『Hadh Kardi Apne (2000)』

 
 Mr. Khanna、奥さんAnjaliは共に別れたくて離婚裁判に臨むものの、双方共に自分に有利な結果が欲しいものの決定的な材料が無い為に裁判は膠着、裁判長に「次回の審判は一ヵ月後。それまでお互いによく話し合いなさい」と言われてしまう始末。弁護士にデッチアゲでも何でもいいから浮気の証拠をと言われてMr. Khannaが思い出したのが親友の探偵Raj(Govinda)。
 一方、奥さんも弁護士のアドバイスで旦那の浮気現場等の証拠を… っと思うものの、同じインドにいては相手も警戒するだろうという事で自分と同じ名前の友人Anjali(Rani Mukherjee)を影武者にしてヨーッロッパ周遊バス旅行へ参加させ自分は身を隠す事にすると、案の定それを知った旦那側はRajをそのバス旅行に潜入させる事にした。
 しかし、空港でうっかり奥さんの写真を落として失くしてしまったRaj。とりあえず適当な女性を奥さんだと決めつけ調査する事にしたのだが…

 
 …という勘違い&すれ違いの恋愛コメディ映画。
当初はたまたま席が隣同士なだけで(実際は手配されたものだから偶然ではない)、お互いにイケ好かないと思っていたRajとAnjaliが段々と惹かれあうのが… というメインをサブのドタバタで進行するという形式、主演のGovindaの無駄な一人何役や英語&ヒンディ語混成のマシンガントークといいインド版エディ・マーフィーと言ってもいい活躍とRani Mukherjeeの可愛らしさはギャグ部分でドリフのコントか80年代の香港映画のような効果音を鳴らす手法の古臭さのワリにスンナリと最後まで観れる程度に悪くない出来の映画だと思いましたが、映画としても、インド映画としての面白さにはちょっと足りない一品ではないかと。
 
 映画としては「登場人物の設定曖昧」。
例えばRani Mukherjeeが演じるAnjali、お父さんが薦める見合いには反対なんだけど、さりとて恋愛にも懐疑的というキャラの説明が無いんで中途半端。(当時は)現代的気質として説明不足だったのかもしれないけど、打ち解けるまでの長さのワリには… まぁ全体的に彼女側のエピソードが少ない&弱いんですな。
 次に「登場人物の必然性」。
Johnny Leverが一人二役で演じるそれぞれの弁護士とかご都合主義でも上手く出し入れする一方でバス旅行の他のメンバーにあまり意味が無い。特にある夫婦の知的障害者の息子なんぞストーリーだけでなく何のギャグも無いのに出てるのは邪魔なんだが… 画面に出るだけでウケるのかなぁ… とか、キチっと後でもハマる人物がいる一方で結局何の関係も必要も無い人物がチラホラいるのが無駄になっていて勿体無いなぁ… っと。
 そして「画面が貧相」。
仕方ないにしカッティングも全体的に野暮ったいのは仕方ないにしても、折角のヨーロッパロケをしてる筈なのに、ちっともヨーロッパらしく観えないってのはどうかと。じゃぁインドでのや他の画面がいいか? っ〜っとそうでもなし、セットが多いんだけどワリに小さいものが多いんで折角のお話のスケール感が無くてねぇ… っとな。
 
 そしてインド映画としては「インドらしくない」。
楽曲がポップスばかりなんだけど、どれも単調で盛り上がりに欠ける構成で。その分、振り付けが頑張ってくれればいいんだけど、これも全体的にやっつけ感が漂うものばかりで、GovindaもRani Mukherjeeもダンスが上手いのを知っているだけにそれが全然そうは見えないダルダルな振り付けになってる上にバックを現地の人を使っているせいで折角のダンスシーンがダサイことこの上もなし。二人が思慕を抱きつつの空港での別れからの「OYE RAJU PYAR NA KARO」はイメージシーンとしてよく出来ていたんですがそれ以外はなぁ… 観光地でのミュージカルシーンならバスに乗客は他にも二十人くらいいるのに結局8人くらいで、だし、結婚式の場面なんか他のインド映画だったらもっと気合入れて豪奢になってる筈なんだけどそうじゃぁなくてねぇ… IMDBだかAmazon.UKだかのレビューで
「お金がかかってないけどいつものGovindaのコメディ映画」
 ってのはシンプルだけど適切な表現だと思いましたよ。
 
 まぁ長々と残念だった部分を書きましたが、コメディ映画としての出来はそんなに悪いもんじゃぁないんで「惜しい」って気分なんですよ。これより酷い・適当・いい加減な作品なんていくらでもあるんですが、この作品ならではの、この作品でしか味わえない面白さがあるか? っとなると微妙なんですよな。また一発、観てるこっちを掴むような画や曲があるならばまだしもそうでもなし。映画作りという点での水準の高さは感じられたものの… もちっと撮影時間と予算があったらもっと面白いインド映画になれたろうになぁ… っと私が思う「惜しい」映画でありましたな…
 
 
 
 以下はこのDVDについての情報なので興味がある方だけ

 
・『Hadh Kardi Apne (2000)』(PAL) - ALL Regions

 Studio: Eros International Ltd
 DVD Release Date: 13 Dec 2004
 Run Time: 133 minutes
 
 Aspect Ratio: Widescreen
 Available Subtitles: English
 Available Audio Tracks:
 Hindi (Dolby Digital 5.1 Surround)
 
 DVD Features:
 ・SELECT SONGS (7)
 ・OTHER ATTRACTIONS

 

 
 まず画質については「並の下」。
とても6年前の作品とは思えない、マスターの保管の酷さがよく出ていておそらくリール単位と思われる程に良い部分と酷い部分とが混在してますが全体的には色褪せ具合とシャープさクリアーさといいあんまりいい画質とは思えません。フィルムのノイズもかなり散見できましたな。
 音質は「並」。
画質に比べればマシではありますが、録音状態の問題からかややクリアーさに欠ける気がします。全体的に台詞部分が潰れた、濁った感じがしますかな…
 んで英語字幕ですが、「難アリ」。
かなり英語とヒンディ語を混ぜた台詞回しなんですが、英語で喋る部分は殆ど英語字幕無し。ヒンディ語の英訳はワリと平穏っか解り易い翻訳になっている反面、台詞が多い場面での端折り&香港映画ばりの表示の速さが… ってのはまだ予想の範囲内だったんですが歌の翻訳が出ないってのはどうかと。心情や情況、そしてのれらの進行を現すミュージカルシーンで何を歌ってるのか解らない状態になるのは困るですよ。
 
 特典はミュージカルシーン部分だけを連続再生も出来る「SELECT SONGS」は非常に便利です。インド映画のDVDには標準装備らしいんですが、こういうのは有難いですよな。
 関連商品や発売中、これから発売&公開の映画の映像を納めた「OTHER ATTRACTIONS」もおトクな感じがしていいんですがミュージカルシーンばかりなのでどんな映画か解りません!(笑)
 
 …という事で、ソフトとしてはイマイチ、ですかの。
先日書いた『Aishwarya Top 25』よりは画質・音質・特典どれも全然良好、っか本当に同じメーカーの商品なのコレ?っと思いましたが、本編の出来も合わせて「もうすこしがんばりましょう」って出来ではないかと、ハイ。