「今更観た『呪怨』の感想」

 あまりに大衆ウケしたもの、というと敬遠したくなるもので『呪怨』の評判を
聞けば聞くほどなんとなく観る気が失せていったものだがハリウッドでのリメイ
クの成功もあってやっとこさ観る事にしたのだが…

 監督がこれまでのホラー映画での手法をよく知っていて、おそらくある程度の
分析を済ませてから、あえてそれらを使わないようにした、って事は理解出来る
んだけど、残念ながら音の使い方が従来のままだから斬新! っと思うよりも、

 どうなんだろ、コレ?

 って感想しか無い。
怖くも無ければスリリングでもなく、と言って生理的な嫌がらせが特にあるでも
なし…

 監督の意図は解らんじゃぁないが、そもそも監督の中にある暗闇への恐怖って
のをあまり分析出来てないからイメージは色々あっても結局、映像としては曖昧
なモノになってんじゃぁないのかなぁ… と、思うのだが。

 サム・ライミが惚れ込んだのも解る気がして、『呪怨』って映像である必然性
ってあまり無い作品なんですよな。コミックスでも充分にその意図や意匠は伝わ
るものしかなく、『リング』のように部分部分で映像でなければならない箇所が
あるのと比べれば、コレが映画である必要性もあんまり無いんですよな。
 でも、そういうコミック的な感覚を面白がる層はいるだろうし、目新しく映る
人もいるかもしれんが、実験映画やアングラ映画じゃぁないんだから手法や技法
を褒めるだけ、ってのも個人的にはどうかなぁ… と思うのね。

 あと、個人的に一番辛かったのが「全体的に安い」って事。
血糊、メイク、奥菜恵とSABUがすげぇ演技に見えるくらいに程度の低い俳優
陣、そしてセット… ビデオの時ならそれでも良かった筈なんだろうがフイルム
での世界になった時点で詰めが甘くなってしまって説得力に欠けているんよね。
 俊雄君とかはまぁ歌舞伎的にそう観るものとしたから苦じゃぁないが、何と言
うか、この監督ならではの質感、イメージってのが絞れても煮詰めてもないから
結局曖昧なぼや〜っとした印象しか残らなかったなぁ… っと。

 あと、音がねぇ…
 薄いんだよねぇ…
 
 って事でハリウッド版もパスする事にしたですよ。
 ちょっと残念。

(個人的に観る前に、
「あれだけ騒がれた、って事は… 」
 っと、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』のような従来の手法に対しての
革新的っか挑戦的な作品かと思っていたのが一番マズかったのかなぁ… )