『Dhoom:2 (Collector's Double DVD Pack) (2006)』

 
世界の様々な美術品、貴重品を様々なハイテクを駆使して軽々と奪う謎の怪盗。現場に残されたカードにはただ「A」とだけ記されている事から警察は「A」と呼んでいた。
刑事Shonali BoseBipasha Basu)は大学時代の同級生・前作『Dhoom』の警部Jai Dixit(Abhishek Bachchan)、Jai の右腕の警官で前作のバイクレーサーだったAli(Uday Chopra)と共にMr. Aがムンバイで仕事をすると読むもMr.Aの狙いを読み間違えてしまいダイヤを奪われて、追跡するも及ばずまんまと逃げられてしまった。
 ムンバイでの仕事を終えてインドを去ろうとしていたMr. AだったがTVでAが次の犯行予告… ある城から貴重な宝剣を盗み出す… を出した事を知る。偽Aの出現にMr. Aが、TVでの犯行予告を知ったShonali、Jai、Aliもその城に向かいAを待ち構えるるもの、宝剣は盗まれMr.Aによって偽Aにも逃げられてしまう。
 偽AはSunehiri(Aishwarya Rai)という美女で、Mr. Aに共に泥棒をしようと提案する。今まで一人きりで仕事をしてきたMr. Aは初めは拒否するものの、次第に打ち解けコンビを組む事になるが実はSunehiriはJaiが送り込んだ元・泥棒の囮捜査官だった…

 
 インド映画の最新作、11月末公開ながらインド国内のBox Office 2006でRank 1のBlockbuster、Top Earners All Indiaでも堂々のRank 1、という怪物的ヒットを今も続けている作品、ってのもありますが、前作『Dhoom』が多少のリアリティは無視してカッコ良さを追求した娯楽作品だったので楽しみにオーダーしたブツでありましたが… まぁ結論から言えば「あきませんでした」。
 
 一作目より出来のいい続編なんて『ターミネーター2』とか数える程しか無いのは『スクリーム』だかでも言ってましたが、予算も手間も増えて派手になった反面、デティールの甘さも増大、ってのに加えてストーリーがてんでバラバラなもんだからシーン単位ではいいものがあっても私には一本の映画の体を成せれなかった、非常に勿体無い作品だとしか思えませんでしてね…
 
 デティールの甘さから言えばまず「CG」。
冒頭の砂漠を走る列車の屋根の上でのアクションから顕著で、カット単位で屋根の上の人の大きさが違うのはいくら何でもそりゃ不味いんじゃぁないかと。多分、CG合成と実際にやった部分と混ぜた結果なんでしょうが、こういうのはちょっといただけませんが、全般的にCGエフェクト部分がパーツ単位ではよく出来てはいても組み合わせが甘いんでリアリティに繋がらない、と言ってわざとコミック的な表現or味になってるか?と言うとそうでもなく… ってのでは。
 次に「銃器」。
何発撃ってんだよ!ってのは突っ込まないにしても、軽々しく冗談で人の顔に銃口を向けるのなんてあり得ませんっての。せめてハンマー起こすくらいにしたって充分なのに… あとシーンによって同じ銃なのに排莢してたりしてなかったり、とかカッコイイを目指してるワリにこういうツメの甘さで台無しになってるんですよ。
 んでもって「バイク」。
どう考えても曲がりくねって塗れた路面のトンネル内で200kmはあり得ません。そんなスピード表示を出さなくったって充分アクションシーンとしてカッコイイのにそんなあり得ない数値を頻繁に入れるから冷めるんですよ。更によく足元のクラッチペダル?のアップが入るんですがカムチェーンが止まってるって…
 
 っと、私はあんまり細かいトコをどうこうと突っ込み入れながら映画を観る方ではなく、多少のアラやミスやおかしいトコがあってもテンポや見せ方さえ良ければそれで良し!って思う方なんですが、そんな私でも明らかに間違っていてダサイのに「それがカッコイイ!」って形で見せられたら「そりゃちゃうでしょ」ってなりますってぇの。
 
 そしてストーリーがねぇ…
基本がMr.Aと偽Aの恋愛、ってのはいいんですが、Mr.Aの人物像をちゃんと描いていないから恋愛の進行と心象の変化が納得出来ないんで感情移入が出来ないんですよ。Coolな怪盗って点はよく出てましたが、必ずしもMr.Aが魅力的な人間としてのエピソードが無い。核っか今回の芯がそれではなぁ…
 それと無駄なエピソードが多過ぎ。
Jaiと彼の出産間近の嫁さんとのウダウダなんか途中で全く触れられなくなって最後までスルー(もぅ倦まれてるよなぁアレ)、ってストーリーに必然性が無かった、ってのならShonaliが双子である必要もこれっぽっちも無いしその双子の妹とAliとの恋愛なんてこれまたちっとも必要じゃぁない。
 もちっと言えば切れ者である筈のJaiが結果的に抜けてる… 冒頭の登場での銃撃戦でAliが残弾を残しながら撃ってるのに対して撃ち切ってる、とか、ムンバイでの読み、とか… んだけど、劇中の画かれ方はAliがただのお調子モノのままでJaiはイカしたヤツ、ってのも含めて人物が決して多いとは言えない作品なのにいまいちキャラ立ちが出来てないんでノれねぇんですよ。
 前作の場合、JaiとKabir(John Abraham)は警官と犯罪者という立場は違えども似た者同士… 生活や社会よりも己の嗜好、趣味として通じていて… ってのが巧く生かされていて、だからこそ対決をするという物語になっていたのを思うとキャラ立ちが甘いわ人物造詣も緩いわで似た者だけども結果として追う者と追われる者との対立も描けれなかったらラストに収束しないんですよな…
 これなら前半をMr.Aの人物像にみっちり当てて偽Aとの出会いと恋愛をやってインターミッション前のあの映画館のトコでJaiが! ってした方がよほどスッキリ良くなったんじゃぁないんでしょうか。
 
 現在も興行収益を上げている作品である、って点から言えば 本作は今のインドの人にはとてもカッコイイ作品、面白い作品って事なんでしょうが、ミュージカルシーンの入り方と終わっての次のシーンの繋ぎ方といい、どうにも私にはあきませなんだ。
 インド映画界の勢いや流行とか、今を知るのにはいい映画だとは思うんですが… しかし何年か経って果たして振り返るだけの作品か? ったら微妙だと思うんですよね、私は。この映画で誰も印象に残らなかったし、役にしても必ずしもこの役者でなければ!ってのでもなかったし、前作の『Salaame』のようなキャッチーな曲も無し。娯楽として今、消費する為の作品ってのもアリだとは思うんですが、それにしたってこうもグダグダではなぁ… っと、かなり厳しい感想になりましたが、これで観るべきモノが何も無いってのならハナからここまで書くこたぁしませんっての。あとちょっとデティールに拘り、もぅちょっと脚本を整理し再編していてくれたらスカッとイカすアクション映画になっていたであろうと思うからで… アクションシーン単体とか思わず「おぉ!」ってくる部分はあるんですよ… もし次回作があるならば、せめて脚本家の人にはもうちょっと勉強して欲しいですね… 
 
 
 
 …って事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ
 

 
・『Dhoom:2 (Collector's Double DVD Pack) (2006)』 - All Regions
 
 Studio: Yash Raj Films
 Theatrical Release Date: 24 November 2006
 DVD Release Date: Jan 13, 2007
 Run Time: 147 minutes
 
 Aspect Ratio:
 16:9 Anamorphic Widescreen (2.35:1 Aspect Ratio)
 Available Subtitles:
 ・International: English, Arabic, French, Spanish, Dutch, Portuguese
 ・Indian: Kannada, Malayalam

 Available Audio Tracks:
 ・Dolby Digital 5.1 Surround - Hindi
 ・Dolby Stereo 2.0 - Hindi, Tamil & Telugu
 
 DISC 2: SPECIAL FEATURES
 ・Master of Disguise (5) - (5:04)
 ・Story Board to Screen - (8:32)
 ・D:2 Fashion Special - (7:32)
 ・Deleted Scenes (2) (4:05)
 ・Songs -
“Dhoom Again” Music Video (5:41)
“Crazy Remix” Music Video (3:04)
 ・Television Promos (6 (3:35))
 ・Theatrical Trailor (2:06)

 

 
 私が購入したのはYash Raj Films社のHPから購入したUK版なので他のメーカーの版については特典とかに違いがあるかもしれませんが御容赦をば。あ、UK版ってもNTSCなんで普通の日本国内のプレイヤーで再生出来ますよ〜
 
 紙製のジャケットから一方のプラスチックトレイを引き出す事でもぅ一方のトレイが引き出る、という仕掛けになってる面白いケースに本編ディスクと特典ディスクが収録されています。まぁ実用的では無いんですが、こういう仕掛けは仕掛けでアリかな? っと。
 
 本編ディスクには「All Play」「scene」「Subtitle」「Audio」「Song」だけで特典は一切ありません。
 
 画質は良好だと思います。
シーンによってデジタル着色やエフェクトを追加したり等の量によってか時々デティールが甘くなる時もありますがこれはオリジナルがそうだからなんでしょうしノイズや歪があるでもなく遠しで言えばシャープで観易いんで良好ではないかと。
 
 音質は良好。
ただ音量とバランスが若干悪いような感じで… シーンによって音量が微妙に上がったり下がったりしてるような気がしなくもなかったのと、左右への振りがちょっとぎこちなかったような?… しかしこれもオリジナルがそうなんでしょうからノイズや極端なバラツキではなかったんで良好っと。
 
 さて特典ディスクの中身ですが… これはちょっとイマイチですかね。
「Master of Disguise」はリティックが変装する人物の特殊メイクの映像ですが、特にリティックのコメントや特殊効果さんのコメントがあるワケでもないモノなんで「へぇ〜」って以外は特に無いかと。
「Story Board to Screen」は5シーン程、絵コンテとCGコンテと実際の映像を見せるだけのもので特に監督さんのコメントも解説も無いんでこれまた「へぇ〜」ってだけでした。まぁCGコンテのあまりな出来(『Ong-Bak』や『Born To Fight』]に収録されてたのと比べると冗談抜きでよくもまぁこんなんコンテにしたよなぁ… って思うですハイ。デビット・フィンチャーとかのと比べたらもぅねぇ…)で、実際のシーンとかなり違うのが見所なのかもしれません。
「D:2 Fashion Special」は劇中の衣装についてAishwarya Raiら俳優さん達やデナイナーが語るというもので、生活感を排してキャラクターとして似合うってコンセプトに徹底してたってのがよく解りますが、その衣装を生かすも殺すも実際の劇中の使い方で… とかって点で個人的にはこれが一番面白かったかな。
「Deleted Scenes」は2つ。ブラジルに乗り込んだJaiとAliの空港でのギャグと、ってのですが字幕が無いしまぁどうでも良かったです。実際、カットしたシーンってもっとある筈なのを思うと何故にこれだけ、たった2つだけが収録されたのかよぉ解りません。
「Songs」は「Dhoom Again」のノンテロップ収録をするのならエンドロールのもWidescreenノンテロップ収録して欲しかった。「Crazy Remix」は劇中シーンを入れたPVだったのを思うと、ちょっとこれも食い足りないっす。
「Television Promos」「Theatrical Trailor」は題名まんまです。
 
 インド映画において監督や脚本家は俳優さん達より軽んじられているのかもしれませんが、個人的にはもうちょっと、本編メイキングに関する部分… 海外ロケとかダンスシーンとか… を収録して欲しかったですね、って事で今はこのCollector's Double DVD Packしか無いようですが、あんまり特典ディスクに魅力が感じれませんでしたね… そりゃまぁ特典ディスクなんて何度も見直すもんでもないんでしょうが、同社の『Bunty aur Babli (2005)』と比べると収録時間の短さといいちょっと落ちる、っか無理矢理つけたっかそんなに必要じゃないじゃんコレ? ってんではないかなぁ… っと。