『SPRIT』は観ません。

 
 ジェット・リー最新出演作にして最後の主演武道家映画と言われる『SPRIT』、愛国の士であるが故に日本人に毒殺された、というお話になっている武道家霍元甲(フォ・ユァンジア)… ブルース・リーの『ドラゴン 怒りの鉄拳』で殺される武道家ですな… を、『HERO』『LOVERS』という中国共産主義肯定プロパガンダ映画のプロデューサー陣が、って時点で既に『Tom-Yam-Goon』を観た私には古臭い臭いを感じなくもないけれど、しかし『少林寺 (1982)』をリアルタイムで劇場で観て、ジャッキー・チェンではどうしても足りない武術的な動きを、それも特上のを見せてくれる人としてジェット・リー、いや、リー・リン・チェイとしての彼氏の作品を観てきた私は
「まぁ色々あるようだが、劇場で観ておこう!」
 っと思っておりました。
 
 しかし。
 
「FEARLESS(懼れるを知らず)」という香港英題が「SPRIT」になったのはまぁ日本というマーケットに合わせる為… っと思えばそれ程気にはならなかったものの、香港オリジナル版から3分短い、っというのを香港版DVDを注文した時に知ってガッカリし、海外の宣伝ではカケラも出てない中村獅童を大きく扱ったポスターゲンナリし(海外では元WWEのネイサン・ジョーンズと、ってのが主流)、「泣ける映画」って糞ダサイ宣伝展開にガッカリし、そして今日、なにげなにネットを漂っていたら日本版だけ主題歌差し替えってのを知って流石に劇場に観に行く気が失せました。
 主題歌変更については


SPIRITの魂はジェイ・チョウの霍元甲にある。

 を読んでいただくとして…
 
 これまでも日本語吹替え版に日本オリジナルイメージソングという形でエンディング曲等が差し替えられた例はいくらでもあります。私は字幕派なんで
「まぁ日本語吹替え版に限っては仕方ない、かなぁ… 」
 っと思いつつも、オリジナル製作者達の意図や志を思うと嘘っ八だったり出鱈目な宣伝や字幕同様に苦い気持ちになっていました。しかし、字幕版ですら? っと言うのを知ったらもぅ、あきません。たかが配給会社がしていい事ではありません。思い上がり、冒涜は赦せないんです。
 
 最近、映画館に行くと海賊版撲滅キャンペーンの一環として「映画が汚されてゆく… 」という、非常に不愉快且つ無意味なCMを観させられる事に凄く腹が立っている、という事は以前に書きましたが、これだって充分に映画を汚しているじゃぁないですか。海賊版にお金を払う事が映画を汚す事だと言うのなら、どんな取引、都合かは知らんけれども結果としてオリジナルをイジって改変した映画もまた汚れているんだから、そんなのに金を払う事はしたくないよ。こんな映画を、製作者を、観客を馬鹿にした、舐めた事をする配給会社になんか、ビタ一文とて払いたくなんかないですね。北京語も広東語もカケラも解らん私だが、それでもオリジナルにお金を払いますね…
 
 という事で『SPRIT』は観ません。『霍元甲 −FEARLESS−』を観ます。
インターネットで世界の情報が見れて、現地オリジナルが個人で楽に手に入るこの時代に馬鹿な真似をしてる会社に利する行為は、今後もこんな事をしてもいいと賛成、賛同しているのと同じですから私には出来ません。仮にオリジナル通りに戻ったとしても、それは今回warner.sistersさんらが立ち上がった結果であって、そもそも馬鹿な事さえしなければ良かっただけの話… そう、『ロード・オブ・ザ・リング』『キングダム・オブ・ヘブン』『マスター・アンド・コマンダー』といい、映画ファンが声を上げたからこそ真っ当になった事がもぅ何度もあったんだよ! こんな馬鹿な事、もぅ沢山だ!