『Jhoom Barabar Jhoom (2007)』

 
 混み合うロンドンの駅。バーミンガムからの列車はかなり遅れてまだ着かない中、Rikki(Abhishek Bachchan)とAlvira(Preity Zinta)は時間潰しにと訪れたカフェで出会う。時間は遅々として進まず、仕方なくお喋りをする事になるが二人にはそれぞれ婚約者がいて、まさしくお互いとも遅れた列車に同乗している婚約者を迎えに来ている事を知る。退屈な二人はお互いの婚約者との出会いを語り始める。
 Rikkiの婚約者は仕事先のフランスで出会ったAnaida(Lara Dutta)。繊細かつ聡明なリッツ・ホテルの女支配人としてバリバリ働くキャリアウーマン。Alviraの婚約者は大金持ちの弁護士Steve(Bobby Deol)。知的かつ情熱的でワイルドな男。っと、それぞれ自慢の出来る婚約者である筈なのだが
「もしこの電車でAnaidaとSteveが出会っていたら… いや、俺達がもし婚約者がいない者同士で出会っていたのなら…」
 と言ってみるRikkiにAlviraも満更ではなく、お互いに惹かれ合ってはいるのは解ってはいたものの電車が到着するアナウンスに電話番号を交換して分かれる二人だっがRikkiが出迎えたのは叔父さんで、Alviraが出迎えたのは女友達で… そう、お互いに婚約者がいるという嘘を最初についてしまった為に後で本当の事が言えなかったのだ。
 
 相手への想いを捨てきれない二人はひょんな事からTVの素人参加ダンスコンテスト番組で会おうと決めるが、お互いに最初についた嘘の婚約者の事がある。仕方なくAlvira眼鏡屋の気弱なマザコン男Satvinder(Bobby Deol・二役)を、Rikkiは勝気な街の売春婦Laila(Lara Dutta・二役)をそれぞれの婚約者に仕立てて会場に向かうのだが…

 
 私が一番好きなインド映画は『Bunty Aur Babli (2005)』でございましてな。やや蛇足部分がアレではございますが心情描写と情況進行のミュージカルシーンの綺麗さ&アップテンポでサビのメロディがキャッチーな楽曲、ボーイ・ミーツ・ガールのシンプルな物語骨格なれど「人は人に出会う事によって変われる」というのを芯に据えつつも娯楽作品として楽しく、明るく、カラフルに築き上げた作品でもぅ何度も観直しているんですけども、その監督Shaad Aliの最新作、って事でDVD化を待っていたんですが既にインド国内での興行成績はFlopという結果に終わって迷ったんですが結局オーダーしちゃったのはこの監督ならではの構図やカッティング、色彩感覚が好きなのとやはりこれがコメディであるってのが大きかったんですが… 観終えた結果としては「もひとつ」。
 一番の理由は「脚本がグチャグチャ」。
インターミッションまで二人の嘘の婚約者話がずっと続くとは思わなかったんですが、これが兎に角長い。しかも無駄なんですよな。またお互いの嘘の婚約者の名前の由来をEDロール前に明かすってのも順序としてはおかしいし、人物の出し入れの仕方もとっ散らかってるんでもちっとこれを何とかしてくれたら… それこそインターミッション前にもぅ嘘の婚約者の種明かしをして一旦別れるってのにして後半は互いのすれ違いっぷりをもぅ少しやってただけでも大分印象が違う気がすると思うんですけども。あと、謎のヒッピー役のAmitabh Bachchanが出過ぎなワリに何の意味も必要も無いんですごく散漫になっちゃってるんですよな… これも出すなら最後だけとかにした方が『Bunty Aur Babli (2005)』におけるAishwarya Raiのように凄く印象的になったと思うんですけどね… っと、まぁ何がしたかったのかよぉ解らん物になっちゃったのはもぅ脚本の整理不足による混乱でしょうて。
 二番目は「キャスティングの失敗」。
主役はAbhishek BachchanとPreity Zintaの二人なんですが、明らかにBobby DeolとLara Duttaの方がダンスが上手いし画面での存在感もあるってのでは。昔に比べればAbhishek Bachchanはダンスが上手くなったとは思うのですが体が堅く特に膝の使い方が不味いんで動くワリに棒立ちの印象が強いんですよな。それに対するBobby Deol、派手さを抑えてはいるんですがメリハリと無駄の無さもさる事ながら上半身の厚みがいい感じで集団のシーンになっても埋没しないんですよな。Preity Zintaも悪くは無いんですが膝と腰のバランス感覚でLara Duttaの方が優れている分だけ表現力、特に空間の取り方、使い方で差がついちゃってるのが丸見えになるしで主役らのダンスシーンが余計に印象が薄くなっちゃうんですよね…
 で、三番目は「ミュージカルシーンの必要性が薄い」。
PVとして観ればイギリスやフランスでのロケと多分現地のダンサーさん達も大勢使ったもので豪華なんですが、入り方とシーンへの戻り方も雑なら… 特に気弱なatvinderが何故か曲がかかるとトップギアで踊りまくってるのは不味いでしょ。そういう面もあるってエピソードも無かったし… 情況説明になっていないのが多いんですよな。心情描写としても経過しないものなのでストーリー的に全く進行してないんでミュージカルシーンは停滞した印象になる上に、先にも書いた脚本の整理不足に主役らのダンスの説得力の無さも加わって見栄えはある程度するものの必要性をあんまり感じれないんですよな。
 
 意識的にオーケストラスコアを使ってみたりEDロールがNG集になってるトコや、Rikkiの携帯の着信ボイスが前作のAishwaryaの「Hey Handsome」だったり、私は未見なんですがAlviraと違って映画好きの両親が彼女につけようとした名前がMadhubalaやSadhnaという1960年代のインド映画の有名女優さんの名前だったりって小さいネタや、これまた私は未見なんですがRikkiとSatvinderが二人でAlviraを探すシーンは音楽まで彼らの父親達、Amitabh BachchanとDharmendrが競演したという『Sholay (1975)』のまんまなんだそうで… って細かいネタ的な部分の遊びや大胆なセットと配色、『Dhoom2 (2006)』と違ってビッチ系ではない地に足がついていてもお洒落なファッションといい映像は私好みなんですがしかし映画として何をやりたかったのか、何を伝えたかったのか? ってのがボケていてはねぇ… Rikkiがロンドン在住のインド人でAlviraがパキスタン系イギリス人って設定も特に意味が無いし、寓話や御伽噺ってやっぱ警句なり世間知の無いとただの馬鹿話にしからんのではないかと… ベタな悲劇にしないし何のかんのとハッピーエンドってのは好きなんですけど、ね…
 
 
 
 …って事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『Jhoom Barabar Jhoom (2007)』 - Region All
 
 Studio: Yas Raj Films
 Theatrical Release Date: 15 June, 2007
 DVD Release Date: 30 July, 2007
 Run Time: 132 minutes
 
 Aspect Ratio: Widescreen - 2.35:1
 Available Audio Tracks: English − Dolby Digital DTS, 5.1, 2.0 Stereo
 Available Subtitles: English, Arabic, French, Spanish, Dutch, Portuguese, Tamil, Malayalam
 
 Special Features
 【DISC 1: THE FILM】
 ・songs(10)
 【DISC 2: SPECIAL FEATURES】
 ・Making of the Songs (23:46)
 ・Song − Jhoom − Full edit without any breaks (5:26)
 ・Song − Jhoom Jam − Full screen edit without end credits (3:03)
 ・Deleted Scenes (6:45)
 ・Theatrical Trailer (2:16)
 ・Television Promos (4:09)
 ・Forthcoming Attraction (6:02)

 

 
 え〜このDVDはYas Raj Films社オフィシャルから購入したUK版なので他の版がどうなっているかはよぉ解りません。インド映画のDVDを購入なさってる方なら当然承知の事でしょうが、別の国版だと微妙に違う事もあるんですけどそこまでは関知出来ませんので悪しからず。
 
 細身の紙製アウターケースからこれまたスリムな本体ケースもお洒落な仕上がり&収納スペース的にも嬉しいものでありますが一面に2枚重ねというディスクのセットの仕方は個人輸入ん時にはズレたり外れたりしそうでやや不安やもしれませんが。
 
 画質、音質共に良好。Yas Raj Films社らしい色合い、発色、シャープさといい問題なぞ無い非常に高品質なものではないかと思います。
 DVD特典はご覧の通り音楽が中心となっておりまして前作のような映画のメイキングや監督らのインタビュー等はございません。ちょっと今回の楽曲は私の好みではなかったんでこの偏りはちょっと残念でしたが、曲が気に入った方ならば嬉しい偏重でしょうかね?
 
 ソフトとしては悪くないブツだとは思いますが… まぁどうせ購入するなら個人的には本作よりは矢張り前作『Bunty Aur Babli (2005)』の方が映画としてもソフトとしてもオススメしたいんですけどね。あえてオススメはしませんが… ってトコで。