『Blades of Glory (2007)』

 
 幼少の頃に見出され優秀なコーチ陣と科学的トレーニングの元に更に才能を開花させ、その優雅で華麗な演技は世界中の子供達を魅了する氷上の貴公子・Jimmy MacElroy (Jon Heder)。地下スケート場から己の力のみで成り上がってきた情熱的でワイルドなリンクの炎・Chazz Michael Michaels (Will Ferrell)。男子フィギュアスケート界において二人はライバルだったが冬季オリンピックにて二人同点での金メダル、となったものの元々お互いが気に入らない二人はあろう事か表彰台の上での小突き合いから大乱闘。マスコットは火達磨になるわの騒動になった事態を重く見て国際スケート連盟は二人に金メダルの剥奪と連盟からの永久追放を言い渡す。
 
 そして3年半後…
 
 Chazzはかつての栄光が忘れられずにいるも今やしがない子供向けアイスショーで着ぐるみを被っての日々に膿みすっかり酒浸り。団長からはショーの際に酒を飲んでいたらクビだと言われてはいたものの酒瓶が手放せずにいて。
 同じくかつての栄光は遠くに去り、今やしがないスポーツショップの店員として働いているJimmyの元に、かつて接近禁止令を裁判所から言い渡されているくらいのJimmyのストーカーHector(Nick Swardson)が会いに来る。昔日のスケート選手としてのJimmyが大好きなあまりストーカーになったHectorとしてはもう一度彼にリンクに戻って欲しく、
「連盟から言い渡されたのはあくまでもシングル選手としての資格の剥奪と追放について。だけど連盟規約にはシングル資格を剥奪された時の記載はあるが、ペア選手としての資格については何も書かれていない。だからペアを組めばまたリンクに戻れるよ!」
 と言われ、Jimmyはかつてのコーチ(Craig T. Nelson)に相談するも、先のオリンピックの時に同点での金メダルという結果にチームから解雇されたコーチは無理無駄とけんもほろろで取り付く島もなく。
 
 Chazzはとうとう飲み過ぎたままショーに出演して被り物のせいで気分が悪くなって嘔吐しクビを宣告されてしまうが、そこに諦めきれずたまたま自分のペア候補を探しに来ていたJimmyとバッタリ再会してまたも二人は取っ組み合いの大喧嘩。ローカルニュースでも「元チャンピオン同士の喧嘩」と報道されてしまうのだが、たまたまそれを見ていたコーチは二人の喧嘩を見て閃く。
「この二人が組んだのなら、凄い事になるんじゃないのか?」
 確かにシングル選手として永久追放されたもののペア選手としての出場資格は剥奪されていない。そして、男と男が組んで出場する事も何ら禁止する条項も規約も無い。
 
 かくしてChazzとJimmyは共に半年後のモントリオール冬季オリンピックに向けて、歴史上初の男子ペアとして挑む事になるのだが…

 
 初期の『ロクスベリー・ナイト・フィーバー [DVD](1998)』等のような動きや存在感のキモさの笑いから最近は『タラデガ・ナイト -オーバルの狼- [DVD](2006)』]のような言葉での笑いにシフトしてきたウィル・フェレルの最新作、なんですがいやぁ… 今年の1月に予告編を観て
「だってウィル・フェレルジョン・ヘダーのW主演作品が日本の劇場で公開するワケないじゃん!(涙)」
 なんて記事を書いたんだけど、まさかその通りになるたぁねぇ… 未だ日本での劇場公開もビデオスルーの話も聞かないままにアメリカをはじめ世界中でヒットして、公開から5ヶ月も経ってやっとUS版DVDがリリースされたのが今日到着、早速妻と共に観賞したんですが反則だコレ!(笑)。
 予告編ではもっとコテコテのゲイちっくなコメディかと思ってたのに実際はガチガチのスポ根映画フォーマットなんですが… 近いトコロで言えば『スーパースター 爆笑スター誕生計画 [DVD](1999)』かな?… 『Napoleon Dynamite (2004)』のジョン・ヘダーが華麗なる貴公子で、女殺しの野獣(そしてセックス依存症)がウィル・フェレルって作中世界でなっている時点でもぅ反則。OPでウィル・フェレルの映画と出た割りにキャラではなく状況進行のバランスとテンポを重視した作りで非常にテンポが良いんですがウッカリそのテンポに安心していると途中の訓練シーンで『愛と哀しみのボレロ (1981)』をパロるウィル・フェレルとか無駄に脱いでぷよぷよとした肉体を披露するウィル・フェレルとか、油断してると台詞でのギャグと相まって確実に殺られますな。
 一方のジョン・ヘダーは素直な好青年役、の筈なんですが濃厚なキスシーンといいあの出っ歯加減でのイケ面スマイルをやられるともぅそれだけで可笑しいんですよな… 変顔じゃないのに笑えるってのも得なんですが、長身のウィル・フェレルと並んでも食われない背の高さと手足の長さに画面上での相性の良さはこの人選をし出演交渉をしたプロデューサー陣の一人ベン・スティーラーの狙い通りだったんじゃぁないでしょうか。
 
 下手をするとただ馬鹿なだけの映画になるトコロを脇に世界フィギュアスケート殿堂入りもしているスコット・スコベル・ハミルトンやナンシー・ケリガン等、私が知らないだけでその世界では有名なスケート選手が大勢出演させていたり、セックス依存症カウンセラーにルーク・ウィルソンを配してみたりと人材面での隙の無さは裏方方面でも徹底してまして、確かにワイヤーとCGも使ってはいるんですがトレーニングの御蔭である程度は俳優自身に滑らせる事での競技シーンは過剰に華麗でスピード感もあるんですが、その指導がミシェル・クワン等の振り付け師サラ・カワハラ*1によるものでしたが、いい意味で荒唐無稽過ぎないけれども芸術にもなってない、演者の個性の生きたものになっているのも大きかったかと。
 
『タラデガ・ナイト -オーバルの狼- (2006)』の日本版はUnrated版を元にした為、冗長に感じる部分も結構あったのと比べると兎に角このテンポの良さったら! まぁライバル役のStranz役のWill ArnettとFairchild役のAmy Poehlerは前作のジャン・ジラール役のサシャ・バロン・コーエンには劣りますが作品としては勝るとも劣らず、むしろ変にメッセージ性が無い分… そう、スポ根映画なのに努力も根性も友情も全部ネタだからメッセージが無いんですよ! …個人的には本作の方が私は好きですわ… そりゃまぁウィル・フェレルの映画!っと期待をしていると肩透かしに感じる人はいるやもしれませんが、その分出番の時の様々なネタが濃いとも言えますし。また、世界のフィギュアスケートに詳しい人ならもっとこれは楽しめたんでしょうなぁ… 私はナンシー・ケリガン襲撃事件くらいは知ってたんで笑えたのとロド・サーリングやJFKとモンローってネタとかは解るんですけど… って思わなくもなく、この方面は疎い私にはその解らなさが残念、でしたかな。でも、それらが解らなくても知らなくても全然大丈夫! ベタなのからヒネったのまで様々なギャグを詰め込み過ぎない&クドく見せ過ぎなこの映画はホント、楽しかったですよ〜 『The Pacifier (『キャプテン・ウルフ [DVD]』(2005))』も劇場公開出来たんだし、劇中の記者会見で馬鹿な日本人記者が日本語で質問をした時に… ってネタもあるんだから年を越しての冬ででもいいから日本でも公開してくれませんかのぅ…*2
 
 そうそう、
「でも男子フィギュアスケートのペアっておかしいやん!」
 ってツッコミはあるかと思うのですが、現実の02年冬季オリンピック開催地はソルトレイク、そして06年はイタリアのトリノだったように、将来的にはストックホルムモントリオールで開催される可能性はあっても本作の時点では架空のお話、選手やエピソードにモデルはあるかもしれませんがこれは実話、歴史を舞台にした物語ではなくあくまでもフィクション、ですよ〜。
 
 
 
 …って事で、以下はこのDVDについての情報なので興味のある方だけ

 
・『Blades of Glory (Widescreen Edition) (2007)』 - Region 1
 
 Studio: Paramount Home Video
 Theatrical Release Date: March 30, 2007
 DVD Release Date: August 28, 2007
 Run Time: 93 minutes
 
 Aspect Ratio: Anamorphic Widescreen - 1.85:1
 Available Audio Tracks: English, French, Spanish - Dolby Digital 5.1 Surround
 Available Subtitles: English, French, Spanish
 
 Special Features:
 ・Return to Glory: The Making of "Blades" (14:49)
 ・Celebrities On Thin Ice (6:05)
 ・Cooler Than Ice: The Super-Sexy Costumes of Skating (4:39)
 ・Arnett and Poehler - A Family Affair (5:51)
 ・20 Questions with Scott Hamilton (5:01)
 ・Hector: Portrait of a Psychofan (3:24)
 ・Deleted Scene (4)
 ・Music Videos - "Blades of Glory" by Bo Bice (4:40)
 ・Gag Reel (2:09)
 ・Alternate Takes (8:40)
 ・Moviephone unscripted with Will Ferrell, Jon Heder and Will Arnett (9:54)
 ・MTV Interstitials (3)
  ・Montage (:32)
  ・Chazz (:34)
  ・Stranz & Fairchild (:34)
 ・Photo Gallery
  ・Kick Some Ice (34)
  ・Capture The Dream (37)
  ・Costume Glory
   ・Mind Bottling (27)
   ・Provocative (28)
   ・BOOOOOM (28)
   ・Previews (4)

 

 
 このDVDには封入物は無しなのがちょっと残念。火達磨なり矢が刺さった大会マスコットのカードでも入っていれば良かったのに、と思ったらメニュー画面で燃えてました(笑)。
 
 画質、音質は全く問題ありません。流石に今年の作品のDVDらしく良いものではないかと思います。ただ我が家は今もブラウン管のTVなので、ひょっとすると最近の液晶テレビだとまた違う感想にもなるやもしれませんが、一頃のColumbia TristarやSony Pictures製のようなボケ気味だったり色合いが潰れていたり、というような事はございませんのでご安心をば。
 
 さて、DVD特典は…
「Return to Glory: The Making of "Blades"」は出演者、製作者らのインタビューを交えつつの映画全体のメイキング。「男同士のフィギュアースケートの映画に出ない?」ってベン・スティーラーに「Yes, I Do!」と答えるジョン・ヘダーが素敵。でも「Chazzの役のイメージはスティーブン・タイラー」って言ったウィル・フェレルは大丈夫なんでしょうか?(笑)… とか、短いながらも楽しいものになっております。
「Celebrities On Thin Ice」はスケート指導兼振り付け担当のサラ・カワハラを交えてのスケートシーンの練習&撮影風景といったメイキング。
「Cooler Than Ice: The Super-Sexy Costumes of Skating」は衣装について、なのですがこれには衣装デザイナーさんにも語って欲しかったかな?
「Arnett and Poehler - A Family Affair」は多分、本編からの没分と思しきもので劇中のライバルStranzとFairchild兄妹が両親や家族についてインタビューに答える、というもの。
「20 Questions with Scott Hamilton」はアナウンサー役のスコット・スコベル・ハミルトンみついてこの映画について等の質問をするインタビュー。
「Hector: Portrait of a Psychofan」はJimmyへの想いを語るビデオレターって形式のネタ。EDロールでも気持ち悪い妄想遊びをしているNick Swardsonがここでもやってくれます。
「Deleted Scene」は文字通り本編からの没分。ただ4つあるどれもが結構長いワリに本当に無駄なものばかりなのでこれはカットして良かったなぁ… と思うですよ。
「Music Videos - "Blades of Glory" by Bo Bice」は主題歌のPV。製作にMTV Filmも加わっているからこそ、なんでしょうかね?
Gag Reel」となっていますが中身はOuttakes、つまりNG集ですね。これはこれで素や地や現場の楽しい空気が伝わってきて観ていて微笑ましかったですわ。
「Alternate Takes」は本編のシーンの別バージョン集。こうやっていくつものカットん中から選んで… って作りが出来るのは映画ならでは、でしょうねぇ…
「Moviephone unscripted with Will Ferrell, Jon Heder and Will Arnett」はウィウ・フェレルが司会進行役になって二人にインタビューをする、というものです。公式サイトは【コチラ】
「MTV Interstitials」はTVスポット集。キャラクターに寄ったものですが、何故にJimmy編が無いのかと。
「Photo Gallery」は劇中や衣装テスト等、様々な状況別に分かれていてそれなりに数もあって良い方ではないでしょうか?
Previews」はパラマウント社がリリースしているウィル・フェレルの映画のCM集に『Bee Movie』『シュレック3』『トランスフォーマー』の4つ、って何故にこの映画の劇場予告編を収録しないかなぁ…
 
 …という事で、
特典はかなり量のある方だと思いますし、特典にもEnglish, French, Spanishの字幕が付くのは良心的かとは思うのですが劇場版予告編が無かったりもちっと素材的には色々ありそうな筈だが… っと、ちょっと不満に感じなくもないんですが… これってまぁ贅沢なんでしょうかね?
 

*1:Wikipedia − Sarah Kawahara

*2:看板のウィル・フェレルジョン・ヘダーが日本ではイマイチって現状の何処が「お笑いブーム」なんだか。