くるま、車、クルマ。(おしまい)

 
仮に何も制限が無い場合、旧車やプロトタイプやコンセプトカーではなくあくまでも現時点で生産されて市販されている車の中で、私が好感や憧れを感じる車は殆ど無い。今の時代の方が工学的にも技術的にも進んでいるとは思うし法律や安全性能云々などの事情もあろうけど日本車に限らず似たような、特にフロントがふとましいフォルムが本当に増えて。ゴテゴテとしたメッキパーツや意味が特にあるとも思えない穴。数百メートル単位で信号のある街中では滑稽なエアロ。あと
 
  ( ゚д゚)
 
みたいなグリルがデカイ車が増えすぎたのもなんだかとても個人的には嫌で… スーパーカーブーム世代ではあっても当時からあまり曲線を多用した薄いモデルよりはある程度の直線と曲線と厚みがあった方が好ましく思ってる私からするとねぇ… と知ってる範囲の車メーカーのHPとYoutubeで色々観てみて今現在最もグッときたのは
 

 
心配になるくらいにシンプルな造形やデティールがなんかこぅ堪らない。一見武骨というか無骨になんだけどそれもいい。また車体色がどれも大味だけどそれも込みでねぇ… と言ってメーカーが自称しているような Muscle CarsでもSports Carsでもない可愛げみたいなのも感じられてねぇ… うん、まぁ日本にはディーラーも無いから正規販売してないし走らせる場所も無いけれど、かつての旧車のイメージを残しつつも現代的なデザインになっていて且つ珍妙なデザインの下手なスポーツカーよりよっぽど(直線は)速いってのも込みで私が他人事として見るのが一番好きな車だったりします。ダッジでもほかのモデルはピンとこないんですけどね… トヨタが86を出した時にAE86の欠片も無いデザインに旧車になんら思い入れが無い私でも何コレ?だったけど、日本で車文化とか言うならこういう事もやってくれないですかね、VWやら海外ではレトロ調デザインでの個性回帰もチラホラしてきてるし、日本の道路交通法で言えば復刻ではなく今の技術での旧車のデザインをしても十分な性能の物が出来ると思うんですけどね…
 
 …ってのは兎も角として。
 
現実的にはサイズの限界点があっていきなり数車種しか選択肢が無かった中で好感を持ったデミオスイフトだったけれども、後で改めて調べてみてもこの2車種以外にピンともチィンともこなかったのでホッとした反面、何だかツマラナイ気もしたりもして。丁度駅前の駐車場の向かいの人がCX5を乗るようになったけれどぶっちゃけ運転手の体格にまるで合ってない… 多分160センチくらい?で車から出て立った時に天井に大幅に届かないくらい… その所為かどうやら擦ったりよくしてるようで何度も何度も修理に出してるようで代車になったり戻ったりの繰り返しで今ではボディがマツダのソウルレッドではない赤色になってるけど、自分に合ってなくてもその車に乗りたいという熱意というか執念みたいのは私には本当に無いからで、いざ新車の購入という100万以上って庶民には非日常の金額の買い物をするというのにそういう情熱なり期待なりがまるで無いというのは勿体無いというか寂しいというか。車が夢や情熱の対象にならなければならない、とは思わないけど、でもねぇ… というか。
 
ただまぁ1300cc→1600cc→1800cc→1500ccと乗り換えてきて、いくら車は単純にエンジンのパワーだけではなく車トータルでのバランスが肝心だとは分かっていても、ある程度の車体の大きさと重さ、それに見合ったエンジンの大きさが必要というか重要だと思っていたんですよ。余裕と言ってもいいのかな? 走ればいいってもんじゃなくて、止まったり曲がったりする事だって大事って。特にランクスになった時に感じた不足感、安定性や加速の迫力みたいなのってば。結局ボディの大きさと重量に釣り合ったエンジン出力だったんだなぁ… って本当に思ったものです。今の理想と言うか憧れがDoge Challenger Hellcatになるのもカムリに乗ってた時の快適さと運転していての楽しさが忘れられないからで… って私からすると、候補である車はどれも今のランクスより排気量も出力も下がっている時点で期待とか羨望みたいなのは持てなくて… だから、比較条件を減らすって意味もあったけど試乗をあえてしなかったのは
「どうせランクスよりは非力でしょ」
 と思っていたのもあったんですよね。諦めるというか割り切りというか。別にスポーツ車が欲しいワケではないけど現状のコンパクトだとそういうものなんだと。メーカー公表の諸元表でスペックは劣っていると出ていて、三候補のディーラーの人達も誰もが
「今のお車に比べればパワーや加速では落ちると思います。」
 って言ってたし。
「加速や走りはいいんですが、出足だけはちょっと… 」
 って言ってたし。そういうもんだと思ってた。だからこそ居住性と操作のし易さを重視した。それでいいと思っていた。それさえ満たせない車があるんだから、まだ選べるだけマシなんだろうって。
 
PCに2001年の日記で、ランクスについて書いていたのがあったが、はじめての新車だから多少気負った文面ではあるものの
「走らせてみたが、驚きもしなければ違和感も無い。静かだ。ハンドルが、えらく軽い。」
「スタートしてから40キロまでは実にスムーズで無理を感じさせない。40〜60までの間が「ぬるり」と加速する印象があるが、これはもう慣れの問題だろう。ガツン! 、とも、グンッ! とも来ないのは物足りないが市内走行を中心に考えればこういう仕様でいいのかも。」
コーナリングも、5ドアのくせに安定している。捻れるような感覚も無いし、車の体や尻が「残る」感覚も無い。スムーズで、しっかりしていて安定しているように思う。」
 ってのの締めは
「とりあえず、悪い印象は無い。」
「今時の車ならば、どれでもこの程度の性能はあるんだろうし、RUNXって名前だが要はカローラだしな。」
「不満は無い。そのかわりに味も、無い。よく出来ているが故に、よくまとまっているが故に。」
 ってなってて、納車直ぐの時期から不満は持ってないけど不足感が端々から出ていて笑ってしまった。本当に、最後までそのままの印象だった。運転していて不安や恐怖を感じないけれど楽しさは無い。日記にはカムリが購入時6000キロだったのが約10年で最終16万キロって書いてあったが、ランクスは15年で5万キロ、一ヶ月300キロ以下の、通勤などの必要最低限で最短でしか走ってないのは運転をしていてそこに安心感しか無かったから。今年の車検の時の代車のヴィッツのような恐怖や怒りではないのだからそれで十分だったし、それでいいものだと思っていた。だから、新車での取り回しでのぎこちなさで他の車に迷惑をかけないよう避けてもらうように購入したのは初心者マークではなく四つ葉マークだったのも自重でもあるけれど、この車には走る事の楽しみは無い、日々の生活の為の必需品だという自嘲でもあった。静かに、ちんたらと、のそのそと、もっさりと。それでいいと思っていたんです。
 

 
 しかし… なんか、楽しいのですよ、スイフトが。何なのだこれは、と。
 
ランクスより満燃料時で140キロ軽い車体ってだけでなく、ステアリング操作で自分の思うように車がキビキビと動く感覚がとても気持ちがいい。しなやか、としか言いようがないサスの感じが気持ちいい。デビュー当時のネット評だけでなくディーラーの人にまでさんざモッサリって言われてた加速にしても、確かに変速が無いCVTだから感じ難くはあるけれどグッと踏んだ分キッチリと、アナログっぽく加速してくれる感じが気持ちがいい。ヴィッツではこうはいかなくて速度キープでの踏みのつもりなのに何故か変な加速をかけるのが心底腹が立ったけれどそんな事が全く無くて。まだCVTに慣れなくてコレって感覚がまだ掴めてないけれど、今迄のようにシートに踵をつけて前半分だけペダルに置いてって感じでスムーズに、なめらかに加速していくのがとても気持ちがいい。ペダルで言えばブレーキも、デジタル丸出しのガックンではなくアナログっぽい踏んだ分でキッチリと減速し停止するのがとても気持ちがいい。適度にエンブレもかかるから、今までの車でやってきたAT車だけど巡行状況でノーマルやローにしての減速をする必要が無くてアクセルペダルの踏み加減での調節がしなくてもいいのが気持ちがいい。この気分って人それぞれの個人差、塩梅、匙加減だから他の人には違うんだろうけど、自分の生理というか身体的にとても気持ちがいいんですよ。合ってるというか、馴染むというか。パワー感は確かに無いし、今は慣らしもあって4000回転/100キロ以上は出してないからそこからの領域はわからんけれど、初めて乗った日から怖いと思った事も不安を煽るような事も無い。何なのだこれは、と。15年間、全く感じてなかったからこそ自分にとってはもぅ車の運転はそういう物だと思っていての15年、なのに今、スイフトに乗っているのが楽しいんです。凄く、じゃなくてじんわりと、曲がる時、車線変更をする時、アクセルを踏む時、ブレーキを踏む時、その1つ1つが気持ちがいい、ってのを感じれるんだ自分でも、っと。9月は残業の日々が多かったんだけどそんな疲れた仮に道の日でも何気なく寄り道しちゃったり、寝て過ごしてる筈の休日にパンを買いに垂井やらに出掛けたりとなんだか、なんとなく乗っていたくなっての今日の一ヶ月点検までの走行距離は350キロ… ランクスの時より80キロくらい余計に走ってたんですよね… まぁ流石にカムリの時のように16万キロってのはもぅ無いだろうけど、グッとくる力強さこそ無いものの、単にストレスを感じないってだけではない運転の楽しさがこぅ、なんか、こぅ… 車にはこういう気持ち良さもあるのか、とか…
 
車の楽しさ、というのは人それぞれであって、例えばスピードだったり、旋回性能だったり、限界での剛性だったり、パワーだったり、デザインだったり、伝説だったり、まぁホント、色々だと思う。私にとってはこの15年間は、何も無かった。でも、かつてはあった事を忘れていたのを応答っか操作感ってのが自分にとっての楽しさでもあったのだとスイフトが思い出させてくれた。大きすぎず小さすぎない、取り回しが用意で且つ自分が好ましく思うデザインの外装と内装の質感は本当に自分の好みで合っていて、身体観でも合っていて。窮屈ではなく落ち着ける室内空間は同乗する妻が毎度眠気を誘われるくらいに静かさもあって… ってのを、15年前の私に
「スズキってこんな素敵な車作るようになるんだよ! 確かにランクスは悪くない車だったけど、スイフトって素敵な車なんだぜ!」
 って言ったら、多分15年前の私は信じないと思う。無論、これから乗っていけば今は感じていない不足感や不安や不満は感じるのかもしれないが… こんなミニバンやトールワゴンやSUVもどきだらけになってるようにしか見えない今であっても普通乗用車としてこんな素敵な車がちゃんとあるってのを教えてくれたこの出会いは本当に良かった、と素直に思うんですよ。人生最後の車であるかもしれないがスイフトが最後であっても良いと思っている。だって毎日の運転が気持ち良くて楽しいんだもの。新車購入でハイになってるかも?ってのもあるんだろうけど、それこそ3月の車検の時のヴィッツのように只管に怒りと恐怖と不安と不愉快しかなかった車も含めて、初めての自家用車のラングレーから仕事で乗った商用ワゴンや商用バンや商用軽のに大型トラック、乗せてもらったシルビアや180SXスカイラインGTRやらのスポーツ系、運転も同乗もしてる妻のミラジーノにミラにミライースとかも含めて関わってきた車はそれなりにあるけど操作する事が浮かれたくなるような気持ち良さと軽快さで、ってのはちょっと無いと言うか… 自分が気に入っていたと記憶していた自家用車三代目のカムリについて、15年前の自分の日記には
「1800のエンジンには重いボディで、車としてのバランスは決して良いとは思わないが」
 とか書いてあったのは自分の記憶の変質に驚いたもんだけど、でも一方で
「自分のイメージ通りにいってくれるのが心地よかった」
「大きいゆえの安定性と静かさには自分が車に求めるものを全て満たしていた」
 とも書いてあって… そういう気分とか印象はあんまり変わってないんだな、と。だから、今のこの気持ち良さや楽しさって気分とか印象もあんまり変わらないと思うんだけども…
 
 
 
もしも次があるのならば、その時は、流石に還暦近くになってクーペだかサルーンだかに戻る事も無いとは思うけれど… まぁ、その時はその時で、また、自分自身をよく見つめて、必要と要求と予算から調べていくだけだよなぁ… 今回のようにメーカーで、ではなく条件からの選択で。でも何よりも望む事は、また素敵な出会いがあればいいなぁ… と。そしてそれが幸せで、気持ちのよいものであるのならば… と。(おしまい)