレーションしようというもの。3種類のパーツと3色の組み合わせで飾りつける事が出来、その出来をPeytonちゃんが音声で評価してくれます。
「Deleted Scenes」は文字通り削除されたシーン、ですが… 尺の都合で切ったんでしょうが、キャラクターの説明も兼ねたこれらのエピソードこそ残すべきではなかったのかなぁ?と思わなくもない物が多かったですわ。ただまぁこの内容の映画で2時間以上になられてもなぁ… っと思わないでもないんですけども。
「Bloopers With Marv Albert」はNGシーン集ですが、司会役にESPNのキャスターMarv Albertを起用してのもの、ってのがちょっと変わってますかな。
「Drafting The Game Plan Behind-The-Scenes Featurette」はスタッフ、キャストらによる撮影風景集。楽しそうな現場なのと、競技場にたったあれだけの観客役エキストラで充分だというCG特殊効果には驚きましたね。
ESPN’s SPORTSCENTER The Rock Learns To Play QB」は"The Rock"以前、プロフットボール選手ではあったもののDT等でありQBの経験の無い彼氏に対する【QBとは何ぞや?】のレクチャーを収録したもの。
ESPN’s SPORTSCENTER DVD/Blu-ray Exclusive: The King In Search Of A Ring」は本編の最初の方で使用されたフェイク・ドキュメンタリーの素材。ただ本編では自己中心的でエゴイストな俺様って要素をかなりカットしてしまったんでちょっとズレがあるように思えるのだが…
「Sneak Peeks」は本作以外のディズニー社のソフトとこれから上映される作品の予告編集。
 
 …って事で、
 
 何でこの映画の予告編が収録されていないのかよぉ解らんのですが、数はそれなりにあるものの、本編同様にもひとつ、このDVDソフトならではの目玉やウリといったものは無いような。それでも現時点では"The Rock"名義主演映画の中では一番マシな出来だと思いますし、何よりもあの大きな顔と口での表現力といい期待と集中をしないで観なければ楽しい作品だと思います。まぁ購入はオススメはしませんが、"The Rock"ファンだった人ならレンタル視聴なら期待と予想通りの楽しさを得れると思いますよ、っと。
 

*1:まぁ実名を使用するとお金がかかる、ってのはあるのかもしれませんが、中小のプロダクションじゃぁあるまいし… そないなトコをケチる意味も無いと思うんですけども。

*2:『キャプテン・ウルフ』って頭の悪い邦題は本当にどうにかならんものか。