「『青い春』を観ましたよ」(映画雑記)

 同じ年に、同じ松本大洋のマンガ原作でありながらも、アッパーに突き進む
青春物語であった『ピンポン!』は(中古でだけど)dvdを買ったが、一方
の『青い春』はなんとなく観ないでいたのだが『恋の門』の事もあるし… と
観てみる事にしてみましたが…

 おそらくは工業高校と思しき男子校、閉塞した、あまりにも閉塞した時間の
中で狂い、外れ、壊れてゆく男の子達の青春残酷物語で、やや原作の端折り方
を間違えたようで説明不足の箇所が結構あるのが惜しいのを除けばあの閉塞感
をよく現したって点ではよく出来た映画ではないかな、とは思う。
 いい後味は全く無いが、まぁ青春なんてそんなものだよなぁ… と思うけど
あそこまで閉塞ゆえの絶望や未来の不透明さ故の諦念や虚無、ってのは多分、
現代的なのかな? という気はしないでもない。
 確かに自分が高校生の頃ってのはまだこれからバブルにさしかかるって頃で
どこか世の中が浮かれていた落ち着かなさ… そう、どこかの町並みで通りの
向こうの祭りの賑やかさにも似た空気があった事を思えばまだ『救い』って言
うか『未来』への希望はまだギリギリあった世代なのかもしれんよな… っと
思わざるを得ないワケで。

 ツールが進歩して均等に行き渡っている分だけ、使用者の成熟と能力による
区別が若年層の頃から歴然とある現代の鬱屈ってちょっと想像がつかないよ。
まして『世界』が家と御近所と学校でしかない狭い情況の中にあって、日本全
土への窓口となる筈の携帯電話も世界へのツールとなる筈のネットも自縄自縛
っか自己中毒の装置にしかなり得ないのかもしれんな… っと思ったりもする
が、その重さや辛さや不安は私には理解出来ないよね。だって、私の学生の頃
には家の固定電話の子機ですら珍しい贅沢品だったんだよ? ネットも無いし
携帯も無い、CDも無い、そんな時代の事を今の学生に想像し、共感しろった
って無理でしょ… その逆も当然、出来ないし。

 …ってのはさておき、
松田龍平って、いい素材ではあるがなぁ… 」
 と、観終えて一番に思ったのはこの感想で。

 雰囲気は悪くない。
 肉体もいい。
 しかし…
カツゼツが相変わらず良くないんだよな… 彼はあの歳だから出来る事をやれ
ないままにいるのが、なんだかとても勿体無いですよ。
 いや、どこか幽鬼ちっくな雰囲気は本当にいいんですけど、ねぇ…