USA-Pセレクション・三池監督偏。

 
 ホントは神山氏のブログの記事のコメント用に書き始めたんだけど長くなったので自分のブログの記事に(苦笑)。
 
 私が三池崇史監督作品を初めて観たのは『中国の鳥人 (1998)』で、映像的にもオーソドックスなんだけど何とも言えない間合いやらに興味を持って調べてみると実にVシネマのヤクザものを多く手がけている人で
「???」
 っと思ったものでありますが、まぁ職人的な監督さんだろうと思います。
納期や予算や配役をキッチリ守って要求にはプロとしてちゃんと応えつつも、自分のやりたい事もやる、という点で自分の中の映画少年、映画青年の部分とも冷静に対峙している大人、ってなイメージと言えばいいですかな…
 
 だから、レンタルが重要な日本の映画業界で、回転率のいいVシネマの暴力やヤクザものが回ってくる事が多く、それを仕事として依頼されれば撮る、としてきたからフィルモグラフィにそのテのモノが多いし、監督も暴力や性がお嫌いではないと思うんですが、それだけで判断するのはどうかな? っと。
 
 特にビジュアルとして印象に残るタイプではなく、そういう点では映像作家と呼ばれる人とは違いますが、逆に言えばそれだけ臨機応変。また、出演者の良い部分を出しやすい環境を整えてくれる監督かな? って気もします。
 
 ただ、これは十数本程度の三池監督作品しか観てない私が言うのもアレなんですが… どうも三池氏、ノってる時とノってない時のテンションの差が露骨だと思いますし、企画や脚本が三池氏のやりたい事(三池氏にとってのテーマ、モチベーション)とイコールの時は割合といい作品になる事が多い反面、ネタ単位やワンアイディアの時は冗長で散漫な印象が拭えない作品が多いような気
がします。
 
 とは言え、流石に日本で一番忙しいであろう映画監督だけあってその手腕は典型的なアイドル映画の『アンドロメディア (1998)』も出来ればケレンもスカシも全く無い王道的な『SABU (2002)』も出来る人なので、単純に暴力とヤクザのVシネマのイメージだけでとらえるのは勿体無いと思います…
 って事で、
妖怪大戦争 (2005)』で三池監督作品に出会った人に、USA-P的なオススメ作品をセレクトしてみますと…
 
・『極道戦国志 不動 (1996)』
Kill Bill』のタランティーノも好きな作品で、下世話さと下品さとバカバカしさの詰まった作品かと。劇場映画と違って伸びやかに好き勝手やった作品で、三池監督と言うとコレを挙げる人も少なくないんじゃないんでしょうか。
 まぁ小ネタに走るあまりややテンポが悪い部分もあるんですが、海外でも同時代の日本人監督と言えば三池って評判を作った作品でもありますし(アメリカなど海外で先にDVD化されてたんですよ)、好き嫌いは置いておいてまず観ておいてもいいかと。
 
・『オーディション (2000)』
 村上龍の原作は読んでないんですが、多分、表現したい事は原作者と監督の間では違ってたんじゃないかなぁ… っと思ったくらいになんかもぅ観ていてこぅ痛みと他人への恐怖をねっちりと描いた作品。
 バイオレンスというよりもグロなんだけど、下品じゃない分だけ痛みになる、っと言うか… これも海外では評判の作品の1つ。
 
・『SABU さぶ (2002)』
 藤原竜也の栄二に妻夫木聡のさぶ、って事で真っ向王道、山本周五郎の世界をきちんと作品にしたものかと。やや退屈な点もあるかとは思うんだけど、まさに邦画ならではのウェットな物語と映像をきちんとまとめた作品として押さえておくのもいいかと。
 
 … の3つがとりあえず、って事で。
以下はもうちょっとクセが強くなるんであまり素直にオススメは出来ないんですが… って事で御時間がある方だけ
 
・『漂流街 THE HAZARD CITY (2000)』
 無国籍アクション映画の現代版、で、かつお下品(笑)。
でも役者のハメ方がなかなかで、及川光博や吉川晃司を楽しく、かつ魅力的に魅せてくれただけでもいいと私は思うんだが… まぁ馳星周の原作が結局子供の言い訳と責任転換だけなのをブッ飛ばしたってので私的に好印象なだけかもしれんのだが。
 
・『DEAD OR ALIVE 犯罪者 (1999)』
 哀川翔竹内力のVシネバイオレンス全開! って作品で実は結構退屈して観てたんだが、それが最後に引っくり返された時点でそれまでも全部「ネタ」でしかなかった、って形には唖然としましたな。
 まぁ人によってはあのラストは大激怒モノで妻も否定派なんだが…
 
・『中国の鳥人 (1998)』
 ややテンポが悪いし、遊んでる部分が気になるんだけど、なんかこぅ味って言うのかな? 真っ当だったり変になったりする匙加減の「味」が忘れられない一品。大人の寓話(fairy-Tail)としても出来は悪くないと思いますが…
 
・『極道恐怖大劇場 牛頭 (2003)』
 これは30分カットしてくれたらなぁ… っと思う。特に東京に戻ってからはもぅ説明と消化だけなんで退屈もいいとこなんだが、前半部分の名古屋って町の奇怪さと極道でいる事の不条理さがミックスされているパートまでは面白い作品。ただ、これは失敗作だとは思う。でも、前半は好き(笑)。
 
 で、私が観た中であまりオススメはしない作品、となると…
 
・『ビジターQ (2000)』
 三池版の現代版『逆噴射家族』。
故にもぅ家族に祖父もいないし、まぁエログロにならざるを得ないんだが… って点は面白いんだけど、総じて観ると結構辛い。
 
・『カタクリ家の幸福 (2001)』
 海外での評判はいいんだが… そもそも日本語でのミュージカルってのに難があるのし、色々な要素や小ネタを詰め込みすぎて整理されてない、っと私にはあんまりノれなんだ映画。沢田研二だからこそ成立するのは解るんだけど… コレも海外では評判がいいんですけどね。
 
・『殺し屋1 (2001)』
 原作のマンガに負けてしまった作品、だと思う。
「暴力を馬鹿にした映画」ってな事を三池監督が語っていたが、もうちょっと色々なテーマがあった原作を垣原に背負わせる形にしたのは監督の好みなんだろうが個人的にはちょっとなぁ… っと。映画的にはよく出来ているとは思うが、暴力なりセックスなりマゾヒズムなり都市論にしろピントの外し方がもうちょっと… って印象。
 
 …ってトコでしょうかね?
 上記以外の三池作品で面白いものがあれば私も観てみたいんでコメントとかいただければ幸いです。