「『ブレインデッド』と私。」(映画雑記)

 ホラー映画好きの一個人の見方で… って事で。

 臓物を見せつけた『血の祝祭日(1963)』からスプラッターは始まった、と言うのは定説ですが
個人的に終わったと思ったのは『ブレインデッド(1992)』でしたね… それぞれの時代の到達点
ってのはあって82年の『遊星からの物体X』、83年の『死霊のはらわた』、85年の『死霊のした
たり』らを劇場で観た時は素直に
「あぁ、凄いなぁ(笑)」
 っと笑えていたんだけど、『ブレインデッド』を観終えた時には単にSFXの技術や資金では
なく、映画としての過剰さ、テンポやカメラの躍動感等、それまでホラー映画に漠然と感じてた
不満や不足感を満たしてくれただけでなく、スプラッターものっか人体解体モノとしてやれる事
のほぼ全部をやり尽くした総決算の映画に思え、あるで憑き物でも落ちたかのように以降はもぅ
ホラー映画中心とした映画生活ではなくなっていきましたが… と言うか『ブレインデッド』は
人体パイ投げスラップスティックコメディとしては最強じゃぁないでしょうか。

 実際、ブームの飽和とレィティングの強化やメジャーによる映画界の統合再編成、って側面も
あるにしろ、この映画以降殺人鬼によるスラッシャー映画は製作されても血や臓物ををブチ撒け
る悪趣味さを身上としたスプラッターは殆ど製作されていないし、映像的な見せ方や編集は資金
が豊富な分だけ良くなったもののネタ的には見慣れたモノやシチュエーションしか無くなってる
のが現状ではないかな? と思います。

 最近、確かにジェイソンやレザーフェイスの復活だけでなく、『Cabine Feaver』や『House
of 1000 Corpses』のような潮流はあんですけど、何て言うんですかね… これだけネット等で
本物の死体などの画像や動画が簡単にいくらでも見れる現在、「娯楽としての悪趣味さ」を商品、
投機対象としての映画で作るってのは成り立たないと思うし、自主制作であってもよほど製作者
に資金と思い入れと熱意、そして才能とテーマ、テーゼがあったとしても、あの時代ならではの
モノでもあったスプラッター映画の自体の復活は思い難いですが、しかし… だからこそ、設定
を70年代にしノスタルジーとしてではなく現代の物語として復活して欲しいんですけどね… 
 っと私は期待していますが(笑)。

(ふと、時代や社会状況を突破する為の手段でさえも消費されてゆく… って点で高村薫の『レ
ディ・ジョーカー』を思ったりもしましたが… )