「帰路の電車、にて」

 帰りの電車でふと目覚めると、自分以外の周囲の人
全員が… 性別も年齢も関係無いまわりの人間達が…
携帯の画面を見つめていた。どの顔にも、これという
感情も見られず、淡々と、無表情で。電車の音だけが
やけに大きく感じて、そそくさと私は又眠る。
 ツールとしての利便性を承知していても必要を感じ
ないから携帯を持っていない私にしてみれば奇異とは
言わないが、あまり気味のいい光景とは思えなくて。
 昔、『鉄男』という映画があったが、己の肉体に鉄
が浸食されてゆく男へのイメージが、なんか、ダブる
一方で、コンパクトに向かっている女性のイメージも
アリな気もして。
 
 
 
 
 再び目覚めた時、
 なんとなく周囲を見るのが、恐かった。