『アメリカン・スプレンダー』を観て。

 本国では25年以上続いているアングラコミックの原作者にして主人公のハービー・カービーを
題材にした映画… なんだろうなぁ、多分。っと言うのも本編に実際のコミック、この映画の為の
コミック、当時の実際の映像、ハービーを含め本人達、そしてポール・ジアマッティら役者達が演
じる【登場人物】、っと入り乱れた上に、創作されたエピソードも含めるんでドキュメンタリーと
も言えず… なんか昔あったCD−ROMで興味あるコマをクリックすると動いたり音楽が再生さ
れたりってソフトがデジコミだか音楽ソフトだかであったけど、それに近い感覚のような気がしな
くもありませんな。まぁ、時系列はイジってないんで普通に観れますし、ラストもハービーの定年
ってので纏めているんですけど、果たしてこういうのを映画と言っていいのかは私には判断がつき
かねる印象でございます。
 とは言え、音楽はジャズをベースにしたもので落ち着いていて雰囲気と合ってますし、さすがに
本編が複雑なんで画面そのものはオーソドックスに撮影してあって無理は無いし、役者陣もかなり
いい演技だとは思いましたが、やはりどこか狂った人を演じるにはポール・ジアマッティという人
には知性があり過ぎたようです。よくやっているとは思うんですが、どうしても眼がねぇ… 知性
的過ぎるっ〜か、物真似よりは上だけど、例えば『マン・オン・ザ・ムーン』でアンディ・カウフ
マンを演じたジム・キャリー、例えば『Ray』でレイ・チャールズを演じたジェイミー・フォッ
クスのように、例えば『カッコーの巣の上で』の… っと、こちらに寒気を抱かせるような、とり
憑かれたかのような、常人の精神の域から踏み出してしまったかのような、そういう演技と比べる
と「巧い。巧いんだけど… 」って思ってしまうんですよね。贅沢なんですけども。

 とは言え、面白い試みをした作品だとは思います。ただ私にはあんまり残るモノや心動かされる
モノはあまり無い作品、でしたが… あと10年くらいしたらまた違う感想になるのかなぁ??